上 下
44 / 85

林間学校

しおりを挟む
 お味噌汁を味見する。うん、味噌はこんなものかな。これで、朝ごはんは完成だ。さて、今日は待ちに待った林間学校の日! 朝ごはんも出来たことだし、もう一回荷物を確認してこようっと。

 「どうした、朱里。ずいぶんご機嫌だな」
「あっ、お父さん。今日からね、林間学校なの」
お父さんは笑った。

 「珍しいな。大体、遠足とか修学旅行とか、楽しみにしていた行事に限って、朱里は風邪をひくから」
「私も、成長したの」
体調管理はばっちりだ。咳ひとつでない。私がそういうと、そうかそうか、と頷いた。

 「楽しんでおいで」
「うん。ありがとう」



 学校についたら、林間学校に行くバスに乗り込む。隣はもちろん、彩月ちゃんだ。
「楽しみだね」
「うん。私トランプ持ってきたから後でしよーよ」
「うん!」

 わいわいとおしゃべりをしているうちに、合宿場についた。

 まずは、班ごとにお昼ご飯作りだ。材料の関係で、献立は指定されていて、カレーを作る。カレーは、私と彩月ちゃんで、飯盒炊飯は、亮くんと小塚くんにやってもらうことにした。

 彩月ちゃんと分担して、野菜を切る。
「わっ、朱里手際がいいね」
「最近は、毎日朝ごはん作ってるからね」
少しは、料理も上達したはず。そう思いながら、野菜を切っていく。

 野菜を切ったら、お肉を色が変わるまで炒めて、そこに野菜を加える。うん、大体油がまわったかな。あとは水を加えて、中火で煮こむ。

 煮込んでいる間に、彩月ちゃんとお話しながら調理器具を片付ける。と、そんなことをしている間に、そろそろいい時間だ。いったん火を止めて、ルウを割って入れて、溶かし、弱火で煮込んだら出来上がりだ。

 亮くんと小塚くんも丁度飯盒炊飯できたらしく、やって来た。

 「どうかな、割と上手く炊けたと思うんだけど」
炊きあがったご飯は、ふっくらとして美味しそうだ。
「美味しそうだね。ありがとう、亮くん、小塚くん。カレーもできたよ」

 鍋の蓋をあけると、カレーのいい匂いがした。

 「わぁ、ほんとだ。ありがとう、小鳥遊さん、藤堂さん」
「こっちも美味しそうだね」

 皆で、カレーとご飯をよそい、席につく。
「じゃあ、班長お願いします」
班長は、亮くんだ。亮くんは照れたように、咳払いをした後、
「えーっと、皆お疲れ様。冷めないうちに、食べようか。いただきます」
「いただきます」

 合掌して、皆でカレーを食べる。皆で協力して作ったからか、カレーはいつもより美味しい気がした。

 食べ終わった後は、皆で片付けて、とりあえず、お昼ご飯は終わった。

 その後は、オリエンテーリングをして、宿舎で夜ご飯を食べた後、皆がお待ちかねの肝試しだ。

 ちなみに、肝試しの脅かす係りは二年生がやるらしい。ということは、お兄ちゃんもお化け役するんだよね。どんなお化けになるんだろう。

 ペア決めは、学年ごとにくじをひく。なので、同じ学年ではあるんだけど、違うクラスのことペアになることも多いんだよね。私は、誰とペアになるんだろう。

 「一年生の八番の人、誰かいませんか」
私は、八番だったので、八番のくじをひいた人を探す。
「あっ、私、八番」
私の声に駆け寄って来たのは、意外な人物だった。

 「愛梨ちゃん?」
「朱里ちゃん?」
私たちは、きょとんとして、お互いにくじをみせ合う。書かれていた数字はやっぱり八だった。

 まさか、ライバルの愛梨ちゃんとペアになるなんて驚きだ。愛梨ちゃんとはあの、ライバル宣言以来、あまり、話せていない。
「とりあえず、よろしくね」
「こちらこそ、よろしくね」
お互いに少し気まずく思いながらも、出発する順番を待つ。

