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巻き戻り
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きっかけは、女神の加護だ。女神に私たちの国から去られたら困るから。ならば、新たな神を立てればいい。神に悪魔を戻すのに必要なものは、魔獣の心臓を三百だとして。
「あなたの、代償は?」
女神は、恋を。
それならば、悪魔が神になったとき、加護のかわりに何を、望むのだろう。
この国の土地はもともと、やせている。
それを神の加護で維持している状態だ。
『そうだな……』
悪魔は考えこんだあと、私を指差した。
『神になったところで、永久は退屈だ。我の退屈をお前が、殺せ』
つまり、私に玩具になれと。
「何年かに一人生け贄を要求するということ?」
『お前次第だ。お前がずっと、我の退屈を殺し続けるのなら、贄はお前一人で十分だ』
「……いいでしょう。契約、するわ」
にやりと、悪魔が笑った。
その笑みを最後に意識が途切れる。
次に私が目を開けたとき、学園の入学式まで、時間が巻き戻っていた。
私は、悪魔を神に戻すのに、魔獣の心臓を三百集めなければならない。魔獣の心臓──といったら、かなり物騒だけれど。
魔獣の心臓。それは、文字通り心臓ではなく、通称だ。魔獣を倒したときに、魔獣の体内で精製された赤い鉱石を落とすことがある。
その鉱石のことを魔獣の心臓と呼ぶのだった。鉱石はとても貴重で、大抵は倒した人が食べて自分の魔力を増やすのに使う。だから、市場には出回らない。
だから、私は、私自身で魔獣を倒さなくてはならないのだ。そんな私におあつらえ向けの学科がある。
魔獣騎士科。
私たちが今日から通う学園の学科のひとつだ。学科は入学後に決めることになっている。以前は淑女科に通っていたけれど。
女性の魔獣騎士は数少ないだけでいないわけではない。
ならば、私でもできるはずだ。幸いにして、私の魔力量は多い。
すべては、リッカルド様が生きる世界をつくるために。
そのため、まず、私がやらなければならないことは──。
「ソフィア!? その髪、どうしたの!?」
入学式が行われる会場につくと、友人のマリーが驚いた顔をした。
「うん。私、魔獣騎士科にはいろうと思って。それなら、長い髪は邪魔でしょう?」
実際、数少ない女性の魔獣騎士の髪は短かかった。
「魔獣騎士科に入るなんて、どうして……。ソフィアは私と一緒に淑女科に入るんじゃなかったの?」
マリーはとても困惑していたけれど、私は、曖昧に笑って誤魔化そうとした。
そんなときだった。声をかけられたのだ。
「君も魔獣騎士科、なの? よろしくね」
聞き間違えるはずのない、声だ。その声をもう一度聞けることに、これ以上ない喜びを覚える。
「はい。よろしくお願いします。──リッカルド様」
「あなたの、代償は?」
女神は、恋を。
それならば、悪魔が神になったとき、加護のかわりに何を、望むのだろう。
この国の土地はもともと、やせている。
それを神の加護で維持している状態だ。
『そうだな……』
悪魔は考えこんだあと、私を指差した。
『神になったところで、永久は退屈だ。我の退屈をお前が、殺せ』
つまり、私に玩具になれと。
「何年かに一人生け贄を要求するということ?」
『お前次第だ。お前がずっと、我の退屈を殺し続けるのなら、贄はお前一人で十分だ』
「……いいでしょう。契約、するわ」
にやりと、悪魔が笑った。
その笑みを最後に意識が途切れる。
次に私が目を開けたとき、学園の入学式まで、時間が巻き戻っていた。
私は、悪魔を神に戻すのに、魔獣の心臓を三百集めなければならない。魔獣の心臓──といったら、かなり物騒だけれど。
魔獣の心臓。それは、文字通り心臓ではなく、通称だ。魔獣を倒したときに、魔獣の体内で精製された赤い鉱石を落とすことがある。
その鉱石のことを魔獣の心臓と呼ぶのだった。鉱石はとても貴重で、大抵は倒した人が食べて自分の魔力を増やすのに使う。だから、市場には出回らない。
だから、私は、私自身で魔獣を倒さなくてはならないのだ。そんな私におあつらえ向けの学科がある。
魔獣騎士科。
私たちが今日から通う学園の学科のひとつだ。学科は入学後に決めることになっている。以前は淑女科に通っていたけれど。
女性の魔獣騎士は数少ないだけでいないわけではない。
ならば、私でもできるはずだ。幸いにして、私の魔力量は多い。
すべては、リッカルド様が生きる世界をつくるために。
そのため、まず、私がやらなければならないことは──。
「ソフィア!? その髪、どうしたの!?」
入学式が行われる会場につくと、友人のマリーが驚いた顔をした。
「うん。私、魔獣騎士科にはいろうと思って。それなら、長い髪は邪魔でしょう?」
実際、数少ない女性の魔獣騎士の髪は短かかった。
「魔獣騎士科に入るなんて、どうして……。ソフィアは私と一緒に淑女科に入るんじゃなかったの?」
マリーはとても困惑していたけれど、私は、曖昧に笑って誤魔化そうとした。
そんなときだった。声をかけられたのだ。
「君も魔獣騎士科、なの? よろしくね」
聞き間違えるはずのない、声だ。その声をもう一度聞けることに、これ以上ない喜びを覚える。
「はい。よろしくお願いします。──リッカルド様」
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