もうすぐ、お別れの時間です

夕立悠理

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そのに

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「お嬢様、起きてください。朝ですよ」
侍女の声で目を覚ます。
「んん……」
まだ、もう少しだけ眠っていたい。

 「お嬢様、今日はマーカス殿下の誕生日を祝うガーデンパーティーがあるんですから! 支度が間に合わなくなりますよ」
マーカス殿下の誕生日を祝うガーデンパーティー? アイカの治癒を祝うパーティーではなく? 浮かんだ疑問に、眠気は自然と吹き飛んだ。

 「……え?」
飛び起きて気づいた。部屋がいつもより広い。どういうこと?
「最近、部屋の改装でもしたかしら?」
「まだ寝ぼけてるんですか、レオーネ様」
それに侍女のサシャも私が知っているよりも随分と若い姿だった。

 ぼんやりとしながら、目を擦ると、自分の手の小ささに驚く。
「え?」
まさか。そんなはずは。そう思いながら、鏡の前にたつ。そこに映っていたのは、幼い姿の私だった。

 「ねぇ、サシャ。今日は何年の何日だったかしら?」
私が震える声で尋ねると、サシャはよどみなく答えてくれた。その日は。アイカがマーカス殿下に見初められるパーティーが行われる日だった。そして、私がマーカス殿下に恋に落ちた日でもある。

 私は夢でも見ているの?

 けれど、頬をつねってもとても痛いだけだった。

 混乱している私にも、サシャは容赦がない。気づけば、ドレスに着替えさせられ、髪を結われ、馬車に乗せられていた。

 もし、仮にこれが現実なら。どうして、過去に戻ったのだろう。それも、わざわざ私が一番見たくない日に。

 疑問はつきないけれど。これでも私は公爵令嬢なのだ。パーティーでは、それに恥じない行動をしなければならない。そう思っていたのに。


 「レオーネ嬢、私と話さないか?」
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