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そのいち

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──期限つきの恋だった。そんなの、わかってた、はずだったのに。

 「アイカの病は治った。ありがとう、私の側にいてくれて」
ありがとう。これから、切り捨てられる私には残酷な、言葉だと思った。いっそ、使い捨てられた方があなたを恨めたのに。
「……いえ」
アイカ。王太子マーカス殿下の恋人。そして、私の親友の名前でもある。私は彼女の代わりに、マーカス殿下の婚約者となった。王太子の婚約者は、本来なら彼女がなるはずだった。けれど、彼女は難しい病にかかってしまった。治療に時間を有する病に。けれど、王太子の立場の安定には婚約者が必要だった。後ろ楯のある、健康な婚約者が。

 そこで、白羽の矢がたったのが私だった。公爵家の娘であり、健康に問題がなく、何よりアイカの親友だから、彼女の病が良くなれば、身をひく。

 そして、アイカの病はよくなった。そのことはとても、嬉しい。でも、この恋の消費期限が来てしまったことが、とても悲しかった。

 「レオーネ、君には、幸せになってほしいと思ってる。だから、いい縁談を探させてくれ──」

 幸せになってほしい。

 隣にあなたはいないのに?

 心が千切れそうだった。手放しにアイカの治癒だけを喜べない自分が醜くて、嫌だ。

 けれど、心とは反対に、口許は自然と笑みを形作っていた。
「ありがとうございます」





 私の恋は、終わった。終わったはずだった、それなのに。

 翌日、目を覚ますと、5年前に時間が巻き戻っていた。
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