上 下
8 / 39

第八話 結果

しおりを挟む
「それでは試験は以上になります!試験結果は明日の朝、学園の入り口にて掲示します!お疲れ様でした!」


 第二試験が終わり、本日はお開きとなった。


 俺は試合の後に、ナイジェルを問いただしたんだが……


「それはまた今度、きっと君とはすぐ会えるからね」


 そう言い残して、取り巻き連中と去って行ってしまった。


 本当に掴めないやつだ……


 俺がナイジェルを見送っていると、後ろからトコトコとニアがやってきた。


 その横にはケントが眉毛をへの字にして腹を抑えて立っている。


「ラルフ、かえろ。」


「ラルフよぉ~、俺は腹が減って死にそうだぜ~」


「そうだな、今日はもう宿に戻るか」


 ナイジェルの事だ、きっと合格しているだろう。


 学園入学後にまた聞けばいい。


 俺もすっかりお疲れモードのニアと、腹が減ってるケントを連れて試験会場を後にした。





 --翌日--


 俺たちは学園の門の前に来ていた。


「それでは、入学試験の結果を掲示します!」


 試験官がそう宣言すると、掲示板に被せてあった布がはがされた。


 すぐさま受験生達は、合格者の番号を確認する。


「お!俺の番号あるじゃん!やったぜぇー!」


 最初に番号を見つけたのはケントだった。


 ケントが合格なのは納得だな。


 それからケントを筆頭に、番号を見つけた受験生達が喜びの声をあげだした。


「うぅぅ~母さん、俺やったよ……」


「よかった……家を追放されなくて済む……!」


 中には新聞記者から取材を受けてる奴もいる。


 さすがは王国一の学園だ、受験から注目されているんだな。


「合格おめでとうございます!今どんな気分ですか?」


「ものすごく嬉しい気分です!叫んでもいいですか!?」


「いいですよ!」


「ゔぅぅあぁぁぁぁぁぁああ!」


 ん?なんか前世で聞いた事あるようなやり取りが……


 気のせいか。


 そんな受験生達の喜びと悲しみがひしめき合う中、ひときわ人が集中している所がある。


 どうやらその全員が、今回の首席の受験番号を確認しているようだった。


「ねぇ、この番号……ナイジェル様じゃないわ……」


「ナイジェル様が次席……?そんな事って……」


「まさかナイジェル様の対戦相手だった、あの茶髪の男!?」


 集団の前の方で、ナイジェルの取り巻き達がボソボソと文句を言っている。


 どれ、俺も見てみるか。


 えーと、なになに?


 今回の試験の首席は『3466番』


 ん?この番号って確か……


「あ、ラルフ、いたいた。」


 ニアの番号じゃないか!!


「ニア!首席合格じゃないか!すごいな!おめでとう!」


「ん、よくわかんないけどやったー。」


 まさかニアが首席合格するとは。


 確かにニアは、どちらの試験でも高得点と戦闘センスを発揮してたからな。


 ニアの答辞を聞くのが楽しみだ。


 さて、そろそろ自分の番号を探すとするか。


 ニアとケントの合格も確認できた事だしな。


「え~っと~、2947……2947……」


 ん……?


 おかしい……


 俺は合格者の番号を、もう一度よく確認する。


『2933』『2940』『2946』『2961』


 ない……


「俺の番号がない!?」


 このままでは第二王子との接点ができなくなってしまう……


 アンリに謁見を許してもらえたとはいえ、一度きりだ。


 一度の接触で全てを確認するのは難しいだろう……
 

 いっそニアとケントに事情を説明するか……?


