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 ……それから、数年が過ぎました。
 わたくしは、できる限り、ヒロインと、イグニス殿下の接点を作ろうと頑張ったのですがーー。
「ことごとく、ノント様に阻まれますわ!」

 さすがは、幼馴染の鉄壁ガードですわね。

 ですが、このガードをくずさないことには、イグニス殿下とヒロインの出会いすら起こせない……という。
「ノントがどうしたの、シアノ」

 はっ!!!!!
 
 今日は、週に一度のイグニス殿下とのお茶会の日。なのに、わたくしったら、別のことを考えるなんて。

「い、いえ。ノント様の幼馴染はどんな方なのかなと」
「ノントの幼馴染?」
 イグニス殿下は、ぱちぱちと瞬きをした後、ふぅん、と唇を尖らせました。

「イグニス殿下?」
 いったいどうしたのかしら。
「ううん、別に」

 そういって、イグニス殿下は、わたくしの口にイチゴを放り込みました。
「……美味しい! このイチゴ、美味しいですよ、イグニス殿下。ぜひ、イグニス殿下も食べーーイグニス殿下?」

 イグニス殿下は、じっと、わたくしを見つめていらっしゃる。
 今日の服装、おかしかったかしら。
 急に、ドキドキと緊張するのを感じながら、イグニス殿下の言葉を待ちます。

「ううん、シアノは、可愛いなと思って」
「!?!!!!?!」

 推しから可愛いっていってもらえるなんて。
 嬉し過ぎます!!!

「ありがとうございます。イグニス殿下も本日もとっても素敵です!」

 素敵じゃなかったことなんて、ないですけどね!

「……素敵、ねぇ」
「……?」

 いつもなら、ありがとう、と微笑んでくださるのに、今日はどうしたんでしょうか。

「ねぇ、シアノ」
「はい、なんでしょう?」
「僕のことーー好き?」

 まぁ、推しが好きか、嫌いか、なんて。
 答えはわかりきっていますわ。

「大好きです!」
「そっか、ありがとう」
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