3 / 10
呼び出し
しおりを挟む
おそらく私以外のこの国全員が待ち焦がれたであろう、竜王陛下の運命の番である姉、スカーレットと、レナルド竜王陛下の結婚式当日になった。
私はもちろん、体調不良で欠席――したかったところだけれど、そんなわけにもいかず親族席に座ろうとして、呼び出された。
「妹様」
侍女のダヴィに呼ばれて振り向くと、彼女はきらきらと瞳を輝かせていた。
「何かしら?」
とても嫌な予感が胸の中で膨らむ。ダヴィがこの顔をする時、あの人が関わっているのは決まっている。
「スカーレット様が、妹様をお呼びです」
「……。それ、拒否――」
私が首を横に振ろうとすると、すかさずダヴィに妹様は、姉想いじゃないんですね! と大きな声で喚かれたのでしぶしぶ、頷く。
「……わかったわ」
幼い頃ならいざ知れず成長した私たちの間には、ほとんど交流が無かった。
最初は、私も姉に会おうと試みた。けれど、姉に会いに行くたびに、あの美しくて恐ろしい人が姉にべったりくっついている。否、それだけなら良かった。姉自身も、竜王陛下にべったりと抱き着いているのだ。
私は、なぜだか、それを見るのが嫌だった。
……本当に、なぜだかわからないけれど。
それだけじゃない。姉は、竜王陛下がそばにいると、私をまるでないものかの様に扱った。いちゃつく恋人たちは得てしてそういうものなのかもしれないけれど。
流石に、それが何度も続くと、会おうという気にすらならなかった。
我が国の結婚式のしきたりに、結婚式当日は、新郎と新婦は結婚式まで会ってはならないというものがある。
だから、今、姉の傍には竜王陛下はいないはず。
それなら、会うのも少しは億劫ではない――かもしれない。
新婦の控室の間に通された。衛兵に取次ぎを頼んで、許可が出たので、その中に入る。
深呼吸を一つして、顔を上げる。するとその名の通り、黄みよりの赤い髪にその髪とお揃いの衣装を身に着けた姉が立っていた。
「……久しぶりね」
「そうですね。スカーレット様。この度は、ご結婚おめでとうございます」
「ありがとう」
その後しばらく家族の物とは思えない、天気の話など、空々しい話をした後。
ようやく姉は、憂いを帯びた表情で、本題を切り出した。
「ねぇ、あなた、この国をでるつもりはない?」
私はもちろん、体調不良で欠席――したかったところだけれど、そんなわけにもいかず親族席に座ろうとして、呼び出された。
「妹様」
侍女のダヴィに呼ばれて振り向くと、彼女はきらきらと瞳を輝かせていた。
「何かしら?」
とても嫌な予感が胸の中で膨らむ。ダヴィがこの顔をする時、あの人が関わっているのは決まっている。
「スカーレット様が、妹様をお呼びです」
「……。それ、拒否――」
私が首を横に振ろうとすると、すかさずダヴィに妹様は、姉想いじゃないんですね! と大きな声で喚かれたのでしぶしぶ、頷く。
「……わかったわ」
幼い頃ならいざ知れず成長した私たちの間には、ほとんど交流が無かった。
最初は、私も姉に会おうと試みた。けれど、姉に会いに行くたびに、あの美しくて恐ろしい人が姉にべったりくっついている。否、それだけなら良かった。姉自身も、竜王陛下にべったりと抱き着いているのだ。
私は、なぜだか、それを見るのが嫌だった。
……本当に、なぜだかわからないけれど。
それだけじゃない。姉は、竜王陛下がそばにいると、私をまるでないものかの様に扱った。いちゃつく恋人たちは得てしてそういうものなのかもしれないけれど。
流石に、それが何度も続くと、会おうという気にすらならなかった。
我が国の結婚式のしきたりに、結婚式当日は、新郎と新婦は結婚式まで会ってはならないというものがある。
だから、今、姉の傍には竜王陛下はいないはず。
それなら、会うのも少しは億劫ではない――かもしれない。
新婦の控室の間に通された。衛兵に取次ぎを頼んで、許可が出たので、その中に入る。
深呼吸を一つして、顔を上げる。するとその名の通り、黄みよりの赤い髪にその髪とお揃いの衣装を身に着けた姉が立っていた。
「……久しぶりね」
「そうですね。スカーレット様。この度は、ご結婚おめでとうございます」
「ありがとう」
その後しばらく家族の物とは思えない、天気の話など、空々しい話をした後。
ようやく姉は、憂いを帯びた表情で、本題を切り出した。
「ねぇ、あなた、この国をでるつもりはない?」
50
お気に入りに追加
3,616
