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契約

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──死因は、池での溺死だった。
 聞いた話によると、そこはメリア様とリッカルド様の思い出の場所であるそこで。

 二人は、心中したのだ。

 溺死はとても苦しいと聞く。
 けれど、離れないように縄で手を繋いで死んだ二人の顔はとても穏やかで。

 ──ああ。

 私は。

 どうしようもなく、間違えてしまったのだと、悟った。



 明日からは喪主として、やるべき仕事がたくさんある。でも、今はショックだから寝込ませて。

 そういって、侍女を遠ざけ、自室に籠る。


 涙は、流れなかった。
 泣くよりも先に考えなければならない。

 どうすれば、どうすればリッカルド様は助かるのだろう。


『我と契約しないか?』

 低く、甘い声が囁いた。

「誰?」
『我はかつて──神だったもの。いまは、悪魔と呼ばれている』

 美しい青年が音もなく、私の目の前に現れた。

 短く切り揃えられた赤い髪は、確かに、この世界の人がありえる色彩ではなかった。赤い髪をもつ人はこの世に存在しないから。

『三年。時を戻す。その間に、魔獣の心臓を三百我に捧げよ。そうすれば、我はまた、新たな神として君臨できる。そうすれば、女神の加護は必要あるまい』
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