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子ウサギ
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侍女は随分と立腹の様子。
しかし、「あなたのせい」なんて言われて「はいそうですか、ごめんなさい」と言えるほど、私の性格は優しくありません。
アスノ殿下の体調がどうだか知りませんが、私とジュリアン殿下の婚姻は政略的なもの。
まさか、既婚者でもあるアスノ殿下のために私に離婚しろなんて言わないですよね。
しかも、とらないで、なんて随分と幼稚な願いです。別に私はアスノ殿下との接触を禁止しているわけではありません。それなのに侍女という立場で私とジュリアン殿下の結婚生活にとやかく言われるとは。
「……」
思わず、ため息が漏れてしまいました。
「なんですか! そんな顔をして、私は真剣にーー」
「では、真剣に話しましょう。あなたの行動が、アスノ殿下の首を絞めることになるかもしれない、とは思わないの?」
……思ってなかったようです。
目を見開いてこちらをみた侍女に、またため息が出そうになります。
「アスノ殿下は王太子妃、つまり、婚姻なされている。そして、ジュリアン殿下は私の夫」
「ーーそれは、でも」
ぎゅっと手を握りしめて、ふるふると震える様は、子ウサギのようですね。
まぁ、主人に部下は似るというので、小動物のようなアスノ殿下に似ていても不思議ではありませんね。
ウサギも私は嫌いですが。
……なんて、どうでもいいことはさておいて。
「でも、なんでしょう? 私とジュリアン殿下が政略結婚であること、知っているでしょう。我が祖国は小国ではありますが、豊かで、帝国とも伝手があり、この婚姻もそちら……アーネリア国から望んだこと」
ーーそれをわざわざぶち壊しにする覚悟はあるの? それをあなたの主人は喜ぶ人なの?
そう続けると侍女は黙りました。
「わかったなら……」
早く帰って欲しいです。
アスノ殿下からの手紙の内容も気になりますし。
「私は、アスノ殿下のためを想って……」
あら、あらあらあら。
まだ粘るつもりですか。
目に涙をためながら、私を睨みつけた彼女にくすり、と微笑みます。
「なにがおかしいのですか!」
「おかしい以外のなにものでもないでしょう」
そんなに声を荒らげて、これではアスノ殿下への心象がダダ下がりです。
「あなたが本当にアスノ殿下を思うのなら、早くアスノ殿下の元へ帰りなさい。ーーアスノ殿下は、侍女の教育もできない方ではないでしょう?」
「!!!」
私を、きっと睨みつけると……、侍女は礼をして去って行きました。
「処しますか」
ミミリがぼそっと言った言葉に首を振ります。
「いいえ。面倒ごとは嫌いだもの。それよりも」
先ほどの侍女から受け取った手紙をみます。
「こちらを開けてみましょうか」
しかし、「あなたのせい」なんて言われて「はいそうですか、ごめんなさい」と言えるほど、私の性格は優しくありません。
アスノ殿下の体調がどうだか知りませんが、私とジュリアン殿下の婚姻は政略的なもの。
まさか、既婚者でもあるアスノ殿下のために私に離婚しろなんて言わないですよね。
しかも、とらないで、なんて随分と幼稚な願いです。別に私はアスノ殿下との接触を禁止しているわけではありません。それなのに侍女という立場で私とジュリアン殿下の結婚生活にとやかく言われるとは。
「……」
思わず、ため息が漏れてしまいました。
「なんですか! そんな顔をして、私は真剣にーー」
「では、真剣に話しましょう。あなたの行動が、アスノ殿下の首を絞めることになるかもしれない、とは思わないの?」
……思ってなかったようです。
目を見開いてこちらをみた侍女に、またため息が出そうになります。
「アスノ殿下は王太子妃、つまり、婚姻なされている。そして、ジュリアン殿下は私の夫」
「ーーそれは、でも」
ぎゅっと手を握りしめて、ふるふると震える様は、子ウサギのようですね。
まぁ、主人に部下は似るというので、小動物のようなアスノ殿下に似ていても不思議ではありませんね。
ウサギも私は嫌いですが。
……なんて、どうでもいいことはさておいて。
「でも、なんでしょう? 私とジュリアン殿下が政略結婚であること、知っているでしょう。我が祖国は小国ではありますが、豊かで、帝国とも伝手があり、この婚姻もそちら……アーネリア国から望んだこと」
ーーそれをわざわざぶち壊しにする覚悟はあるの? それをあなたの主人は喜ぶ人なの?
そう続けると侍女は黙りました。
「わかったなら……」
早く帰って欲しいです。
アスノ殿下からの手紙の内容も気になりますし。
「私は、アスノ殿下のためを想って……」
あら、あらあらあら。
まだ粘るつもりですか。
目に涙をためながら、私を睨みつけた彼女にくすり、と微笑みます。
「なにがおかしいのですか!」
「おかしい以外のなにものでもないでしょう」
そんなに声を荒らげて、これではアスノ殿下への心象がダダ下がりです。
「あなたが本当にアスノ殿下を思うのなら、早くアスノ殿下の元へ帰りなさい。ーーアスノ殿下は、侍女の教育もできない方ではないでしょう?」
「!!!」
私を、きっと睨みつけると……、侍女は礼をして去って行きました。
「処しますか」
ミミリがぼそっと言った言葉に首を振ります。
「いいえ。面倒ごとは嫌いだもの。それよりも」
先ほどの侍女から受け取った手紙をみます。
「こちらを開けてみましょうか」
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