もうすぐ、お別れの時間です

夕立悠理

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そのよん

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「どうして……」
マーカス殿下はアイカを愛するはずだ。まだアイカが病気にかかっていない、今、私を婚約者とする理由がない。

 「突然のことで、戸惑わせてすまない。でも、私はあなたがいいんだ」
ああ、それとも。これは、本当に夢か。だって、マーカス殿下がそんなこというはずがない。私の願望が見せた夢なら納得できる。

 夢ならば、躊躇わず頷くべきだろうか。でも。私はそこまで、楽観的にもなれない。なにせ、可愛いげのない私がみる夢なのだ。今後マーカス殿下がアイカに恋に落ちる可能性は十分にある。

 答えられない私の態度をどうとったのか、マーカス殿下は、苦笑した。
「返事はすぐでなくて構わない。だから、どうか、考えてみてくれないか」






 翌日。夢は、覚めなかった。私は相変わらず12才で。アイカはまだ病にかかっていない。夢ならアイカが病にかかるまでに何か出来るんじゃないかと思ったけれど、アイカの病は生活習慣によってなるものではない。せいぜいが、健康に気を付けてね、と手紙を送るくらいだった。

 「お嬢様、アルロ様がいらっしゃいましたよ」
「今いくわ」
アルロ。私の幼なじみだ。私の父とアルロの父が学友で、幼い頃何度も一緒に遊んだ。

 「やぁ、レオーネ」
「こんにちは、アルロ」
今日も遊びの誘いかしら。そう思いながら、アルロの顔を見つめる。アルロは、なぜかとても緊張した顔をしていた。

 「どうしたの?」
いつもニコニコしているアルロにしては、珍しい。私が、尋ねるとアルロは言いづらそうに切り出した。

「昨日のパーティーで、マーカス殿下と話をしていただろう? どんな話をしたのかなって」
「天気の話と……料理の話よ」
アルロは将来マーカス殿下の側近になる。だから、マーカス殿下のことが気になるのかしらね。そう思いながら答えると、アルロは続けた。

 「本当に、それだけ?」
「え?」
「例えば、マーカス殿下に告白されたりだとか」

 ……告白、になるのかしらね。マーカス殿下は確かに私がいいと言った。でも、それは。これが私の願望だからで。

 「図星、なんだね」
「そ、そんなこと──」
「レオーネとずっと一緒にいたんだ。それくらいわかるよ。でも、僕も負けるつもりはないから。僕も、レオーネのこと、好きだよ。ずっと、前から」
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