14 / 15
妖の花嫁
13
しおりを挟む
「美冬が美冬として俺のそばにいてくれれば、他に何も望むことはない」
そう言って優しく旦那様は微笑む。
……でも。
「ふふ、納得してなさそうな顔だ」
旦那様はさらりと私の頬を撫でた。
その通りだわ。
「何かーー私でもお役に立てることはないでしょうか……?」
私は、旦那様の役に立ちたい。
そして、旦那様のことをもっと知りたい。
「……そうだね」
旦那様は体を起こすと、首を傾げた。
「美冬、子供は好き?」
◆◆◆
「妃殿下だ!」
「きさきって何?」
「陛下の奥さんってことだよー!」
口々に話しながら、興味深そうに私を見つめる三対の瞳。
私は今、現世でいう教卓のような机の前に立っていた。
旦那様が私に与えてくれた役割、それは、幼い妖の教育だ。
「初めまして、みなさん」
私が一礼するとーー。
「初めましてー!」
「うわ、しゃべった!」
「当然だろ」
妖の子供達は、ころころと鈴を転がすような声で、可愛らしい。
それぞれ鬼と妖狐と鴉天狗の子供、かしら?
「妃殿下の笑顔すてきー」
「陛下の奥さんなのに羽がないのー?」
「花嫁だからだよ」
ごほん。
私が咳払いをすると、三人は私の方を見て、静かになった。
それでも、相わらず瞳はきらきらと輝いているままだ。
「あなたたちに、私が人間や現世についてなど知っている限りのことを教えることになりました。
ーー美冬です」
私が名乗ると、三人は椅子から転げ落ちた。
「僕、陛下に殺されない?」
「真名って、やばいよね?」
「陛下が先に知ってるに決まってるよー!」
……真名?
どこかで聞いたことがある言葉だわ。でも、それよりも。
「大丈夫? 怪我はない?」
慌てて三人の元へ駆け寄ると、三人はうるうると瞳を潤ませた。
「妃殿下、優しいー」
「優しいのすきー!」
「名乗りたくなっちゃうよー」
三人に泣き止んで欲しくて、頭や背中を撫でる。
どうやら、怪我はなさそうだけれど。
「……この世界では、名乗るのはよくないの?」
少し落ち着いたのを見計らって、そう尋ねると、三人は教えてくれた。
「初めてがよくないよー」
「縛れちゃう」
「どこにも行けなくなるよー」
その後も口々に知っていることを必死に話してくれたことを頭の中で整理する。
この世界……妖閻の界では、初めて名乗った相手は、その人のことを従わせることができるのだという。
だから、真名……本当の名前の代わりに、渾名を使うことが一般的なようだ。
真名を名乗り合うのは、基本的に夫婦だけ、らしい。
妖にはそれが真名か渾名かが感覚的にわかるのだという。
……あれ、じゃあ。
「玲凛や、雅楽様も……」
「陛下のは真名だよー!」
そう言って優しく旦那様は微笑む。
……でも。
「ふふ、納得してなさそうな顔だ」
旦那様はさらりと私の頬を撫でた。
その通りだわ。
「何かーー私でもお役に立てることはないでしょうか……?」
私は、旦那様の役に立ちたい。
そして、旦那様のことをもっと知りたい。
「……そうだね」
旦那様は体を起こすと、首を傾げた。
「美冬、子供は好き?」
◆◆◆
「妃殿下だ!」
「きさきって何?」
「陛下の奥さんってことだよー!」
口々に話しながら、興味深そうに私を見つめる三対の瞳。
私は今、現世でいう教卓のような机の前に立っていた。
旦那様が私に与えてくれた役割、それは、幼い妖の教育だ。
「初めまして、みなさん」
私が一礼するとーー。
「初めましてー!」
「うわ、しゃべった!」
「当然だろ」
妖の子供達は、ころころと鈴を転がすような声で、可愛らしい。
それぞれ鬼と妖狐と鴉天狗の子供、かしら?
