1 / 8
1
しおりを挟む
恋愛には、勝ち負けが存在いたします。
恋愛の勝ち負けとは、すなわち、好きな人と結ばれる側になる(勝ち)、結ばれない側になる(負け)か、ということです。
そして……よりにもよって負けたのが自分の推しだったなら?
推しを勝たせたかった……そう思うのは自然なことだと思います。
ーーというわけで。
「わたくし、決めました! 最推しである、イグニス様を絶対に勝たせてみますわ!!」
◇◇◇
突然だけれど、わたくしこと、シアノ•メルシャンには、前世の記憶がございます。前世、日本という国で、イグニス様を最推しとしていた記憶が。
イグニス様が登場するのは、「君に全て捧げよう」というロマンス小説。
ダブルヒーローもので、イグニス様は、その小説のヒーロー役の一人でした。
ダブルヒーロー。
つまり、小説の主人公たるヒロインに選ばれる可能性のあるヒーローが二人いる、という体制です。
もう一人のヒーローは、イグニス様のライバルであり親友の、近衛騎士ノント。
対するイグニス様は、この国の第二王子です。
えっ?
王子と騎士なら、王子が勝ちそうだと思うって?
わたくしだって、そう思っていましてよ!!
だから、安心して推していましたのに。
近衛騎士、という役割は確かに華やかではありますけれど、王子様というキラキラ感には勝てまいと思っておりました。
しかし、ノント様はそのほかにもある重要な、要素をお持ちなのです。
それが……ヒロインの幼馴染!!!!!
幼馴染は負けフラグ、なんて思っていた時期もございましたが、このフラグ意外と手強い!!
だって全てが、幼い頃から知っているから、で見せ場をかっさらえることに収束するんですのよ。
ヒロインに助けが欲しい場面で助けられるのも、些細な変化に気づけるのも、阿吽の呼吸がとれるのも、なにもかも全ては幼馴染の特権ですわ。
それに、何より幼い頃からヒロインを知っている……つまり、その片思い歴の長さ!!!
読者からも、作者からも、これだけ長いこと想ってるんだから、報われて欲しいよね! との同情を得やすい。
私の最推しイグニス様がいくら頑張ったところで、期間、という壁は、埋まりませんの。
……と、わたくしとしたことが、熱く語りすぎてしまいましたわ。
とにかく、せっかく最推しイグニス様がいる世界にわたくしは転生することができたのだから……、イグニス様を必ず幸せにして見せます。
もちろん、イグニス様にとって最高のハッピーエンドである、ヒロインと結ばれる、という方法を持ってして。
ところで、紹介が遅れましたが、わたくし、シアノ・メルシャンは、メルシャン公爵家の娘であり、イグニス様の婚約者候補であり、この世界の原作小説の悪役令嬢です。
神様、ナイスキャスティングですわー!
イグニス様の婚約者として、イグニス様が好意を寄せるヒロインをそれはもう激しくいじめて、イグニス様がそれを庇うという胸キュン場面を間近で拝見できるなんて!!
ご褒美以外の何物でもありませんわ。
「……よし、やってみせます、悪役令嬢」
そして、必ずや、イグニス様を幸せな勝ちヒーローにして差し上げるのよ!
「父上、まーた、シアノがぶつぶつ言ってる」
「パーティーで興奮しているんだろう。そっとしておいてやりなさい」
お父様とお兄様の、生暖かい目にはっ、と意識を戻します。
そう、今日は、イグニス様……イグニス殿下のお披露目パーティー!
ふふん、今日のために、わたくしも目一杯オシャレをしてきましたの。
だって、イグニス様の婚約者にならないと、悪役令嬢としてヒロインとくっつけるのが難しくなってしまいますからね。
だから、少しでも気に入られようと、気合十分です。
けれど、イグニス殿下の婚約者になりたいのは、わたくしだけじゃなく、他の令嬢もおんなじ。
「ちゃっちゃと、令嬢を蹴散らしますわよ!」
「父上、またシアノが物騒なこと言ってる」
「放っておきなさい。シアノが変なのはいつものことだよ」
お父様ったら、可愛い娘をつかまえて、変、とはひどくないかしら。
いいえ、でも。
わたくしが、頑張らなければいけないのは、お父様の評価を上げることではなく、イグニス殿下の婚約者の座に収まること。
恋敵がいる方が、恋は燃え上がりますもの。
頑張ります!
恋愛の勝ち負けとは、すなわち、好きな人と結ばれる側になる(勝ち)、結ばれない側になる(負け)か、ということです。
そして……よりにもよって負けたのが自分の推しだったなら?
推しを勝たせたかった……そう思うのは自然なことだと思います。
ーーというわけで。
「わたくし、決めました! 最推しである、イグニス様を絶対に勝たせてみますわ!!」
◇◇◇
突然だけれど、わたくしこと、シアノ•メルシャンには、前世の記憶がございます。前世、日本という国で、イグニス様を最推しとしていた記憶が。
イグニス様が登場するのは、「君に全て捧げよう」というロマンス小説。
ダブルヒーローもので、イグニス様は、その小説のヒーロー役の一人でした。
ダブルヒーロー。
つまり、小説の主人公たるヒロインに選ばれる可能性のあるヒーローが二人いる、という体制です。
もう一人のヒーローは、イグニス様のライバルであり親友の、近衛騎士ノント。
対するイグニス様は、この国の第二王子です。
えっ?
王子と騎士なら、王子が勝ちそうだと思うって?
わたくしだって、そう思っていましてよ!!
だから、安心して推していましたのに。
近衛騎士、という役割は確かに華やかではありますけれど、王子様というキラキラ感には勝てまいと思っておりました。
しかし、ノント様はそのほかにもある重要な、要素をお持ちなのです。
それが……ヒロインの幼馴染!!!!!
幼馴染は負けフラグ、なんて思っていた時期もございましたが、このフラグ意外と手強い!!
だって全てが、幼い頃から知っているから、で見せ場をかっさらえることに収束するんですのよ。
ヒロインに助けが欲しい場面で助けられるのも、些細な変化に気づけるのも、阿吽の呼吸がとれるのも、なにもかも全ては幼馴染の特権ですわ。
それに、何より幼い頃からヒロインを知っている……つまり、その片思い歴の長さ!!!
読者からも、作者からも、これだけ長いこと想ってるんだから、報われて欲しいよね! との同情を得やすい。
私の最推しイグニス様がいくら頑張ったところで、期間、という壁は、埋まりませんの。
……と、わたくしとしたことが、熱く語りすぎてしまいましたわ。
とにかく、せっかく最推しイグニス様がいる世界にわたくしは転生することができたのだから……、イグニス様を必ず幸せにして見せます。
もちろん、イグニス様にとって最高のハッピーエンドである、ヒロインと結ばれる、という方法を持ってして。
ところで、紹介が遅れましたが、わたくし、シアノ・メルシャンは、メルシャン公爵家の娘であり、イグニス様の婚約者候補であり、この世界の原作小説の悪役令嬢です。
神様、ナイスキャスティングですわー!
イグニス様の婚約者として、イグニス様が好意を寄せるヒロインをそれはもう激しくいじめて、イグニス様がそれを庇うという胸キュン場面を間近で拝見できるなんて!!
ご褒美以外の何物でもありませんわ。
「……よし、やってみせます、悪役令嬢」
そして、必ずや、イグニス様を幸せな勝ちヒーローにして差し上げるのよ!
「父上、まーた、シアノがぶつぶつ言ってる」
「パーティーで興奮しているんだろう。そっとしておいてやりなさい」
お父様とお兄様の、生暖かい目にはっ、と意識を戻します。
そう、今日は、イグニス様……イグニス殿下のお披露目パーティー!
ふふん、今日のために、わたくしも目一杯オシャレをしてきましたの。
だって、イグニス様の婚約者にならないと、悪役令嬢としてヒロインとくっつけるのが難しくなってしまいますからね。
だから、少しでも気に入られようと、気合十分です。
けれど、イグニス殿下の婚約者になりたいのは、わたくしだけじゃなく、他の令嬢もおんなじ。
「ちゃっちゃと、令嬢を蹴散らしますわよ!」
「父上、またシアノが物騒なこと言ってる」
「放っておきなさい。シアノが変なのはいつものことだよ」
お父様ったら、可愛い娘をつかまえて、変、とはひどくないかしら。
いいえ、でも。
わたくしが、頑張らなければいけないのは、お父様の評価を上げることではなく、イグニス殿下の婚約者の座に収まること。
恋敵がいる方が、恋は燃え上がりますもの。
頑張ります!
28
お気に入りに追加
222
あなたにおすすめの小説

