竜王陛下の番……の妹様は、隣国で溺愛される

夕立悠理

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別の運命

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 私の番が──……?
 何を。なにを、言っているんだ、スカーレットは。私の番。愛しい番。いつも怯えた瞳で私を見ていた。あの、黄みがかった、青の瞳に私を映すことがないなど、信じられない。

「もっと言うと、あのこは別の『運命』に出会いました」
「番の運命は、私をおいて他にはない」
 私がそう言うと、スカーレットは微笑んだ。
「ええ、私があなたの運命です」
「ちが──」
「麗しき竜王陛下。竜王陛下であらせられる貴方様が、まさか番をお間違えに? ご冗談を」
そういって、スカーレットは口元を髪と揃いの花嫁衣装で隠した。そして深々と礼をする。

「竜王陛下──いえ、『旦那様』。どうか、末永くお願い致しますね」

◇◇◇

「どうしたんだ、急に青ざめて」
ルカニアは不思議そうに首をかしげた。
「ご無礼を、お許しください」

 私は慌ててベッドから起き上がると、床におり、平伏した。私の今のライアガシャでの身分は──隣国からの亡命者、あるいは移民といったところだろうか。

 そんな私が王族相手に、ベッドの上でお話ししていいはずがない。
 床に頭をすりそうなほど、頭を伏せた私の上に、ぽん、と手をおいて、ルカニアは言った。
「……そんなにかしこまらないでくれ」
 そんなわけには、いかない。
「頭を上げてくれないか」
「……ですが」

 そんなこと、許されるのだろうか。
 でも、彼の望みなら。

 しぶしぶ顔を上げると、翡翠の瞳と目があった。
「俺は──」
 何かルカニアがいいかけたとき、わふっ、と元気な声がして私の頬がなめられる。
 ──そういえば、この子……シュバルツの存在をすっかり忘れていた。

 その後もシュバルツは、私に体を擦り付けてくる。

「シュバルツ、そんなに気に入ったんだな」
 その様子を見て、ふむ、とルカニアは考え込んだ。
「アオリ嬢」
「はい!」
「よければ、シュバルツ──帝獣の、教育係になってくれないか?」

※※※
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