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招待状

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メイリ―に編み物を習ったその日の夜は、ぐっすりと眠れた。
 翌朝、起きて身支度をアーシャに手伝って貰いながら整えていると、お母様がやってきた。
「お母様?」
「おはよう、ヴァイオレット」

 ……朝食まではまだ時間があるはずだけど、どうしたんだろう。

 お母様は、とっても気分が良さそうににこにこしている。
 首を傾げつつ、私も挨拶をする。
「おはようございます」
「ヴァイオレット、これを見て頂戴」
「?」

 お母様が私に見せたのは――何かの招待状だった。
「私宛てのもの……ですか?」
 お母様は私の言葉に大きく頷き、それから言った。
「王城でのお茶会の招待状よ!」
「!」

 王城でのお茶会。もしかして、もしかしなくても、絶好のチャンスだわ!
 このお茶会には、王子様を含め、身分の高い令息も数多く集まるわけで。お兄様以外に恋をしなければならない私にとって願ってもみない機会だった。

「参加するでしょう? もちろん、イアンも一緒よ」
 お兄様の名前に、一瞬どきり、と心臓が鳴る。私にも来たんだから、お兄様にも招待状がきて当然だよね。

「はい、参加します!」
それでもって、お兄様以外の人に恋をするのだ。

◇◇◇

 それから数日がたち、ついにお茶会の日になった。
 鏡の前で、ため息をついていると、アーシャが心配そうな顔をした。
「どうなさいました?」
「ううん、なんでもないの」
 なんでもなくは、ない。
 めちゃくちゃ緊張している。だって、今までお兄様以外の男性になんか目もくれて無かったのに、恋人候補を探さなきゃいけないから。

 ……でも。
 ちらり、と鏡を見る。ツインテールの藍色の髪に、この名の通り、紫の瞳。私ってば、美人なお母様の娘だから元はいいのよね。それに身分だって、公爵家の娘だ。あわよくば、王子様だって狙えるんじゃない?
 ……なーんて、そこまで上手く行かなくても、そこそこの地位を持った優しい人と恋をしたいな。
 うんうん、大丈夫。この見た目だもの、十分いけるわ。

 自分を心の中で励ますと、何だか緊張も少しほぐれてきた。
「よし!」

 大きな声を出して、気合を入れる。

 お茶会にレッツゴー!


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