 「朱里ちゃんは、お化け苦手?」
「ちょっとだけ、苦手。愛梨ちゃんは?」
「私は全然平気だなー」

 そうなんだ。ちょっと意外。そう思ったけれど、そういえば、愛梨ちゃんは基本的にお化けの類いを信じないと漫画にもあった気がする。

 そんな雑談をしているうちに、私たちの番になった。

 懐中電灯の光を頼りに、道を進む。事前に配られた地図を見る。
「えーっと、次は右に曲がるんだったよね」
「うん」

 右に曲がろうとしたとき──、

 「わっ!」

 「うわああぁ!」
突然、骸骨が現れた。私は、びっくりして懐中電灯を落としてしまった。すると、骸骨は、懐中電灯を拾って渡してくれた。

 「あ、ありがとう」
骸骨の仮面をしてるけど、優しいんだな。と、思っていると、骸骨は仮面を外した。

 「お兄ちゃん……?」
なんと、骸骨はお兄ちゃんだった。お兄ちゃんは、驚かせたことにご満悦なのか、嬉しそうに笑っている。
「やぁ、朱里」
「小鳥遊先輩、怖かったです!」
すかさず愛梨ちゃんが、お兄ちゃんに抱きつく。私も、愛梨ちゃんを見習って抱きつくべきかと悩んだが、今更なのでやめた。

 お兄ちゃんは、やんわりと愛梨ちゃんに回された腕を外して、
「ここから先は、少しわかりづらくなってるから、誘導の看板通りにいくんだよ」
と言った。お兄ちゃんの言葉通り、地図を見ても分かりにくいところはあったけれど、看板通りに進み、ちゃんとゴールすることができた。ちなみに、懐中電灯係りだった私は、計七回も驚いて、懐中電灯を落としてしまった。

 その後は、宿舎に戻り、彩月ちゃんや他の子たちとトランプをして、楽しく過ごしたのだった。

 林間学校は、特にトラブルも起こることなく、無事に楽しく終わった。
しおりを挟む
感想 76

あなたにおすすめの小説

冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~

メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」 俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。 学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。 その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。 少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。 ……どうやら彼は鈍感なようです。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 【作者より】 九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。 また、R15は保険です。 毎朝20時投稿! 【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】

推しの幼なじみになったら、いつの間にか巻き込まれていた

凪ルナ
恋愛
 3歳の時、幼稚園で机に頭をぶつけて前世の記憶を思い出した私は、それと同時に幼なじみの心配そうな顔を見て、幼なじみは攻略対象者(しかも前世の推し)でここが乙女ゲームの世界(私はモブだ)だということに気づく。  そして、私の幼なじみ(推し)と乙女ゲームで幼なじみ設定だったこれまた推し(サブキャラ)と出会う。彼らは腐女子にはたまらない二人で、もう二人がくっつけばいいんじゃないかな!?と思うような二人だった。かく言う私も腐女子じゃないけどそう思った。  乙女ゲームに巻き込まれたくない。私はひっそりと傍観していたいんだ!  しかし、容赦なく私を乙女ゲームに巻き込もうとする幼なじみの推し達。  「え?なんで私に構おうとするかな!?頼むからヒロインとイチャイチャして!それか、腐女子サービスで二人でイチャイチャしてよ!だから、私に構わないでくださいー!」  これは、そんな私と私の推し達の物語である。 ───── 小説家になろう様、ノベリズム様にも同作品名で投稿しています。

軽いノリでチョコレートを渡したら、溺愛されまして

夕立悠理
恋愛
──俺だってずっと、君をみてた。 高倉理沙(たかくらりさ)には好きな人がいる。一つ年上で会長をしている東藤隆(とうどうりゅう)だ。軽い気持ちで、東藤にバレンタインの友チョコレートをあげたら、なぜか東藤に好意がばれて、溺愛され──!? さらには、ここが、少女漫画の世界で、理沙は悪役だということを思い出して──。 ヤンデレ腹黒先輩×顔がきつめの後輩

