2 / 8
2
しおりを挟む
落ち着け、落ち着くのよ、私。そうそうこんなときは、深呼吸よ。すって、吐いて。すって、吐いて。うん。落ち着いてきた。
それにしても、やりやがったわね、お父様。
なーにが、必ず幸せになれるさ。その得意な嘘泣きをつかって、ロペス公爵を落としなさい。よ!
私の嘘泣きはそもそもお父様に仕込まれたものなのに。
「……はぁ」
ため息をついて、馬車の窓から外を眺める。変わっていく景色は、のどかだ。春だからか、どこも活気があっていい。
そののどかさは、私の前世を思い起こさせた。地球という星の日本という国で生まれ育った記憶。
幸せだった。恵まれていた。──そのことにすら、気づかないほど。
「ふわぁあ」
思わず欠伸をしてしまい、目を覚ます。どうやら春の陽気にあてられて、眠ってしまったようだった。ん、と大きく伸びをしたところで、ひときわ大きく馬車が揺れた。どうやら、公爵邸についたようだ。
ロペス公爵はどんな方なのかしらね。
御者にお礼をいって馬車から降り、公爵邸の前に立つ。
この世界の貴族は、結婚といってもすぐに結婚する訳じゃない。一年の婚約期間をもうけ、その一年間は婚約者は男性の家で過ごすのが通例だ。
一年間一緒に過ごしてみて、合わなかったらわかれればいい……といいたいところだけれども。残念ながら、そんな例はほとんどない。どちらかというと、一年の間にお互いの感情のすりあわせをするのだ。
情を育んでいくのか、それとも割りきった政略結婚をするのか。
まぁ、女嫌いで有名な公爵閣下のことだもの。後者になるに違いないわ。
嘘泣きで落とせばいいなんて、お父様は言うけれど。私ごときの嘘泣きで落ちるほど、公爵閣下は甘くはないだろう。
これでも、恋愛に興味があったんだけどなぁと、考えながら応接室に通される。
応接室では、既に公爵閣下が待っていた。さらさらの金髪に海のように澄んだ青い瞳。なるほど。確かに美しい。
「お初にお目にかかります。リミカ・ブラウンと申し──」
けれど。私の言葉は最後までいえなかった。青の瞳と目があったと思うと、彼──チェスター様は、顔を真っ赤にして倒れたからだ。
それにしても、やりやがったわね、お父様。
なーにが、必ず幸せになれるさ。その得意な嘘泣きをつかって、ロペス公爵を落としなさい。よ!
私の嘘泣きはそもそもお父様に仕込まれたものなのに。
「……はぁ」
ため息をついて、馬車の窓から外を眺める。変わっていく景色は、のどかだ。春だからか、どこも活気があっていい。
そののどかさは、私の前世を思い起こさせた。地球という星の日本という国で生まれ育った記憶。
幸せだった。恵まれていた。──そのことにすら、気づかないほど。
「ふわぁあ」
思わず欠伸をしてしまい、目を覚ます。どうやら春の陽気にあてられて、眠ってしまったようだった。ん、と大きく伸びをしたところで、ひときわ大きく馬車が揺れた。どうやら、公爵邸についたようだ。
ロペス公爵はどんな方なのかしらね。
御者にお礼をいって馬車から降り、公爵邸の前に立つ。
この世界の貴族は、結婚といってもすぐに結婚する訳じゃない。一年の婚約期間をもうけ、その一年間は婚約者は男性の家で過ごすのが通例だ。
一年間一緒に過ごしてみて、合わなかったらわかれればいい……といいたいところだけれども。残念ながら、そんな例はほとんどない。どちらかというと、一年の間にお互いの感情のすりあわせをするのだ。
情を育んでいくのか、それとも割りきった政略結婚をするのか。
まぁ、女嫌いで有名な公爵閣下のことだもの。後者になるに違いないわ。
嘘泣きで落とせばいいなんて、お父様は言うけれど。私ごときの嘘泣きで落ちるほど、公爵閣下は甘くはないだろう。
これでも、恋愛に興味があったんだけどなぁと、考えながら応接室に通される。
応接室では、既に公爵閣下が待っていた。さらさらの金髪に海のように澄んだ青い瞳。なるほど。確かに美しい。
「お初にお目にかかります。リミカ・ブラウンと申し──」
けれど。私の言葉は最後までいえなかった。青の瞳と目があったと思うと、彼──チェスター様は、顔を真っ赤にして倒れたからだ。
20
お気に入りに追加
2,836
あなたにおすすめの小説

