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君に届くように
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(レガレス視点)
君が、去っていく。
……私は、どこで間違ったのだろう。
君が聖花を見たときの涙が、忘れられない。
そして、歌い終わったときに、聖花が輝き、その後に、見せた笑顔も。
それでも、私は、マーガレットを、君だと思った。
マーガレットの言葉だけで、私は、君をマーガレットだと決めつけた。
けれど、マーガレットは君ではなかった。
だから、それこそ、六年前の話をもっと詳しく聞いたなら、マーガレットではないのだと、わかったのではないか。
言い訳ならいくらでもできる。
マーガレットの髪色があの日の君と同じ金色だったから。
マーガレットが嘘をついて、君だと名乗り出たから。
君が、私が本物だと、言わなかったから。
……けれど、言い訳をしたところで、事実は変わらない。
「……」
天井を見上げる。
聖花が描かれているその天井は、昨日よりも輝いて見えた。
それは、君が聖花を元気にしてくれたからだろう。
「……聖花か」
たとえば、聖花を思う心根ひとつとっても、マーガレットと君は違った。
マーガレットは他人の歌を録音してまで花奏師になろうとしたが、君は違う。
君は、実力が足りないならと、ただひたすらに努力をしただろう。
私自身も、マーガレットに対して、疑問や違和感を覚えることは何度もあった。
本当に、マーガレットが、君、なのか、と。
その一つ一つと向き合えていたら。
今、私の隣にいるのは、君だっただろう。
それが無理だったとしても、君がアドルリアに帰ってくれた時に、誠心誠意傷つけたことを謝り、誠意を見せるべきだった。
無理に触れようなんて、すべきじゃなかった。
私たちは、運命なのだから、なんていう思い上がりは、早々に捨て去るべきだった。
後悔は、あとからあとから出でくる。
けれど、私のそばに君はおらず、ただ一人であることのみが事実だった。
「ラファリア……」
本当の君、六年前に出会った君。
君が私とマーガレットが話す度に切ない瞳をしている理由を聞かなかった。
いつもお二人の邪魔しないように、と作り笑いの嘘に気づいていたのに。
それでも、マーガレットさえあればいい、と、決めたのは私で。
そう行動したのも私だった。
君が言ったとおりだ。
『私たちの道は別れました。……でも、誰かに言われたからじゃない。私たちが選んで進んだ道がそうだっただけです』
そうだ、この道は私が選んだ。
どんな振り返っても、後戻りしようとしても。
道の先には、君はいない。
君は、君の道を歩み続ける。
私は、なんてことをしてしまったのだろう。
あんなに恋焦がれていたはずの君を、傷つけ。あんなに聖花を愛していたはずの君を、この国から、去らせて。
もう、すべてを投げ出したくなった。
どうせ、君がいないなら……。
頭に浮かんだ考えに首を振る。
聖花と国は一心同体だ。
国が荒れれば、聖花も荒れる。
それは、君がもっとも悲しむことだろう。
「……私は、間違った」
私は、どうしようもなく、間違え、その結果君を失った。
手を強く握りしめる。
――それでも、私は、その意事実を抱いて、私の道を歩んでいくしかない。
『――』
目を閉じると、あの日の君と同じ、昨日聞いた歌声が、鮮やかに蘇る。
「君が、そんなに聖花が好きなのなら……」
誰よりも。どの王よりも。聖花を輝かせられる王になって、その噂が魔国にまで届くほどに。
たとえ、この道が交わらなくとも。
いつか、君が聖花を思い出すときに、私を思い出すように。
そんな、存在に、なってやる。
静かに決めた覚悟は――私の人生をかけた目標として煌めき続けることになる。
君が、去っていく。
……私は、どこで間違ったのだろう。
君が聖花を見たときの涙が、忘れられない。
そして、歌い終わったときに、聖花が輝き、その後に、見せた笑顔も。
それでも、私は、マーガレットを、君だと思った。
マーガレットの言葉だけで、私は、君をマーガレットだと決めつけた。
けれど、マーガレットは君ではなかった。
だから、それこそ、六年前の話をもっと詳しく聞いたなら、マーガレットではないのだと、わかったのではないか。
言い訳ならいくらでもできる。
マーガレットの髪色があの日の君と同じ金色だったから。
マーガレットが嘘をついて、君だと名乗り出たから。
君が、私が本物だと、言わなかったから。
……けれど、言い訳をしたところで、事実は変わらない。
「……」
天井を見上げる。
聖花が描かれているその天井は、昨日よりも輝いて見えた。
それは、君が聖花を元気にしてくれたからだろう。
「……聖花か」
たとえば、聖花を思う心根ひとつとっても、マーガレットと君は違った。
マーガレットは他人の歌を録音してまで花奏師になろうとしたが、君は違う。
君は、実力が足りないならと、ただひたすらに努力をしただろう。
私自身も、マーガレットに対して、疑問や違和感を覚えることは何度もあった。
本当に、マーガレットが、君、なのか、と。
その一つ一つと向き合えていたら。
今、私の隣にいるのは、君だっただろう。
それが無理だったとしても、君がアドルリアに帰ってくれた時に、誠心誠意傷つけたことを謝り、誠意を見せるべきだった。
無理に触れようなんて、すべきじゃなかった。
私たちは、運命なのだから、なんていう思い上がりは、早々に捨て去るべきだった。
後悔は、あとからあとから出でくる。
けれど、私のそばに君はおらず、ただ一人であることのみが事実だった。
「ラファリア……」
本当の君、六年前に出会った君。
君が私とマーガレットが話す度に切ない瞳をしている理由を聞かなかった。
いつもお二人の邪魔しないように、と作り笑いの嘘に気づいていたのに。
それでも、マーガレットさえあればいい、と、決めたのは私で。
そう行動したのも私だった。
君が言ったとおりだ。
『私たちの道は別れました。……でも、誰かに言われたからじゃない。私たちが選んで進んだ道がそうだっただけです』
そうだ、この道は私が選んだ。
どんな振り返っても、後戻りしようとしても。
道の先には、君はいない。
君は、君の道を歩み続ける。
私は、なんてことをしてしまったのだろう。
あんなに恋焦がれていたはずの君を、傷つけ。あんなに聖花を愛していたはずの君を、この国から、去らせて。
もう、すべてを投げ出したくなった。
どうせ、君がいないなら……。
頭に浮かんだ考えに首を振る。
聖花と国は一心同体だ。
国が荒れれば、聖花も荒れる。
それは、君がもっとも悲しむことだろう。
「……私は、間違った」
私は、どうしようもなく、間違え、その結果君を失った。
手を強く握りしめる。
――それでも、私は、その意事実を抱いて、私の道を歩んでいくしかない。
『――』
目を閉じると、あの日の君と同じ、昨日聞いた歌声が、鮮やかに蘇る。
「君が、そんなに聖花が好きなのなら……」
誰よりも。どの王よりも。聖花を輝かせられる王になって、その噂が魔国にまで届くほどに。
たとえ、この道が交わらなくとも。
いつか、君が聖花を思い出すときに、私を思い出すように。
そんな、存在に、なってやる。
静かに決めた覚悟は――私の人生をかけた目標として煌めき続けることになる。
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