もうすぐ、お別れの時間です

夕立悠理

文字の大きさ
上 下
4 / 6

そのよん

しおりを挟む
「どうして……」
マーカス殿下はアイカを愛するはずだ。まだアイカが病気にかかっていない、今、私を婚約者とする理由がない。

 「突然のことで、戸惑わせてすまない。でも、私はあなたがいいんだ」
ああ、それとも。これは、本当に夢か。だって、マーカス殿下がそんなこというはずがない。私の願望が見せた夢なら納得できる。

 夢ならば、躊躇わず頷くべきだろうか。でも。私はそこまで、楽観的にもなれない。なにせ、可愛いげのない私がみる夢なのだ。今後マーカス殿下がアイカに恋に落ちる可能性は十分にある。

 答えられない私の態度をどうとったのか、マーカス殿下は、苦笑した。
「返事はすぐでなくて構わない。だから、どうか、考えてみてくれないか」






 翌日。夢は、覚めなかった。私は相変わらず12才で。アイカはまだ病にかかっていない。夢ならアイカが病にかかるまでに何か出来るんじゃないかと思ったけれど、アイカの病は生活習慣によってなるものではない。せいぜいが、健康に気を付けてね、と手紙を送るくらいだった。

 「お嬢様、アルロ様がいらっしゃいましたよ」
「今いくわ」
アルロ。私の幼なじみだ。私の父とアルロの父が学友で、幼い頃何度も一緒に遊んだ。

 「やぁ、レオーネ」
「こんにちは、アルロ」
今日も遊びの誘いかしら。そう思いながら、アルロの顔を見つめる。アルロは、なぜかとても緊張した顔をしていた。

 「どうしたの?」
いつもニコニコしているアルロにしては、珍しい。私が、尋ねるとアルロは言いづらそうに切り出した。

「昨日のパーティーで、マーカス殿下と話をしていただろう? どんな話をしたのかなって」
「天気の話と……料理の話よ」
アルロは将来マーカス殿下の側近になる。だから、マーカス殿下のことが気になるのかしらね。そう思いながら答えると、アルロは続けた。

 「本当に、それだけ?」
「え?」
「例えば、マーカス殿下に告白されたりだとか」

 ……告白、になるのかしらね。マーカス殿下は確かに私がいいと言った。でも、それは。これが私の願望だからで。

 「図星、なんだね」
「そ、そんなこと──」
「レオーネとずっと一緒にいたんだ。それくらいわかるよ。でも、僕も負けるつもりはないから。僕も、レオーネのこと、好きだよ。ずっと、前から」
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

【完結】捨ててください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。 でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。 分かっている。 貴方は私の事を愛していない。 私は貴方の側にいるだけで良かったのに。 貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。 もういいの。 ありがとう貴方。 もう私の事は、、、 捨ててください。 続編投稿しました。 初回完結6月25日 第2回目完結7月18日

余命1年の侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
余命を宣告されたその日に、主人に離婚を言い渡されました

【完結】内緒で死ぬことにした  〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を〜

たろ
恋愛
手術をしなければ助からないと言われました。 でもわたしは利用価値のない人間。 手術代など出してもらえるわけもなく……死ぬまで努力し続ければ、いつかわたしのことを、わたしの存在を思い出してくれるでしょうか? 少しでいいから誰かに愛されてみたい、死ぬまでに一度でいいから必要とされてみたい。 生きることを諦めた女の子の話です ★異世界のゆるい設定です

【完結】どうかその想いが実りますように

おもち。
恋愛
婚約者が私ではない別の女性を愛しているのは知っている。お互い恋愛感情はないけど信頼関係は築けていると思っていたのは私の独りよがりだったみたい。 学園では『愛し合う恋人の仲を引き裂くお飾りの婚約者』と陰で言われているのは分かってる。 いつまでも貴方を私に縛り付けていては可哀想だわ、だから私から貴方を解放します。 貴方のその想いが実りますように…… もう私には願う事しかできないから。 ※ざまぁは薄味となっております。(当社比)もしかしたらざまぁですらないかもしれません。汗 お読みいただく際ご注意くださいませ。 ※完結保証。全10話+番外編1話です。 ※番外編2話追加しました。 ※こちらの作品は「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています。

邪魔者は消えようと思たのですが……どういう訳か離してくれません

りまり
恋愛
 私には婚約者がいるのですが、彼は私が嫌いのようでやたらと他の令嬢と一緒にいるところを目撃しています。  そんな時、あまりの婚約者殿の態度に両家の両親がそんなに嫌なら婚約解消しようと話が持ち上がってきた時、あれだけ私を無視していたのが嘘のような態度ですり寄ってくるんです。  本当に何を考えているのやら?

婚約者を追いかけるのはやめました

カレイ
恋愛
 公爵令嬢クレアは婚約者に振り向いて欲しかった。だから頑張って可愛くなれるように努力した。  しかし、きつい縦巻きロール、ゴリゴリに巻いた髪、匂いの強い香水、婚約者に愛されたいがためにやったことは、全て侍女たちが嘘をついてクロアにやらせていることだった。  でも前世の記憶を取り戻した今は違う。髪もメイクもそのままで十分。今さら手のひら返しをしてきた婚約者にももう興味ありません。

【完結】私の大好きな人は、親友と結婚しました

紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
伯爵令嬢マリアンヌには物心ついた時からずっと大好きな人がいる。 その名は、伯爵令息のロベルト・バミール。 学園卒業を控え、成績優秀で隣国への留学を許可されたマリアンヌは、その報告のために ロベルトの元をこっそり訪れると・・・。 そこでは、同じく幼馴染で、親友のオリビアとベットで抱き合う二人がいた。 傷ついたマリアンヌは、何も告げぬまま隣国へ留学するがーーー。 2年後、ロベルトが突然隣国を訪れてきて?? 1話完結です 【作者よりみなさまへ】 *誤字脱字多数あるかと思います。 *初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ *ゆるふわ設定です

魅了魔法にかかって婚約者を死なせた俺の後悔と聖夜の夢

恋愛
  『スカーレット、貴様のような悪女を王太子妃にするわけにはいかん!今日をもって、婚約を破棄するっ!!』  王太子スティーヴンは宮中舞踏会で婚約者であるスカーレット・ランドルーフに婚約の破棄を宣言した。    この、お話は魅了魔法に掛かって大好きな婚約者との婚約を破棄した王太子のその後のお話。 ※このお話はハッピーエンドではありません。 ※魔法のある異世界ですが、クリスマスはあります。 ※ご都合主義でゆるい設定です。

処理中です...