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見えない心
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五月に入り、生徒会は大忙しだ。明日、生徒総会があるので、体育館でその準備をする。
「机や椅子の配置は、こんなものかな」
粗方、セッティングが終わったので、次は、生徒総会の流れの確認だ。
──と、そんなことをしているうちに、外は真っ暗になった。ちょっと、この暗さで一人で帰るのは怖いかも。お兄ちゃんと一緒に帰ろうかな。そう思っていると、
「朱里ちゃん、送っていくよ。今日ばかりは、俺も怒られないだろうから」
と冴木先輩が声をかけてくれた。
「え、でも」
「優は高原さんを送っていく……というか、いかざるをえないからね」
苦笑した冴木先輩の視線の先を見ると、お兄ちゃんは確かに愛梨ちゃんと一緒にいた。愛梨ちゃんの家は確かに遠かったし、誰か駅まで送っていった方がいいだろう。
なんだか、ちょっとだけ残念な気がして首を振る。お兄ちゃんと愛梨ちゃんの仲が良いのは、いいことだ。それを残念に思うなんて、おかしい。
雑談をしながら、冴木先輩と帰る。すると、校門で亮くんと出くわした。丁度、野球部も終わったらしい。
「あっ、小鳥遊さん……と、副会長?」
亮くんは、私の隣にいる冴木先輩を見て、不思議そうな顔をした。
「先輩は暗いから送ってくれてるの」
「あぁ、なるほど」
納得したように頷きかけた亮くんは、いや、それなら同じ方向だし、自分が送っていくってといってくれた。
「え、でも……」
返事をまだしてない今、亮くんに送ってもらうのは正直気まずい。私が戸惑っていると、冴木先輩が、
「せっかくだけど、優に任されたから、俺が責任をもって朱里ちゃんを送り届けるよ」
と言ってくれたので、亮くんも納得してくれた。
「じゃあまた、明日。小鳥遊さん」
「うん、また明日ね。亮くん」
ばいばいと、手を振って別れる。そしてしばらく歩いていると、冴木先輩は何か言いたげな顔をした。
「冴木先輩?」
「朱里ちゃん」
「はい」
「さっきの子と親しいの?」
あれ、なんだか冴木先輩の顔色が、悪い? 疑問に思いながらも、頷く。
「そうだよね。朱里ちゃんが、下の名前で呼ぶ男なんて今まで、優だけだったもんね!? ちなみに、なんだけど……」
冴木先輩は、なぜだか焦った顔をしながら、続けた。
「……告白、とか、されてたり、しない、よね?」
えっ!? なんで、そんなことまでわかるの!? 私が驚いていると、冴木先輩は大きなため息をついた。
「図星、かぁ。朱里ちゃん可愛いもんね、うん、あの子の気持ちはわかるよ。でも、朱里ちゃん、断ったんだよね?」
「それが、返事を決めかねてて……」
彩月ちゃんにも相談したけれど、どうしようか悩んでいる。
「き、決めかねてる!? な、なんで、優は!?」
「お兄ちゃん、ですか? お兄ちゃんからは、もう卒業したので」
今現在、私に好きな人はいない。それに、亮くんのことは嫌いじゃないから迷っている。
「えっ、卒業って、優を好きなこともやめたの?」
「はい」
私が頷くと、冴木先輩は驚いた顔をした。
「朱里ちゃんは、今でも優を好きだと、思ってた。というか、好きだよ、絶対! だから、断ろう、ね? 悪いことは言わないから」
「そう見えますか?」
「うん」
そうか。冴木先輩からはそう見えるのか。私、まだ、お兄ちゃんのこと好きなんだろうか。
そんなことをぼんやりと考えているうちに、家についた。
「送って下さりありがとうございました」
「ううん。それよりも、朱里ちゃん、あまり俺が言うことじゃないけれど、答えは、慎重にね」
「……はい」
冴木先輩を見送ってから、自室に入る。
