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本当に本気
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「はい、いらっしゃいました」
私は、笑い転げたくなるのを抑えて、ゆったりと微笑みます。
「義姉上は、何か言っていたか?」
「そうですね……」
私があえて考え込むフリをすると、ジュリアン殿下は、そわそわと落ち着かないご様子。
「ジュリアン殿下をよろしく、と言われました。それから、ジュリアン殿下がとても素敵な方だとも」
「……そうか」
ジュリアン殿下は、俯かれましたが、まるで、親に褒められたときの子供のように、顔がにやけているのが見て取れて、嬉しさをかくしきれていませんね。
本当にわかりやすくて、可愛らしいお方ですね。
「それにしても」
私はジュリアン殿下を見つめます。
「お忙しい中、心配してくださってありがとうございます」
「……心配?」
「ええ。アスノ殿下と私が仲良くなれるか、心配してくださったのでしょう?」
ジュリアン殿下の中の心配は、おそらく、アスノ殿下に対するものが大半どころか全てかもしれませんが。
それでも、こうしてアスノ殿下ではなく、私を訪ねてきてくださったことに変わりはありません。
「……あぁ」
ジュリアン殿下は頷きました。
「そうだな。形式上とはいえ、君が私の妻であることには変わりはない」
「……!」
意外、でした。
てっきり、妻とは認めてないーーということを言われるのかと思っていましたから。
その割には、朝食を共にとろうともしなかったり、妻として扱う気があるのかないのか、よくわからない人ですね。
「……ふふ」
思わず、笑みがこぼれます。
作り物ではない、本物の笑み。
「! ……なにがおかしい?」
不機嫌そうに微かに赤い耳でジュリアン殿下が私を睨むように見つめます。
「いえ。嬉しくて」
よかった。
やはり、ジュリアン殿下は愛すべき可愛らしい方でした。
「……その程度で喜ぶとは」
ジュリアン殿下は、なんとも言えない表情をしたあと、横を向きました。
「……では、あれは本当に本気なのか?」
小さくぼそぼそと呟かれた言葉は、しっかりと私の耳に届いています。
ジュリアン殿下が言っているのは、昨夜私がジュリアン殿下に言った、「愛することを許してほしい」との言葉でしょう。
私はそれには答えず、にっこりと微笑みます。
「それにしても、ジュリアン殿下は美しいですね」
濃い青色のサラサラな髪も。
琥珀色の瞳も。
文句なしに美しいです。
「……私の外見の話か?」
少し小馬鹿にしたように、ジュリアン殿下は鼻で笑いました。
まぁ、ジュリアン殿下の見た目なら、言われ慣れているでしょうね。
「はい。私はまだジュリアン殿下のこと、その見た目以外、ほとんど知りませんもの。……なので」
私は、ベルを鳴らしてミミリを呼び出します。
ミミリの手には一冊の本が抱えられていました。
さすが、ミミリ。
私のことをよくわかっていますね。
私はミミリから本を受け取ると、ジュリアン殿下に渡しました。
「……これは?」
「私とジュリアン殿下の日記です」
私は、笑い転げたくなるのを抑えて、ゆったりと微笑みます。
「義姉上は、何か言っていたか?」
「そうですね……」
私があえて考え込むフリをすると、ジュリアン殿下は、そわそわと落ち着かないご様子。
「ジュリアン殿下をよろしく、と言われました。それから、ジュリアン殿下がとても素敵な方だとも」
「……そうか」
ジュリアン殿下は、俯かれましたが、まるで、親に褒められたときの子供のように、顔がにやけているのが見て取れて、嬉しさをかくしきれていませんね。
本当にわかりやすくて、可愛らしいお方ですね。
「それにしても」
私はジュリアン殿下を見つめます。
「お忙しい中、心配してくださってありがとうございます」
「……心配?」
「ええ。アスノ殿下と私が仲良くなれるか、心配してくださったのでしょう?」
ジュリアン殿下の中の心配は、おそらく、アスノ殿下に対するものが大半どころか全てかもしれませんが。
それでも、こうしてアスノ殿下ではなく、私を訪ねてきてくださったことに変わりはありません。
「……あぁ」
ジュリアン殿下は頷きました。
「そうだな。形式上とはいえ、君が私の妻であることには変わりはない」
「……!」
意外、でした。
てっきり、妻とは認めてないーーということを言われるのかと思っていましたから。
その割には、朝食を共にとろうともしなかったり、妻として扱う気があるのかないのか、よくわからない人ですね。
「……ふふ」
思わず、笑みがこぼれます。
作り物ではない、本物の笑み。
「! ……なにがおかしい?」
不機嫌そうに微かに赤い耳でジュリアン殿下が私を睨むように見つめます。
「いえ。嬉しくて」
よかった。
やはり、ジュリアン殿下は愛すべき可愛らしい方でした。
「……その程度で喜ぶとは」
ジュリアン殿下は、なんとも言えない表情をしたあと、横を向きました。
「……では、あれは本当に本気なのか?」
小さくぼそぼそと呟かれた言葉は、しっかりと私の耳に届いています。
ジュリアン殿下が言っているのは、昨夜私がジュリアン殿下に言った、「愛することを許してほしい」との言葉でしょう。
私はそれには答えず、にっこりと微笑みます。
「それにしても、ジュリアン殿下は美しいですね」
濃い青色のサラサラな髪も。
琥珀色の瞳も。
文句なしに美しいです。
「……私の外見の話か?」
少し小馬鹿にしたように、ジュリアン殿下は鼻で笑いました。
まぁ、ジュリアン殿下の見た目なら、言われ慣れているでしょうね。
「はい。私はまだジュリアン殿下のこと、その見た目以外、ほとんど知りませんもの。……なので」
私は、ベルを鳴らしてミミリを呼び出します。
ミミリの手には一冊の本が抱えられていました。
さすが、ミミリ。
私のことをよくわかっていますね。
私はミミリから本を受け取ると、ジュリアン殿下に渡しました。
「……これは?」
「私とジュリアン殿下の日記です」
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