聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理

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二度目の生

34 巫女の日記

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 今日も魔王は聖女対策に忙しいので、書類整理はお休みだ。最近あまり、忙しい魔王と話せていないので、少し寂しい。

 「陛下に何かできないかな……」
私を友と呼んでくれた魔王の力に私もなりたい。魔王はああいってくれたけど、一番はやっぱり私に巫女の力があればなぁ、と思う。巫女と聖女が一対なら、本当の意味で聖女に対抗できるのは、巫女だけのはずだ。

 「巫女とは、己の願いを叶えし者、か」
私の今の一番の願いは、魔王の助けになることだ。だから、聖女と戦える力が欲しい。

 何か巫女の力が現れる手がかりがあれば、と図書室に行き、本を探す。
 けれど、以前借りた『巫女と聖女』という本以外、目ぼしいものは見つからなかった。

 そういえば、私が一番初めに巫女だと言われたのは、ユーリンだ。ユーリンには何か巫女について知っているだろうか。

 サーラに時間をつくって欲しいという言付けを頼んだ、翌日、ユーリンは私の部屋を訪れた。

 「忙しいときに、ごめんなさい。ユーリンは、巫女について何か知っていることはありませんか?」
ユーリンに魔王の力になりたいのだと話すと、ユーリンは考え込んだ。
「俺自身はあまり詳しくはありませんが、代々魔王に伝わる初代巫女の日記なら、何か手がかりになることがかかれているかもしれません。兄上も、貴方になら許可するでしょう。兄上に話してみます」

 初代巫女の日記……どんなことが書かれているんだろう。

 ユーリンにお礼をいい、その日は別れた。

 その翌日、忙しい中、魔王自ら私の部屋を訪れてくれ、初代巫女の日記を手渡してくれた。魔王は忙しいのにこんなことを思うのは不謹慎かもしれないが、魔王の顔が見れて嬉しい。

 「すまない、貴方に関わることなのにこの日記のことを忘れていた」
「いいえ、大切なものを見せていただいて、ありがとうございます」

 魔王は私に日記を手渡すと、すぐに執務室に戻ってしまった。

 日記は何か保護魔法でもかけてあるのか、とても綺麗な状態だった。
 日記を開いてみる。

 ──気づいたら、異世界にいた。私の名前は、未琴みこ。いつか、私の他にも異世界に迷い込む日本人がいるかもしれないから、役に立つかはわからないけれども、ここに記すことにしよう思う。

 「日本語だ……」
それに、現代語だ。日本語の可能性は高いと思っていたけれど、まさか、現代語とは思わなかった。てっきり古文だと思っていた。もしかしたら、この世界と日本では流れる時間が違うのかもしれない。

 最初は、当たり障りのないことが書かれていた。この世界と日本の違うところ、似ているところ。そして、魔王と恋をしたこと。

 ページをめくっていくと、気になる部分を見つけた。


 ──私が、『力』に目覚めたのは、祠に行ってからだ。
 
 「祠……?」
そこにいけば、私も力に目覚めるだろうか。でも、今のところ有力な手がかりはこの日記だけだ。

 祠がどこにあるのかは、わからないが、とりあえず、いってみよう。
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