【短編】転生悪役令嬢は、負けヒーローを勝たせたい!

夕立悠理

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ーー数日後。
「シアノ」
 お父様から呼び出されました。
 なんでしょう。
 うっかり、お父様の秘蔵美人絵をお母様にばらしたことかしら。
 それとも、うっかり、お兄様の背中に蝉のぬけがらをいれてしまったことかしら。

 どきどきしながら、お父様の言葉を待つと……。
「お前の、婚約が決まった」

 な、なななななななんですってー???!!?

 そういえば、わたくし、まだショックを引きずっていて、お父様の権力でゴリ押し作戦⭐︎を実行していませんでした。

 この前のわたくしの愚行をみて、わたくしの周囲をはやく固めた方が良いとお父様に判断されてしまったのかしら。

「いやです!!!!」

 
 淑女としてあるまじき、声の大きさで拒否しました。
 だって、だって、わたくしはなんとしてでもイグニス殿下を幸せにするために生きたいのです。


 婚約者なんていたら、絶対に推し活なんてできないじゃないですか!

 浮気? とか疑われるのも面倒ですし、第一、最優先事項が他の男性だなんて、なかなか理解してくださる方はいないはず。

「……どうしたんだ?」

 けれど、いやです、とわたくしの絶叫が響き渡った部屋でもお父様は冷静に尋ねました。
「ここ数日でもう気が変わったのか?」
「わたくし、気が変わることなどございません」

 イグニス殿下を生涯推しつづける。
 その気に限ってですけれど。

「だったら問題ないな。王家には了承の返事をだしておく」
「……お、おうおうおおおうおうおうおうけ?」
「なんだか、変なリズムを刻んでいるが、そう、王家だ」

 王家。婚約。

「イグニス殿下と仲良くしなさい」


 ーーつまり、イグニス殿下の婚約者の座に収まれたってコトですのー!?!?!?

「えっ、ええ、えええええええええ!!!!」

「母上、シアノがうるさいです」
「あら、シアノがうるさいのは、いつものことじゃない」


 いつのまにか、書斎に入ってきていた、お母様とお兄様に、また生暖かい目をされましたが、そんなことより!!!!!

「神様、ありがとうございます!!!!!!」
 
 わたくし、なんとしてもイグニス殿下を幸せにして見せますわ。

◇◇◇
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