聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理

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二度目の恋

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カスアン神は、怒りながら光弾をガレイオス神にぶつける。
「どうして、お前が戻ってきた!」
ガレイオス神は、穏やかに笑うと、軽やかに光弾をよけた。
「私の巫女に呼ばれてね。そろそろ戻るのもいいかと思って」

 妹神の前だからか、ガレイオス神の言葉は随分フランクだ。本来は、ああいう話し方をする神なのかもしれない。

「また、あの女か!」
カスアン神がこちらを見る。睨まれたと感じたのは、勘違いではないだろう。魔王が咄嗟に私を庇うように、前に出てくれた。

 カスアン神は、相変わらず光弾を放っているが、ことごとくかわされていた。
「カスアンも一度行ってみたら? 案外良いところだよ、地球──って、一度私の巫女を探しに来たのだっけ。無駄骨だったね」
「巫女が地球にいなかったのは、お前のせいか!」
「うん。だってほら、私の巫女をカスアンに傷つけさせるわけにはいかないし」

 ガレイオス神の返答に更に怒った、カスアン神は、光で出来た剣を作った。

 「もう一度、お前を追放してやる」
「かわいい妹の願いではあるけれど、聞くわけにはいかないな」
ガレイオス神も槍を光で作った。

 剣と槍がぶつかり合う。

 ──と。

 剣がポキリと折れた。
「な……」
「力比べで私に勝てるとでも? 随分思い上がっていたようだね」

 槍は、カスアン神の首もとでピタリと止まった。その穂先から、魔方陣が出現した。
 「男神ガレイオスの名に置いて、女神カスアンを追放する。……反省しておいで」

 「嫌だ! 殺す! そうなれば、あの女も道連れに──」
カスアン神が言い終わる前に、カスアン神は、魔方陣に吸い込まれて、見えなくなった。


 ■ □ ■

 後でガレイオス神に聞いた話によると、カスアン神は暫く、他の世界で過ごさせるらしい。反省したら呼び戻すといっていたけれど、少なくともガレイオス神が追放されていた500年は、そのままのようだ。

 「私の巫女、迷惑をかけたね」
「いいえ、ありがとうございます」 
これでひとまず、カスアン神のことは、片付いた。後は、人と魔物の戦争を終わらせれば、解決だろう。

 「お礼といっては何だけれども、貴方の願いを何でも一つ叶えよう。元の世界に帰るでも、巨万の富でも」

 何でも一つ、願いが叶う。だったら、私の願いは──


 ■ □ ■


 「本当に、あの願いで良かったのか?」
魔王が私に心配そうに尋ねる。
「貴方は、元の世界に帰ることもできたんだぞ」
魔王の私の想いへの信頼度のなさは、これから時間をかけて、改善していくとして。
魔王の問いに頷く。

 「はい。あれで、良かったと思います」
私の願いは、人為的に巫女や聖女を召喚する方法をなくすこと。これで、少なくとも、私のようにいきなり召喚されて殺されるなんてことは、なくなるんじゃないかと思う。

 「オドウェル様、私は貴方が好きですよ」
それでも、召喚されなければ、魔王と出会うこともなかった。だから、召喚されたことを不幸だとは思わないけれど。

 「わ、私も貴方が、好きだ」
魔王が耳を赤くしながら、私を抱き締めた。私もそっと、抱き締め返す。

 ──大好きなひとと歩んで行く、私の二度目の生は、始まったばかりだ。
  
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