「妃殿下の笑顔すてきー」
「陛下の奥さんなのに羽がないのー?」
「花嫁だからだよ」
ごほん。
私が咳払いをすると、三人は私の方を見て、静かになった。
それでも、相わらず瞳はきらきらと輝いているままだ。
「あなたたちに、私が人間や現世についてなど知っている限りのことを教えることになりました。
ーー美冬です」
私が名乗ると、三人は椅子から転げ落ちた。
「僕、陛下に殺されない?」
「真名って、やばいよね?」
「陛下が先に知ってるに決まってるよー!」
……真名?
どこかで聞いたことがある言葉だわ。でも、それよりも。
「大丈夫? 怪我はない?」
慌てて三人の元へ駆け寄ると、三人はうるうると瞳を潤ませた。
「妃殿下、優しいー」
「優しいのすきー!」
「名乗りたくなっちゃうよー」
三人に泣き止んで欲しくて、頭や背中を撫でる。
どうやら、怪我はなさそうだけれど。
「……この世界では、名乗るのはよくないの?」
少し落ち着いたのを見計らって、そう尋ねると、三人は教えてくれた。
「初めてがよくないよー」
「縛れちゃう」
「どこにも行けなくなるよー」
その後も口々に知っていることを必死に話してくれたことを頭の中で整理する。
この世界……妖閻の界では、初めて名乗った相手は、その人のことを従わせることができるのだという。
だから、真名……本当の名前の代わりに、渾名を使うことが一般的なようだ。
真名を名乗り合うのは、基本的に夫婦だけ、らしい。
妖にはそれが真名か渾名かが感覚的にわかるのだという。
……あれ、じゃあ。
「玲凛や、雅楽様も……」
「陛下のは真名だよー!」
26
あなたにおすすめの小説
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
冷遇妃ライフを満喫するはずが、皇帝陛下の溺愛ルートに捕まりました!?
由香
恋愛
冷遇妃として後宮の片隅で静かに暮らすはずだった翠鈴。
皇帝に呼ばれない日々は、むしろ自由で快適——そう思っていたのに。
ある夜、突然現れた皇帝に顎を掴まれ、深く口づけられる。
「誰が、お前を愛していないと言った」
守るための“冷遇”だったと明かされ、逃げ道を塞がれ、甘く囲われ、何度も唇を奪われて——。
これは冷遇妃のはずだった少女が、気づけば皇帝の唯一へと捕獲されてしまう甘く濃密な溺愛物語。
元婚約者からの嫌がらせでわたくしと結婚させられた彼が、ざまぁしたら優しくなりました。ですが新婚時代に受けた扱いを忘れてはおりませんよ?
3333(トリささみ)
恋愛
貴族令嬢だが自他ともに認める醜女のマルフィナは、あるとき王命により結婚することになった。
相手は王女エンジェに婚約破棄をされたことで有名な、若き公爵テオバルト。
あまりにも不釣り合いなその結婚は、エンジェによるテオバルトへの嫌がらせだった。
それを知ったマルフィナはテオバルトに同情し、少しでも彼が報われるよう努力する。
だがテオバルトはそんなマルフィナを、徹底的に冷たくあしらった。
その後あるキッカケで美しくなったマルフィナによりエンジェは自滅。
その日からテオバルトは手のひらを返したように優しくなる。
だがマルフィナが新婚時代に受けた仕打ちを、忘れることはなかった。
氷のメイドが辞職を伝えたらご主人様が何度も一緒にお出かけするようになりました
まさかの
恋愛
「結婚しようかと思います」
あまり表情に出ない氷のメイドとして噂されるサラサの一言が家族団欒としていた空気をぶち壊した。
ただそれは田舎に戻って結婚相手を探すというだけのことだった。
それに安心した伯爵の奥様が伯爵家の一人息子のオックスが成人するまでの一年間は残ってほしいという頼みを受け、いつものようにオックスのお世話をするサラサ。
するとどうしてかオックスは真面目に勉強を始め、社会勉強と評してサラサと一緒に何度もお出かけをするようになった。
好みの宝石を聞かれたり、ドレスを着せられたり、さらには何度も自分の好きな料理を食べさせてもらったりしながらも、あくまでも社会勉強と言い続けるオックス。
二人の甘酸っぱい日々と夫婦になるまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる