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SS

【書籍化記念SS】大食い大会1

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 私の名前は、ルィード・グド。
 しがない、アイザルシア王国の王家の影である。

 私の最近の楽しみは、休憩時間を王妃様の護衛時間と合わせることだ。
 なぜ、そんなことをするのか。
 ……それは! ずばり、私が王妃様の……だいだいだいだいファンだからである。

「ルィード?」
「!」

 はっ! 王妃様(推し)との時間をないがしろにするなんて、勿体ないこと、ここに極まれりだ。

「いえ、……王妃様」
「あら、今の私は、クロよ」

 そう、我が推しは、現在平民と同じような恰好をしていた。つまりは、お忍びだ。

「そうでした。申し訳ございません、クロ様、ところで、今日は、なんの大食いに挑戦されるのでしょうか?」
「……そうねぇ」

 「大食い」という言葉を否定もせずに、考え込む王妃様(推し)。
 そう、我が推しは、大食いである。それも超がつくほどの。

 私は、その素晴らしい食べっぷりに感化されて、ファンになった。
 そのほかにも、推しの素晴らしいところは、たくさんあるが……、語りだすとキリがないので割愛する。

 あとで、カミラにでも聞いてもらおう。

「なににしましょうか? お肉系は、牛、羊、ヤギ、鶏、イノシシも挑戦したわよね」
「そうですねぇ」

 我が推しの、綺麗かつ気持ちのいい食べっぷりをおもいだしながら、頷く。

「なににしましょう……」
 悩まし気に、口元に手を当てたその姿もまるでそれこそ、天使の創造物のように麗しい。
 もちろん、王妃様(推し)は、自身の美しさに気づいていない……どころか、だれからも綺麗だとか、美しいとか言われなれていないとカミラから報告を受けていた。

 私が、その美の女神に愛されし美しさを褒めたたえても良いのだが、それはヘタレな主に譲るとして――だって、私は王妃様(推し)と一緒に過ごせているから――それはそれとして。

 今日の大食いのメニュー、それは毎日一番の悩みの種だった。
 だって、どうせなら、毎日違うものが食べたい。
 そして、毎日違うものを食べる推しが見たい。

 そう思うのは、推し事をするものなら当然の考えだろう。
「……あ」

 推しと歩いていると、約百メートル先に看板を見つけた。
「クロ様!」
「どうしたの、ルィード」

 首を傾げたその姿もさすがの美しさと可憐さで……、と、脱線するところだった。

「クロ様、あちらの看板が見えますか?」
「すごい人だかりのところね。でも、文字は読めないわ。なんて書いてあるの?」

 私は、クロ様にむかって、にんまりと――主曰く、ただの無表情に見えるらしいが――微笑みながら、伝える。

「大食い大会、らしいですよ」


☆☆☆☆☆
いつもお読みくださり、ありがとうございます!!

本作の書籍化が決定いたしました。

これも、お読みくださる皆様方のおかげです。まことにありがとうございます。



レーベル:レジーナブックス様

発売日:1月下旬



イラストでも、とってもかっこいいクリフォードや、美人なクロア。そして何より、しれっとしているルィードを見て、私自身も感動で震えております!

ぜひ、お手に取っていただけますと幸いです。

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