お兄ちゃんのこと、まだ、好きなら亮くんとは付き合えないよね。私、どうなんだろう。
「机や椅子の配置は、こんなものかな」
粗方、セッティングが終わったので、次は、生徒総会の流れの確認だ。
──と、そんなことをしているうちに、外は真っ暗になった。ちょっと、この暗さで一人で帰るのは怖いかも。お兄ちゃんと一緒に帰ろうかな。そう思っていると、
「朱里ちゃん、送っていくよ。今日ばかりは、俺も怒られないだろうから」
と冴木先輩が声をかけてくれた。
「え、でも」
「優は高原さんを送っていく……というか、いかざるをえないからね」
苦笑した冴木先輩の視線の先を見ると、お兄ちゃんは確かに愛梨ちゃんと一緒にいた。愛梨ちゃんの家は確かに遠かったし、誰か駅まで送っていった方がいいだろう。
なんだか、ちょっとだけ残念な気がして首を振る。お兄ちゃんと愛梨ちゃんの仲が良いのは、いいことだ。それを残念に思うなんて、おかしい。
雑談をしながら、冴木先輩と帰る。すると、校門で亮くんと出くわした。丁度、野球部も終わったらしい。
「あっ、小鳥遊さん……と、副会長?」
亮くんは、私の隣にいる冴木先輩を見て、不思議そうな顔をした。
「先輩は暗いから送ってくれてるの」
「あぁ、なるほど」
納得したように頷きかけた亮くんは、いや、それなら同じ方向だし、自分が送っていくってといってくれた。
「え、でも……」
返事をまだしてない今、亮くんに送ってもらうのは正直気まずい。私が戸惑っていると、冴木先輩が、
「せっかくだけど、優に任されたから、俺が責任をもって朱里ちゃんを送り届けるよ」
と言ってくれたので、亮くんも納得してくれた。
「じゃあまた、明日。小鳥遊さん」
「うん、また明日ね。亮くん」
ばいばいと、手を振って別れる。そしてしばらく歩いていると、冴木先輩は何か言いたげな顔をした。
「冴木先輩?」
「朱里ちゃん」
「はい」
「さっきの子と親しいの?」
あれ、なんだか冴木先輩の顔色が、悪い? 疑問に思いながらも、頷く。
「そうだよね。朱里ちゃんが、下の名前で呼ぶ男なんて今まで、優だけだったもんね!? ちなみに、なんだけど……」
冴木先輩は、なぜだか焦った顔をしながら、続けた。
「……告白、とか、されてたり、しない、よね?」
えっ!? なんで、そんなことまでわかるの!? 私が驚いていると、冴木先輩は大きなため息をついた。
「図星、かぁ。朱里ちゃん可愛いもんね、うん、あの子の気持ちはわかるよ。でも、朱里ちゃん、断ったんだよね?」
「それが、返事を決めかねてて……」
彩月ちゃんにも相談したけれど、どうしようか悩んでいる。
「き、決めかねてる!? な、なんで、優は!?」
「お兄ちゃん、ですか? お兄ちゃんからは、もう卒業したので」
今現在、私に好きな人はいない。それに、亮くんのことは嫌いじゃないから迷っている。
「えっ、卒業って、優を好きなこともやめたの?」
「はい」
私が頷くと、冴木先輩は驚いた顔をした。
「朱里ちゃんは、今でも優を好きだと、思ってた。というか、好きだよ、絶対! だから、断ろう、ね? 悪いことは言わないから」
「そう見えますか?」
「うん」
そうか。冴木先輩からはそう見えるのか。私、まだ、お兄ちゃんのこと好きなんだろうか。
そんなことをぼんやりと考えているうちに、家についた。
「送って下さりありがとうございました」
「ううん。それよりも、朱里ちゃん、あまり俺が言うことじゃないけれど、答えは、慎重にね」
「……はい」
冴木先輩を見送ってから、自室に入る。
お兄ちゃんのこと、まだ、好きなら亮くんとは付き合えないよね。私、どうなんだろう。
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