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二度目の召喚
49 悩み事
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今日は、書類整理のお仕事はお休みだ。それなのに魔王に呼び出されたので、執務室へと向かう。私に気づくと、顔をあげて微笑んでくれたが、魔王は深刻そうな顔をしていた。
「ミカ、今朝、祠にいったら神気が戻っていた」
「ですが、ガレイオス神は、私の世界に来たカスアン神から逃れるため姿をお隠しになられていたのでは?」
カスアン神は未だに、地球で私を探しているはずだ。だから、もうしばらくは安全なはず。
「ああ、何かあったのかもしれない。追放されたガレイオス神の声が聞こえるのは貴方だけだ。共に祠にいってもらえないか?」
私にも関わることなのでもちろんだ。頷くと、魔王が手を差し出したので、その手をとる。
瞬きする間に、洞窟へと移動した。確かに、ガレイオス神の神気を感じる。魔方陣の真ん中で祈りを捧げると、ガレイオス神の声が聞こえた。
──私の巫女
ガレイオス神が戻られたということは、カスアン神はいまこちらの世界にいるのだろうか? 私が疑問に思っていると、ガレイオス神がそれに答える。
──それが、カスアンの気配がわからない
わからない?
──ああ。何かと混じりあって気配が追えない。本当は貴方に力を与えられたら良いのだが、そうすれば、カスアンに見つかってしまうからな。巫女、契る相手は見つかったか?
ガレンにプロポーズをされたが、まだ、答えを決めあぐねている。
──貴方にとって、一生を左右することだ。悩むのも当然だろうが、巫女、気を付けよ。カスアンは何としてでも貴方を害するつもりだ。
そう言うと、ガレイオス神の言葉は聞こえなくなった。魔王に、結婚のことは伏せて、ガレイオス神から聞いた話を伝える。
「やはり、ガレイオス神はおられたのだな。何かと混じりあっている、か。城にはカスアン神が入ってこられないように結界を張っているが、今まで以上に警戒した方がいいだろうな。何か、貴方が完全に安全になる方法は無いものか」
やっぱり魔王には、私が一番迷惑をかけている張本人であるし、結婚のことをいったほうがいいだろうか。
「あの、オドウェル様」
「どうした?」
……やはりいっておこう。
「実は、ガレイオス神から方法があると聞きました」
魔王に、結婚してこの世界の住人になれば、完全に巫女の力を失い、安全になれると話した。
「それは……、最後の方法だな」
魔王は、顔をしかめた。? 魔王には話していないが、ガレンからプロポーズされている。結婚すること事態は、難しいことではないはずだ。
「貴方の世界に貴方を待つ人がいるだろう。貴方が、この世界にずっといてくれるなら、どれほどいいだろう。けれど、私がそう思うのと同じように、いや、それ以上に貴方を思う人々がいる世界だ。それを、捨てよ、とは私は言えない」
魔王は、そういって、困った顔をした。
──ああ。魔王はそういう人だった。いつだって情けない私のことを、一番に考えてくれる。以前の戦争のときも、本来なら、私を利用するべきだった。それなのに、元の世界に帰ることをすすめてくれた。
「ありがとう、ございます」
本当なら、今回も結婚をすすめるべきだ。それなのに、魔王は、私を尊重してくれた。そんな貴方に私は何ができるだろう。
少しだけ泣きそうになった私の目元を魔王が、身を屈めて優しく擦る。
「泣いてませんよ」
「そうか。それなら良い」
ひとまず、戻るか。という魔王の言葉に頷いて、魔王の執務室へ戻る。
その後は、特に用事もないので、魔王に別れの挨拶をして、自分の客室へ戻った。
その途中で、ユーリンと出会った。ユーリンは、機嫌が良さそうだ。
「ユーリン、何か良いことでもあったのですか?」
話を聞くと、ユーリンの婚約者と会ったのだそうだ。
「ユーリンは、その婚約者の方といずれは結婚されるのですよね?」
「はい。兄上の結婚がまだですから、兄上が結婚してからになりますが」
そうか。魔王の結婚は一度は戦争で有耶無耶になり、また、今回の件で有耶無耶になった。その度に、ユーリンも婚期を逃しているのか。
ユーリンと別れて部屋に戻る。
──やっぱり、魔王はああいってくれたが、結婚した方がいいのかもしれない。
「ミカ、今朝、祠にいったら神気が戻っていた」
「ですが、ガレイオス神は、私の世界に来たカスアン神から逃れるため姿をお隠しになられていたのでは?」
カスアン神は未だに、地球で私を探しているはずだ。だから、もうしばらくは安全なはず。
「ああ、何かあったのかもしれない。追放されたガレイオス神の声が聞こえるのは貴方だけだ。共に祠にいってもらえないか?」
私にも関わることなのでもちろんだ。頷くと、魔王が手を差し出したので、その手をとる。
瞬きする間に、洞窟へと移動した。確かに、ガレイオス神の神気を感じる。魔方陣の真ん中で祈りを捧げると、ガレイオス神の声が聞こえた。
──私の巫女
ガレイオス神が戻られたということは、カスアン神はいまこちらの世界にいるのだろうか? 私が疑問に思っていると、ガレイオス神がそれに答える。
──それが、カスアンの気配がわからない
わからない?
──ああ。何かと混じりあって気配が追えない。本当は貴方に力を与えられたら良いのだが、そうすれば、カスアンに見つかってしまうからな。巫女、契る相手は見つかったか?
ガレンにプロポーズをされたが、まだ、答えを決めあぐねている。
──貴方にとって、一生を左右することだ。悩むのも当然だろうが、巫女、気を付けよ。カスアンは何としてでも貴方を害するつもりだ。
そう言うと、ガレイオス神の言葉は聞こえなくなった。魔王に、結婚のことは伏せて、ガレイオス神から聞いた話を伝える。
「やはり、ガレイオス神はおられたのだな。何かと混じりあっている、か。城にはカスアン神が入ってこられないように結界を張っているが、今まで以上に警戒した方がいいだろうな。何か、貴方が完全に安全になる方法は無いものか」
やっぱり魔王には、私が一番迷惑をかけている張本人であるし、結婚のことをいったほうがいいだろうか。
「あの、オドウェル様」
「どうした?」
……やはりいっておこう。
「実は、ガレイオス神から方法があると聞きました」
魔王に、結婚してこの世界の住人になれば、完全に巫女の力を失い、安全になれると話した。
「それは……、最後の方法だな」
魔王は、顔をしかめた。? 魔王には話していないが、ガレンからプロポーズされている。結婚すること事態は、難しいことではないはずだ。
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魔王は、そういって、困った顔をした。
──ああ。魔王はそういう人だった。いつだって情けない私のことを、一番に考えてくれる。以前の戦争のときも、本来なら、私を利用するべきだった。それなのに、元の世界に帰ることをすすめてくれた。
「ありがとう、ございます」
本当なら、今回も結婚をすすめるべきだ。それなのに、魔王は、私を尊重してくれた。そんな貴方に私は何ができるだろう。
少しだけ泣きそうになった私の目元を魔王が、身を屈めて優しく擦る。
「泣いてませんよ」
「そうか。それなら良い」
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「はい。兄上の結婚がまだですから、兄上が結婚してからになりますが」
そうか。魔王の結婚は一度は戦争で有耶無耶になり、また、今回の件で有耶無耶になった。その度に、ユーリンも婚期を逃しているのか。
ユーリンと別れて部屋に戻る。
──やっぱり、魔王はああいってくれたが、結婚した方がいいのかもしれない。
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