先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件

桜 偉村
恋愛
 別にいいんじゃないんですか? 上手くならなくても——。  後輩マネージャーのその一言が、彼の人生を変えた。  全国常連の高校サッカー部の三軍に所属していた如月 巧(きさらぎ たくみ)は、自分の能力に限界を感じていた。  練習試合でも敗因となってしまった巧は、三軍キャプテンの武岡(たけおか)に退部を命じられて絶望する。  武岡にとって、巧はチームのお荷物であると同時に、アイドル級美少女マネージャーの白雪 香奈(しらゆき かな)と親しくしている目障りな存在だった。  だから、自信をなくしている巧を追い込んで退部させ、香奈と距離を置かせようとしたのだ。  そうすれば、香奈は自分のモノになると思っていたから。  武岡の思惑通り、巧はサッカー部を辞めようとしていた。  しかし、そこに香奈が現れる。  成り行きで香奈を家に上げた巧だが、なぜか彼女はその後も彼の家を訪れるようになって——。 「これは警告だよ」 「勘違いしないんでしょ?」 「僕がサッカーを続けられたのは、君のおかげだから」 「仲が良いだけの先輩に、あんなことまですると思ってたんですか?」  甘酸っぱくて、爽やかで、焦れったくて、クスッと笑えて……  オレンジジュース(のような青春)が好きな人必見の現代ラブコメ、ここに開幕! ※これより下では今後のストーリーの大まかな流れについて記載しています。 「話のなんとなくの流れや雰囲気を抑えておきたい」「ざまぁ展開がいつになるのか知りたい!」という方のみご一読ください。 【今後の大まかな流れ】 第1話、第2話でざまぁの伏線が作られます。 第1話はざまぁへの伏線というよりはラブコメ要素が強いので、「早くざまぁ展開見たい!」という方はサラッと読んでいただいて構いません! 本格的なざまぁが行われるのは第15話前後を予定しています。どうかお楽しみに! また、特に第4話からは基本的にラブコメ展開が続きます。シリアス展開はないので、ほっこりしつつ甘さも補充できます! ※最初のざまぁが行われた後も基本はラブコメしつつ、ちょくちょくざまぁ要素も入れていこうかなと思っています。 少しでも「面白いな」「続きが気になる」と思った方は、ざっと内容を把握しつつ第20話、いえ第2話くらいまでお読みいただけると嬉しいです! ※基本は一途ですが、メインヒロイン以外との絡みも多少あります。 ※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

変態王子&モブ令嬢 番外編

咲桜りおな
恋愛
「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」と 「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」の 番外編集です。  本編で描ききれなかったお話を不定期に更新しています。 「小説家になろう」でも公開しています。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!

奏音 美都
恋愛
 まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。 「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」  国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?  国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。 「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」  え……私、貴方の妹になるんですけど?  どこから突っ込んでいいのか分かんない。

乙女ゲームの世界じゃないの?

白雲八鈴
恋愛
 この世界は『ラビリンスは恋模様』っていう乙女ゲームの舞台。主人公が希少な聖魔術を使えることから王立魔術学園に通うことからはじまるのです。  私が主人公・・・ではなく、モブです。ゲーム内ではただの背景でしかないのです。でも、それでいい。私は影から主人公と攻略対象達のラブラブな日々を見られればいいのです。  でも何かが変なんです。  わたしは主人公と攻略対象のラブラブを影から見守ることはできるのでしょうか。 *この世界は『番とは呪いだと思いませんか』と同じ世界観です。本編を読んでいなくても全く問題ありません。 *内容的にはn番煎じの内容かと思いますが、時間潰しでさらりと読んでくださいませ。 *なろう様にも投稿しております。

処理中です...