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あなたの悲しみ
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その後すぐ。彼女は顔を真っ青にさせた公爵によって回収された。話を聞いたところによると、彼女は公爵家の養女になったばかりの元平民らしい。
「私だけがあなたの悲しみを理解できる」
彼女が囁いた言葉を唱えてみる。なぜだか、ちくりと胸が痛いわ。
セオドア殿下の悲しみ。それは、人の心が読めてしまうこと。
私は、とってもとっても素敵な力だと思うけれど。
セオドア殿下は、彼女が去った後、呆然として呟いた。
「何も……聞こえなかったんだ」
「どうしたの?」
「何かを考えてないときとはまるで違った感覚で──彼女の心の声が、なにも」
「もしかして、青い瞳の人同士は、心が、読めない?」
「そうかも。僕の側には今までいたことないからわからないけれど……」
戸惑うような顔をした後、セオドア殿下は微笑んだ。
「大丈夫。僕は、悲しくなんてないよ。だって僕には──、君がいるから」
「私が?」
「うんそう。僕をちゃんと理解してくれる人。だから、そんなに心配そうな顔しないで」
セオドア殿下が私の頬を撫でる。私は耳まで真っ赤になった。だって、私はセオドア殿下に恋をしているんだもの。心配しても、おかしくはない、わよね?
「キャロル、僕も君に恋してる」
そういうセオドア殿下の笑みは、最高にきれいで。私は何度目か、わからないけれど。また、セオドア殿下に恋に落ちたのだった。
「私だけがあなたの悲しみを理解できる」
彼女が囁いた言葉を唱えてみる。なぜだか、ちくりと胸が痛いわ。
セオドア殿下の悲しみ。それは、人の心が読めてしまうこと。
私は、とってもとっても素敵な力だと思うけれど。
セオドア殿下は、彼女が去った後、呆然として呟いた。
「何も……聞こえなかったんだ」
「どうしたの?」
「何かを考えてないときとはまるで違った感覚で──彼女の心の声が、なにも」
「もしかして、青い瞳の人同士は、心が、読めない?」
「そうかも。僕の側には今までいたことないからわからないけれど……」
戸惑うような顔をした後、セオドア殿下は微笑んだ。
「大丈夫。僕は、悲しくなんてないよ。だって僕には──、君がいるから」
「私が?」
「うんそう。僕をちゃんと理解してくれる人。だから、そんなに心配そうな顔しないで」
セオドア殿下が私の頬を撫でる。私は耳まで真っ赤になった。だって、私はセオドア殿下に恋をしているんだもの。心配しても、おかしくはない、わよね?
「キャロル、僕も君に恋してる」
そういうセオドア殿下の笑みは、最高にきれいで。私は何度目か、わからないけれど。また、セオドア殿下に恋に落ちたのだった。
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