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
あなたの運命になりたかった
夕立悠理
恋愛
──あなたの、『運命』になりたかった。
コーデリアには、竜族の恋人ジャレッドがいる。竜族には、それぞれ、番という存在があり、それは運命で定められた結ばれるべき相手だ。けれど、コーデリアは、ジャレッドの番ではなかった。それでも、二人は愛し合い、ジャレッドは、コーデリアにプロポーズする。幸せの絶頂にいたコーデリア。しかし、その翌日、ジャレッドの番だという女性が現れて──。
※一話あたりの文字数がとても少ないです。
※小説家になろう様にも投稿しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ヤンデレお兄様から、逃げられません!
夕立悠理
恋愛
──あなたも、私を愛していなかったくせに。
エルシーは、10歳のとき、木から落ちて前世の記憶を思い出した。どうやら、今世のエルシーは家族に全く愛されていないらしい。
それならそれで、魔法も剣もあるのだし、好きに生きよう。それなのに、エルシーが記憶を取り戻してから、義兄のクロードの様子がおかしい……?
ヤンデレな兄×少しだけ活発な妹
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
恋心を封印したら、なぜか幼馴染みがヤンデレになりました?
夕立悠理
恋愛
ずっと、幼馴染みのマカリのことが好きだったヴィオラ。
けれど、マカリはちっとも振り向いてくれない。
このまま勝手に好きで居続けるのも迷惑だろうと、ヴィオラは育った町をでる。
なんとか、王都での仕事も見つけ、新しい生活は順風満帆──かと思いきや。
なんと、王都だけは死んでもいかないといっていたマカリが、ヴィオラを追ってきて……。
君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!!
打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
運命は、手に入れられなかったけれど
夕立悠理
恋愛
竜王の運命。……それは、アドルリア王国の王である竜王の唯一の妃を指す。
けれど、ラファリアは、運命に選ばれなかった。選ばれたのはラファリアの友人のマーガレットだった。
愛し合う竜王レガレスとマーガレットをこれ以上見ていられなくなったラファリアは、城を出ることにする。
すると、なぜか、王国に繁栄をもたらす聖花の一部が枯れてしまい、竜王レガレスにも不調が出始めーー。
一方、城をでて開放感でいっぱいのラファリアは、初めて酒場でお酒を飲み、そこで謎の青年と出会う。
運命を間違えてしまった竜王レガレスと、腕のいい花奏師のラファリアと、謎の青年(魔王)との、運命をめぐる恋の話。
※カクヨム様でも連載しています。
そちらが一番早いです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…
ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。
王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。
それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。
貧しかった少女は番に愛されそして……え?
君は僕の番じゃないから
椎名さえら
恋愛
男女に番がいる、番同士は否応なしに惹かれ合う世界。
「君は僕の番じゃないから」
エリーゼは隣人のアーヴィンが子供の頃から好きだったが
エリーゼは彼の番ではなかったため、フラれてしまった。
すると
「君こそ俺の番だ!」と突然接近してくる
イケメンが登場してーーー!?
___________________________
動機。
暗い話を書くと反動で明るい話が書きたくなります
なので明るい話になります←
深く考えて読む話ではありません
※マーク編:3話+エピローグ
※超絶短編です
※さくっと読めるはず
※番の設定はゆるゆるです
※世界観としては割と近代チック
※ルーカス編思ったより明るくなかったごめんなさい
※マーク編は明るいです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる