竜王陛下の番……の妹様は、隣国で溺愛される

夕立悠理

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呼び出し

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 おそらく私以外のこの国全員が待ち焦がれたであろう、竜王陛下の運命の番である姉、スカーレットと、レナルド竜王陛下の結婚式当日になった。

 私はもちろん、体調不良で欠席――したかったところだけれど、そんなわけにもいかず親族席に座ろうとして、呼び出された。
「妹様」
 侍女のダヴィに呼ばれて振り向くと、彼女はきらきらと瞳を輝かせていた。
「何かしら?」
 とても嫌な予感が胸の中で膨らむ。ダヴィがこの顔をする時、あの人が関わっているのは決まっている。

「スカーレット様が、妹様をお呼びです」
「……。それ、拒否――」
 私が首を横に振ろうとすると、すかさずダヴィに妹様は、姉想いじゃないんですね! と大きな声で喚かれたのでしぶしぶ、頷く。
「……わかったわ」
 

 幼い頃ならいざ知れず成長した私たちの間には、ほとんど交流が無かった。
 最初は、私も姉に会おうと試みた。けれど、姉に会いに行くたびに、あの美しくて恐ろしい人が姉にべったりくっついている。否、それだけなら良かった。姉自身も、竜王陛下にべったりと抱き着いているのだ。

 私は、なぜだか、それを見るのが嫌だった。
 ……本当に、なぜだかわからないけれど。

 それだけじゃない。姉は、竜王陛下がそばにいると、私をまるでないものかの様に扱った。いちゃつく恋人たちは得てしてそういうものなのかもしれないけれど。
 流石に、それが何度も続くと、会おうという気にすらならなかった。

 我が国の結婚式のしきたりに、結婚式当日は、新郎と新婦は結婚式まで会ってはならないというものがある。

 だから、今、姉の傍には竜王陛下はいないはず。
 それなら、会うのも少しは億劫ではない――かもしれない。

 新婦の控室の間に通された。衛兵に取次ぎを頼んで、許可が出たので、その中に入る。
 深呼吸を一つして、顔を上げる。するとその名の通り、黄みよりの赤い髪にその髪とお揃いの衣装を身に着けた姉が立っていた。
「……久しぶりね」
「そうですね。スカーレット様。この度は、ご結婚おめでとうございます」
「ありがとう」
 その後しばらく家族の物とは思えない、天気の話など、空々しい話をした後。
 ようやく姉は、憂いを帯びた表情で、本題を切り出した。
「ねぇ、あなた、この国をでるつもりはない?」
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