 いや、それでは余計話がこじれる気がする……


 俺は自分の番号が何かの間違いではないかと、何度も番号を確認した。


「やはり……ない……か……」


 しかし何度確認しても、俺の番号は合格者の中に含まれていなかった。




 
 時は試験当日の夜に遡る。


 学園の大会議室にて、試験官を務めた教員達が今年の合格者を選考していた。


「続いて3476番のケント=アーガイルですが、第一試験の結果は75点と平均より少し上程度です。ただ、第二試験において平民でありながらサーペント伯爵家の次男を圧倒しました。この結果から合格と判断してよいかと、何か意見のある方は?」


 教員達は首を横に振る。


 そして一番大きな椅子に座る、初老の男性が口を開く。


「平民でありながら素晴らしいな、さぞ努力を重ねてきたのであろう。合格だ」


「それでは続いて3466番のニア=ユーフレッドですが、第一試験の結果は入学試験の過去最高点を記録しています。更に第二試験においては、A級冒険者としても活躍している『影縫い』を相手に勝利しています。充分に合格と判断してよいかと、何か意見のある方は?」


 教員達は再び首を横に振る。


 その後、また初老の男性が口を開く。


「なるほど、今年の平民の受験生達は、皆素晴らしい才能に溢れているな。合格だ」


 進行役の教員が受験生一人一人の試験結果を解説し、他の教員からの意見を聞く。


 そして最後に学園長が合否の判断を下す。


 これが、学園の入学試験の選考のやり方だ。


 ここまでは例年通りの選考の景色だった。


 だが、今年は1人の受験生の出現が、教員達の頭を抱えさせている。


「そして2947番のラルフ=ユーフレッドですが……正直、この報告書だけですと判断ができません……どなたかご意見はありますか?」


 進行役の教員が他の教員へ意見を求める。


 すると、一人の小さな女性教員が口を開いた。


「私は彼の第一試験を監督していましたが、見たこともない魔法を使って的を切り刻んでしまいました……しかも結果は測定不能です……こんな受験生は今まで見た事がありません……」


 その教員の言葉に、学園で魔法学を担当している大きな黒い帽子を被った教員が、信じられないという様子でこう答えた。


「そんな!あの的は『氷の魔女』ことカナン様が作った覇王級魔法にも耐えられる魔道具だというのに……」


 その言葉に教員一同が静まり返る。


「あの……いいですか?」


 その静寂の中、若い男性教員が口を開く。


「私は彼の第二試験を監督していました……ラルフ君の相手はあのナイジェル様でしたが……その……」


「どうしたのかね?続けなさい」


 学園長が続きを促す。


「はい……最初はナイジェル様が優勢かに思えました……ただ、途中から急にラルフ君の様子が変わりまして……」


「んん?それはどういうことかね?」


「なんというか……手加減をしていたんです……あのナイジェル様にですよ……?王国でも随一のスキルと才能を持つナイジェル様にです……その後、様子が変わったラルフ君は、ナイジェル様の王級魔法を一瞬で無力化して、目にも止まらぬ速さで連続攻撃を仕掛けて勝利しました……」


「さようであるか……」


「しかも彼は、あれでも恐らく本気を出していません……ハッキリ言って底が見えません……」


 教員の中には、まさかそんな訳と疑いの意見をもつ者もいた。


 だが、それが事実なのであれば教員が教える事など無いに等しい。


 この受験生をどう扱うべきか。


 これほどまでこの『グレートベル王立学園』の優秀な教員達の頭を悩ませる存在は過去に存在しなかった。


 そんな中、ついに学園長が口を開いた。


「彼を特別入学とする」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。

モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。 日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。 今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。 そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。 特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク
ファンタジー
 その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。  そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。  創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。  普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。  魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。  まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。  制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。  これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)

田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ? コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。 (あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw) 台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。 読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。 (カクヨムにも投稿しております)

異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)

ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。 流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定! 剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。 せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!? オマケに最後の最後にまたもや神様がミス! 世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に なっちゃって!? 規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。 ……路上生活、そろそろやめたいと思います。 異世界転生わくわくしてたけど ちょっとだけ神様恨みそう。 脱路上生活!がしたかっただけなのに なんで無双してるんだ私???

処理中です...