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馬鹿らしい
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(レガレス視点)
……体調がおかしい。
そのことに気づいたのは、朝方のことだった。
頭痛がするのは、昨日からだが。
体が全体的にだるかった。
まるで、重りをつけているかのように、起き上がれない。
「……風邪か」
すぐに侍従を呼び、今日の公務の穴埋めについて、側近に連絡してもらう。
「……いつぶりだろうな」
聖花の加護があるこの国では、風邪を引きにくい。
それでも、無理がたたるなどして、風邪を引くことが全くないわけじゃない。
ベッドの上で、天井を見つめる。
竜王の寝室の天井に描かれているのは、とある物語だった。
初代の竜王が、恋をして、その相手を〈運命〉に選んだ話。
唯一の妃は、竜王の運命、とも呼ばれるが……。〈運命〉は、妃のことを指すのではない。
〈運命〉は、竜の魂の伴侶。
今生だけではなく、何度生まれ変わっても、未来永劫、必ず添い遂げることを誓った相手。
実際、その誓いを立てた竜は、生まれ変わっても、他の者と婚姻ができない。
そんなリスクを背負ってまで、逃したくない相手。
それこそが、〈運命〉だった。
〈運命〉には、リスクもあるが、その分恩恵もある、らしい。
〈運命〉を正しく選べば、ますます国が繁栄するのだという。
……とはいっても、何をもってして正しいとするのか、私も知らない。
そんな正しい〈運命〉を逃した竜は、夢を見る……らしい。
間違った〈運命〉を選んだものを見たことがないから、その真偽は不明だ。
どんな、夢なのだろう。
ふと、疑問に思って、自嘲する。
「……馬鹿らしいな」
私が〈運命〉を選ぶとしたら、あの日であった君、マーガレット以外にいない。
だから、私がその特別な夢を見ることはないだろう。
……そんなことをつらつらと考えていると、眠くなってきた。
――ゆっくりと、意識が溶けていくのを感じながら、私は、意識を手放した。
……体調がおかしい。
そのことに気づいたのは、朝方のことだった。
頭痛がするのは、昨日からだが。
体が全体的にだるかった。
まるで、重りをつけているかのように、起き上がれない。
「……風邪か」
すぐに侍従を呼び、今日の公務の穴埋めについて、側近に連絡してもらう。
「……いつぶりだろうな」
聖花の加護があるこの国では、風邪を引きにくい。
それでも、無理がたたるなどして、風邪を引くことが全くないわけじゃない。
ベッドの上で、天井を見つめる。
竜王の寝室の天井に描かれているのは、とある物語だった。
初代の竜王が、恋をして、その相手を〈運命〉に選んだ話。
唯一の妃は、竜王の運命、とも呼ばれるが……。〈運命〉は、妃のことを指すのではない。
〈運命〉は、竜の魂の伴侶。
今生だけではなく、何度生まれ変わっても、未来永劫、必ず添い遂げることを誓った相手。
実際、その誓いを立てた竜は、生まれ変わっても、他の者と婚姻ができない。
そんなリスクを背負ってまで、逃したくない相手。
それこそが、〈運命〉だった。
〈運命〉には、リスクもあるが、その分恩恵もある、らしい。
〈運命〉を正しく選べば、ますます国が繁栄するのだという。
……とはいっても、何をもってして正しいとするのか、私も知らない。
そんな正しい〈運命〉を逃した竜は、夢を見る……らしい。
間違った〈運命〉を選んだものを見たことがないから、その真偽は不明だ。
どんな、夢なのだろう。
ふと、疑問に思って、自嘲する。
「……馬鹿らしいな」
私が〈運命〉を選ぶとしたら、あの日であった君、マーガレット以外にいない。
だから、私がその特別な夢を見ることはないだろう。
……そんなことをつらつらと考えていると、眠くなってきた。
――ゆっくりと、意識が溶けていくのを感じながら、私は、意識を手放した。
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