ヤンデレお兄様から、逃げられません!
夕立悠理
恋愛
──あなたも、私を愛していなかったくせに。
エルシーは、10歳のとき、木から落ちて前世の記憶を思い出した。どうやら、今世のエルシーは家族に全く愛されていないらしい。
それならそれで、魔法も剣もあるのだし、好きに生きよう。それなのに、エルシーが記憶を取り戻してから、義兄のクロードの様子がおかしい……?
ヤンデレな兄×少しだけ活発な妹

マルフィル嬢の日々
夏千冬
恋愛
第一王子アルバートに婚約破棄をされてから二年経ったある日、自分には前世があったのだと思い出したマルフィルは、己のわがままボディに絶句する。
それも王命により屋敷に軟禁状態。肉襦袢を着込んだ肉塊のニート令嬢だなんて絶対にいかん!
改心を決めたマルフィルは、手始めにダイエットを始めた。そして今年行われるアルバートの生誕祝賀パーティーに出席することをスタート目標に、更生計画を開始する!
※こちらはアルファポリス様、小説家になろう様で投稿させて頂きました「婚約破棄から〜2年後〜からのおめでとう」の連載版です。タイトルは仮決定です。

ヤンデレお兄様に殺されたくないので、ブラコンやめます!(長編版)
夕立悠理
恋愛
──だって、好きでいてもしかたないもの。
ヴァイオレットは、思い出した。ここは、ロマンス小説の世界で、ヴァイオレットは義兄の恋人をいじめたあげくにヤンデレな義兄に殺される悪役令嬢だと。
って、むりむりむり。死ぬとかむりですから!
せっかく転生したんだし、魔法とか気ままに楽しみたいよね。ということで、ずっと好きだった恋心は封印し、ブラコンをやめることに。
新たな恋のお相手は、公爵令嬢なんだし、王子様とかどうかなー!?なんてうきうきわくわくしていると。
なんだかお兄様の様子がおかしい……?
※小説になろうさまでも掲載しています
※以前連載していたやつの長編版です

好きだと伝えたら、一旦保留って言われて、考えた。
さこの
恋愛
「好きなの」
とうとう告白をした。
子供の頃からずっーと好きだったから。学園に入学する前に気持ちを伝えた。
ほぼ毎日会っている私と彼。家同士も付き合いはあるし貴族の派閥も同じ。
学園に入る頃には婚約をしている子たちも増えるっていうし、両親に言う前に気持ちを伝えた。
まずは気持ちを知ってもらいたかったから。
「知ってる」
やっぱり! だってちゃんと告白したのは今日が初めてだけど、態度には出ていたと思うから、知られてて当然なのかも。
「私の事どう思っている?」
「うーん。嫌いじゃないけど、一旦保留」
保留って何?
30話程で終わります。ゆるい設定です!
ホットランキング入りありがとうございます!ペコリ(⋆ᵕᴗᵕ⋆).+2021/10/22

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら
夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。
それは極度の面食いということ。
そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。
「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ!
だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」
朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい?
「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」
あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?
それをわたしにつける??
じょ、冗談ですよね──!?!?

鴉の運命の花嫁は、溺愛される
夕立悠理
恋愛
筝蔵美冬(ことくらみふゆ)は、筝蔵家の次女。箏蔵家の元には多大な名誉と富が集まる。けれどそれは、妖との盟約により、いずれ生まれる『運命の花嫁』への結納金として、もたらされたものだった。美冬は、盟約に従い、妖の元へ嫁ぐことになる。
妖。人ならざる者。いったいどんな扱いをうけるのか。戦々恐々として嫁いだ美冬。けれど、妖は美冬のことを溺愛し――。

甘すぎ旦那様の溺愛の理由(※ただし旦那様は、冷酷陛下です!?)
夕立悠理
恋愛
伯爵令嬢ミレシアは、恐れ多すぎる婚約に震えていた。
父が結んできた婚約の相手は、なんと冷酷と謳われている隣国の皇帝陛下だったのだ。
何かやらかして、殺されてしまう未来しか見えない……。
不安に思いながらも、隣国へ嫁ぐミレシア。
そこで待っていたのは、麗しの冷酷皇帝陛下。
ぞっとするほど美しい顔で、彼はミレシアに言った。
「あなたをずっと待っていました」
「……え?」
「だって、下僕が主を待つのは当然でしょう?」
下僕。誰が、誰の。
「過去も未来も。永久に俺の主はあなただけ」
「!?!?!?!?!?!?」
そういって、本当にミレシアの前では冷酷どころか、甘すぎるふるまいをする皇帝ルクシナード。
果たして、ルクシナードがミレシアを溺愛する理由は――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる