ちょっとまって、柚くんは義弟様！！……だよね？

そのさん

あ、姉だと思ってない？　うそ、だよね。
「ゆ、柚くん、それって、」
「嘘でも、冗談でもない」
私が聞こうとしたことを先回りされ、目の前が真っ暗になる。

　だって、だって、ずっとお姉ちゃんって呼んでくれた。中学生になって、名前で呼ばれることになっても、この関係はずっと変わらないのだと思っていた。柚くんは私の弟で、私は柚くんのお姉ちゃんで。それなのに。

　「……この言葉の意味をしっかり考えてよ、夏音」
そういって、柚くんは歩き出した。でも、宣言通り私を置いていかないように、ゆっくりとした早さで。それなのに、私はなかなか歩き出せずにいた。




　「はぁ」
ため息をつく。昨日は結局、柚くんの言葉がぐるぐると回り、一睡もできなかった。
「ため息なんてついて、どうしたの、夏音。って、すごいクマ！」
寝不足は隠しきれてなかったらしく、茜ちゃんが驚いていた。

　「うう、茜ちゃーん」
思わず茜ちゃんに抱きつく。茜ちゃんは、よしよし、と私の頭を撫でてくれた。
「それでどうしたの。……えっ、なに。柚貴くんに、姉だと思ってないって言われた？」

　私が半泣きになりながら、頷くと、なるほどねぇ、と茜ちゃんは納得した。
「それは、夏音。しっかり考えなきゃだめよ」
「昨日から考えたけど、どうしても、柚くんは実は私のことが嫌いかも、以外の答えが思い浮かばなくて」

　ショックだ。あんなに幼い頃は、お姉ちゃんって呼んでくれたのに。やっぱり、私を名前で呼び出した、中学のときになにかあった？

　「ヒントをあげるなら、嫌われてはないと思うよ」
「ほんとうに？」

それなら、嬉しい。ううん、そうじゃないと信じたい。

　でも、じゃあ、だったら、なんで。

　でも、これ以上は茜ちゃんに頼ったらだめだよね。柚くんにもしっかり考えてくれって言われたし。でも、何でなんだろう。