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二度目の召喚
54 すれ違い
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もしかして、私って、魔王のことが。
「好き?」
いや、いやいやいやいや。好きって言われて好きになるなんて、小学生じゃないんだし。ううんでも。魔王は、とても尊敬できる人物だ。そして、優しい。
さっき名前を呼ばれたとき、どきどきしてふわふわした気分になった。
それに、私が処刑されるときの夢を見たときに、真っ先に会いたくなったひと。
私は、気づかなかっただけで、ずっと前から。
「……好き」
自覚した瞬間、色んな場面がフラッシュバックする。魔王に子守唄を歌ってもらったこと、魔王と一緒に寝たこと、魔王に月下氷人をもらったこと、魔王が戦争よりも私が帰ることを優先してくれたこと。
私、魔王が好きだ。だから、
「……ガレン」
せっかく私なんかがいいといってくれたけれど、断ろう。他に好きな人がいるのに、結婚するなんて不誠実だ。
翌日。今日は書類整理の仕事はお休みなので、ガレンに時間をつくってもらうよう取り次ぎを頼む。
すると、すぐに来てもいいという返事が返ってきたので、ガレンの執務室へと向かう。
ガレンは私の要件をさっしていたのか、すでに人払いを済ませてくれていた。
「ガレン、あのね、」
言葉につまる。プロポーズされたのも初めてだし、プロポーズを断るのも初めてだ。けれど、ガレンは急かすことなく、ずっと黙って待っていてくれた。
「プロポーズしてくれて、ありがとう。とても嬉しかったよ。でも、私他に好きな人がいるって気付いたんだ。だから──」
ガレンとは結婚できない。そう言おうとしたのに、ガレンは口を開いた。
「その先は言わないで。美香は、その方と結婚しようと考えているのですか?」
「けっ、結婚!?」
どうだろう。魔王は、私のことを好きだといってくれて、私も魔王のことを好きだと思う。たぶん、両想いだけど結婚するかどうかは、わからない。魔王は、ずっと隣にいて欲しいと願ったら、とまるでプロポーズみたいな言葉だったけれど、はっきりと言われたわけじゃないし。
「それは、わからないよ」
私がそう言うと、ガレンは困った顔をした。
「ならば、私もまだ諦められません。だから、まだ返事は言わないでください」
そうこられるとは、思ってなかったので、戸惑う。
「私のわがままだと、わかっています。けれど、どうか、お許し頂けませんか」
■ □ ■
「おはようございます」
「……あっ、ああおはよう」
今日は仕事が休みの連絡がなかったので、魔王の執務室へ向かうと、魔王の様子はどこか、よそよそしい。
おはようの声も蚊の鳴くような小さな声だった。
魔王は、そわそわと執務室の端から端まで歩いたあと、また、小さな声でいった。
「……か」
「か?」
私が尋ねると、魔王は意を決したように、力強い瞳で私を見つめた。
「申し訳ないが、昨日、私が口走ったことは忘れてくれないか?」
「……え?」
はじめてのおそらく、両思いというシチュエーションに少なからず浮かれていた私は、一気に現実へと引き戻された。
「あんなことを口走ったのに、烏滸がましいかもしれないが、貴方とは友人でいたい」
──そっか。私なんかじゃ、魔王の恋人になんてなれないよね。
「わかり、ました。忘れます」
「ありがとう」
魔王は安心したように微笑んだが、その顔を見ていられなくて、下を向いた。
「ミカ?」
「……何でもありません」
私の態度を不審に思った魔王が尋ねるが、それに首を降って答える。
「そうか?」
「はい」
その日は結局微妙な空気のまま、仕事をすることになった。
「好き?」
いや、いやいやいやいや。好きって言われて好きになるなんて、小学生じゃないんだし。ううんでも。魔王は、とても尊敬できる人物だ。そして、優しい。
さっき名前を呼ばれたとき、どきどきしてふわふわした気分になった。
それに、私が処刑されるときの夢を見たときに、真っ先に会いたくなったひと。
私は、気づかなかっただけで、ずっと前から。
「……好き」
自覚した瞬間、色んな場面がフラッシュバックする。魔王に子守唄を歌ってもらったこと、魔王と一緒に寝たこと、魔王に月下氷人をもらったこと、魔王が戦争よりも私が帰ることを優先してくれたこと。
私、魔王が好きだ。だから、
「……ガレン」
せっかく私なんかがいいといってくれたけれど、断ろう。他に好きな人がいるのに、結婚するなんて不誠実だ。
翌日。今日は書類整理の仕事はお休みなので、ガレンに時間をつくってもらうよう取り次ぎを頼む。
すると、すぐに来てもいいという返事が返ってきたので、ガレンの執務室へと向かう。
ガレンは私の要件をさっしていたのか、すでに人払いを済ませてくれていた。
「ガレン、あのね、」
言葉につまる。プロポーズされたのも初めてだし、プロポーズを断るのも初めてだ。けれど、ガレンは急かすことなく、ずっと黙って待っていてくれた。
「プロポーズしてくれて、ありがとう。とても嬉しかったよ。でも、私他に好きな人がいるって気付いたんだ。だから──」
ガレンとは結婚できない。そう言おうとしたのに、ガレンは口を開いた。
「その先は言わないで。美香は、その方と結婚しようと考えているのですか?」
「けっ、結婚!?」
どうだろう。魔王は、私のことを好きだといってくれて、私も魔王のことを好きだと思う。たぶん、両想いだけど結婚するかどうかは、わからない。魔王は、ずっと隣にいて欲しいと願ったら、とまるでプロポーズみたいな言葉だったけれど、はっきりと言われたわけじゃないし。
「それは、わからないよ」
私がそう言うと、ガレンは困った顔をした。
「ならば、私もまだ諦められません。だから、まだ返事は言わないでください」
そうこられるとは、思ってなかったので、戸惑う。
「私のわがままだと、わかっています。けれど、どうか、お許し頂けませんか」
■ □ ■
「おはようございます」
「……あっ、ああおはよう」
今日は仕事が休みの連絡がなかったので、魔王の執務室へ向かうと、魔王の様子はどこか、よそよそしい。
おはようの声も蚊の鳴くような小さな声だった。
魔王は、そわそわと執務室の端から端まで歩いたあと、また、小さな声でいった。
「……か」
「か?」
私が尋ねると、魔王は意を決したように、力強い瞳で私を見つめた。
「申し訳ないが、昨日、私が口走ったことは忘れてくれないか?」
「……え?」
はじめてのおそらく、両思いというシチュエーションに少なからず浮かれていた私は、一気に現実へと引き戻された。
「あんなことを口走ったのに、烏滸がましいかもしれないが、貴方とは友人でいたい」
──そっか。私なんかじゃ、魔王の恋人になんてなれないよね。
「わかり、ました。忘れます」
「ありがとう」
魔王は安心したように微笑んだが、その顔を見ていられなくて、下を向いた。
「ミカ?」
「……何でもありません」
私の態度を不審に思った魔王が尋ねるが、それに首を降って答える。
「そうか?」
「はい」
その日は結局微妙な空気のまま、仕事をすることになった。
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