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転移

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「……隣国に?」
「ええ」
 頷くと神官は、こちらへどうぞ、と手招きをした。

 神官について歩くと、かつかつとヒール音が神殿内をこだまする。
「他の方は誰もいらっしゃらないのですか?」
「防犯のため、本日のみ、人払いをしております」

 ?????

 防犯ならもっと人がいたほうがいいような……。

 神官が、止まった。
 大きな扉の前だ。

 彫刻が施された見事な扉は、重い音を立てて開いた。

「……きれい」

 扉の中には、青白く光る転移陣が広がっている。

 その光景に、思わず息を呑み、思わず転移陣の方へ一歩進む。


 ……がちゃり。
「!?」


 施錠されたような音がして振り向くと、先ほどまで開いていた扉が閉まっていた。神官は扉の外にいるようだ。
「まもなく、転移陣が発動致します」
「ちょっとまって、せめて、説明を……!」

 隣国に転移するのはわかったけれども。
 それ以外まったくなにひとつといって、わかっていない。

「陣の中央へ、お入りください。そちらのほうが空間酔いしにくいので」

 私が求めているのは、そんな説明ではなく。この転移陣が隣国のどこに座標指定されているのか、私は誰に嫁がされるのか、とかそういうことだ。

 でも、そう言える時間もなく、転移陣が回転を始める。

「あっ……」

 そういえば、あの子は?

 肩に乗ったままの小鳥はつぶらな青の瞳で私を見つめている。

「だめよ、はやくにげなきゃ!!!」

 傷つけないようにそっと小鳥を包んだその瞬間、転移陣が発動した。

「……っ、」

 ごめんなさい、私、またーー。

 転移陣が発光し、思わず目を閉じる。

 一瞬浮遊感を感じ、そして、光が消えた。

「こころよりお待ちしておりました」

 女性の声に、目を開ける。
「……ここ、は」

 毛足の長い赤い絨毯。
 きらきら輝くシャンデリア。
 美しい絵画たち。


「ここは、帝国アムリファ。未来の皇后陛下、お会いできて光栄です」



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