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王都へ

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 マカリは王都──というか、人が密集している場所が嫌いだ。だからか、王都には死んでもいかないといっていた。本当なら、宮廷魔術師になれる才能があるのに、私たちの育った町で、魔法の研究を続けている。


 王都へと向かう馬車の中、私はマカリとの日々を思い出していた。

「ヴィオラ、今日から隣に引っ越してきたお友だちだよ」
 お父さんとお母さんに紹介されたのは、この世のものとは思えないほど、美しい顔をした少年だった。黒髪に、星屑のような金の瞳がよく映えている。

 私は、一目でマカリに恋に落ちた。

 私はとにかくマカリの世話を焼くことにした。それはもちろん、マカリが好きだから。というのもあったけれど。一番は、心配だったからだ。マカリはおじいさんと二人暮らしだった。けれど、おじいさんは、体の調子を崩しがちだった。

 マカリは、そんなおじいさんを必死に看病していたけれど、そのぶん、自分のことはおざなりだった。

 まるで、おじいさんが助かったなら、自分は死んでもいいとでもいうほど。それほど、マカリは必死だった。

 けれど、マカリの努力の甲斐なく、おじいさんは亡くなった。

 マカリはおじいさんの葬儀がおわったあとも、自分のことはおざなりだった。

 私は、マカリが後をおわないか心配で。マカリの後をついて回った。

 マカリはずっと荒んだ瞳をしていた。その荒んだ瞳にもう一度光を取り戻したくて、私はそのためなら何でもした。

 正直いって、マカリには迷惑がられていたと思う。
 でも、それでも構わなかった。

 でも、マカリはある日──、突然、笑うようになった。

 なぜかはわからない。でも、おじいさんのことを受け止めたマカリは、笑うようになって、私はその笑みにもう一度、恋をした。

 でも、よかった。これで、マカリはもう、大丈夫。

 そう思った私がマカリのそばを離れようとしたとき、マカリはいった。
「どこいくの?」

 と。まるで、私の居場所がマカリのそばであることを許されたみたいで、私は舞い上がった。

 それ以来、ずっとマカリに会うたびに、マカリに大好きだと告げた。

 マカリはいつも笑顔を見せてはくれたけれど、一度も、それに応えてくれたことはなかった。

 今日は、マカリとであって十年目。

 つまり私がマカリに恋に落ちてから、十年ということになる。これ以上、マカリのことを好きで居続けても、マカリにとっては迷惑だろうし。

 でも、マカリのそばにいたら、私はきっとマカリのことを諦めきれない。

 だから、私はこの恋心を封印するために王都にでることにしたのだった。











 王都での暮らしは順調だった。
 路銀がつきる前に、仕事を見つけることができた。王都での、物価や家賃に驚いたけれど、それなりの生活水準を維持できそうだ。

 仕事を見つけ、王都での家に帰ろうとしたそのとき。

 後ろから、手を捕まれた。
「!?」
「やっと、見つけた。ヴィオラ」
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