攻略対象の王子様は放置されました
白生荼汰
恋愛
……前回と違う。
お茶会で公爵令嬢の不在に、前回と前世を思い出した王子様。
今回の公爵令嬢は、どうも婚約を避けたい様子だ。
小説家になろうにも投稿してます。

転生悪役令嬢は冒険者になればいいと気が付いた
よーこ
恋愛
物心ついた頃から前世の記憶持ちの悪役令嬢ベルティーア。
国の第一王子との婚約式の時、ここが乙女ゲームの世界だと気が付いた。
自分はメイン攻略対象にくっつく悪役令嬢キャラだった。
はい、詰んだ。
将来は貴族籍を剥奪されて国外追放決定です。
よし、だったら魔法があるこのファンタジーな世界を満喫しよう。
国外に追放されたら冒険者になって生きるぞヒャッホー!


ほら、誰もシナリオ通りに動かないから
蔵崎とら
恋愛
乙女ゲームの世界にモブとして転生したのでゲームの登場人物を観察していたらいつの間にか巻き込まれていた。
ただヒロインも悪役も攻略対象キャラクターさえも、皆シナリオを無視するから全てが斜め上へと向かっていってる気がするようなしないような……。
※ちょっぴり百合要素があります※
他サイトからの転載です。

【改稿版】婚約破棄は私から
どくりんご
恋愛
ある日、婚約者である殿下が妹へ愛を語っている所を目撃したニナ。ここが乙女ゲームの世界であり、自分が悪役令嬢、妹がヒロインだということを知っていたけれど、好きな人が妹に愛を語る所を見ていると流石にショックを受けた。
乙女ゲームである死亡エンドは絶対に嫌だし、殿下から婚約破棄を告げられるのも嫌だ。そんな辛いことは耐えられない!
婚約破棄は私から!
※大幅な修正が入っています。登場人物の立ち位置変更など。
◆3/20 恋愛ランキング、人気ランキング7位
◆3/20 HOT6位
短編&拙い私の作品でここまでいけるなんて…!読んでくれた皆さん、感謝感激雨あられです〜!!(´;ω;`)

【完結】悪役令嬢の反撃の日々
くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

婚約破棄をいたしましょう。
見丘ユタ
恋愛
悪役令嬢である侯爵令嬢、コーデリアに転生したと気づいた主人公は、卒業パーティーの婚約破棄を回避するために奔走する。
しかし無慈悲にも卒業パーティーの最中、婚約者の王太子、テリーに呼び出されてしまうのだった。

悪役令嬢に転生したようですが、前世の記憶が戻り意識がはっきりしたのでセオリー通りに行こうと思います
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢に転生したのでとりあえずセオリー通り悪役ルートは回避する方向で。あとはなるようになれ、なお話。
ご都合主義の書きたいところだけ書き殴ったやつ。
小説家になろう様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる