8 / 34
第8話「意外な結末」
しおりを挟む
(もしかすると…)
(家庭を省みない父親に対する当てつけとか…)
(そんな展開だったりするのかな?)
オリオ・ズバーンの人となりまでは知らないが…
何せ、あの遊び人と名高いキース・タイラーの友人だ。
外に愛人を作り、ろくに家に帰って来ないような父親失格すぎる人物の可能性はある。
(前世でも起業家なんて…)
(女性絡みの醜聞が当たり前だったりしたもんな)
だとすると、マイクが仮病で家を引っ掻き回すことも理解は出来る。
(ここは怒らずに、彼の言い分もしっかりと聞いてやらないとな)
マイクが心を閉ざさないように、慎重に事情を訊ねてみたところ…
「実は、もうじき13歳になるんですが…」
「誕生日が来たら、父の知り合いの店へ修行に行かないとならないんですよ」
「それが憂鬱で憂鬱で…」
マイクの口から、とんでもない言い訳の言葉が返って来た。
これまで箱入り息子として何不自由のない暮らしを送って来たマイクだが、将来のズバーン商会を支えることを期待されている身。
いつまでもぬくぬくした生活が続けられるわけではないようだ。
「特に、次男であるボクには…」
「出店計画が進行中のマハラレル支店を任せたいなんて…」
「父の意向があったりするもんで」
「修行期間も兄より2年も多い5年の予定なんですよ」
おまけに、修業期間中は、特別扱いもなく他の丁稚たちと同じ立場で商売のイロハを叩き込まれるそうだ。
無能な2代目が会社を傾けるなんて話は、前世でも腐るほど聞いてきただけに、むしろ好感が持てるオリオの方針だが…
丁稚といえば、大部屋に雑魚寝でプライバシーもないうえ、朝から晩まで雑務に追われるブラック労働中のブラック労働。
この世界の少年少女にとっては、当たり前の下積み期間なのだろうが、花よ花よで育った御曹司には、耐えられない環境には違いない。
「だったら、仮病なんて使わずに…」
「画家や彫刻家でも目指して…」
「過酷な修行を回避して見ればいいんじゃないでしょうかね?」
そのため、いっそのこと跡取りルートから外れて、気楽に生きてみてはとのアドバイスを送ってみたところ…
「それが、兄が以前にその方法で修行を回避しようとしたら…」
「激怒した父に勘当されそうになったことがありまして…」
マイクは青ざめた顔で意外な過去を明らかにした。
実は、オリオという男。
若い頃に、キザな画家に恋人を寝取られたことがあったらしい。
そのせいか、大商人の王道のパトロン活動などもしておらず、息子たちの家庭教師にすら男性は選ばない徹底ぶりだとか。
(高位神官ですら解決出来なかったわけだわ…)
あまりに複雑すぎるズバーン家の事情に、正直、打つ手も見つからない状況と言えるが…
(金貨50枚も前金貰っているしな)
(解決出来ませんでしたじゃ、さすがに申し訳ないよな)
一度仕事を引き受けた以上は、このまま無責任に投げ出すわけにもいかない。
(とりあえず…)
(テンションの上がる怪しくない薬でも処方しておくか…)
応急処置的なやっている感を出した後は、1週間後に再度来訪することをオリオに約束し、いったん帰宅することにした。
とはいえ、こんな展開にもなると、一介の薬師に取れる手段は限られている。
結局、1週間たっても解決方法を見出せないまま、再びズバーン邸に向かう羽目になってしまった。
(こうなったら…)
(素直にオリオさんに謝罪でもして…)
(別の人間にあたって貰うしかないか)
そんなことをぼんやりと考えながら馬車にゆられズバーン邸に着いてみると、玄関で待ち構えていたオリオは何故か満面の笑み。
さらには…
「エイジさんのおかげで、息子の体調もすっかり良くなって…」
との衝撃的発言まで飛び出した。
(おかしいな?)
(あの薬はただのエナジードリンクもどき)
(そこまでの効果はないはずだが…)
不思議に思い、マイクの部屋に行ってみると、机に向かい簿記の勉強に勤しむ少年の姿があった。
まるで別人のような変りぶりに首をかしげていると、俺の気配に気が付いたマイクが、にこやかな顔で話しかけて来た。
「実は、エイジさんの薬のおかげで多少気持ちが前向きになったので…」
「覚悟を決めて修行先の下見に行ってきたんですよ」
「そしたら、思ったほど悪くはない職場みたいで…」
どうやら、マイクの修行先は、女主人が営む小麦問屋だったようだ。
そのせいか、女性の使用人なども多く、店先を案内してくれた丁稚などはとびきりの美少女。
すっかり一目惚れをしてしまったマイクは、彼女たちと一緒に働ける期待感で胸が高まっているようだ。
「ウチの母も父の下積み時代の仲間だったみたいでして…」
「これも何かの運命ですよね」
単純といえば単純すぎるマイクの変り身の速さではあるが、いつの時代も少年に大志を抱かせるのは愛らしい少女。
(これもこの世界なりの青春ってやつなんだろうな)
まさに塞翁が馬の結末に、俺はひと安心してズバーン邸を後にすることになった。
(家庭を省みない父親に対する当てつけとか…)
(そんな展開だったりするのかな?)
オリオ・ズバーンの人となりまでは知らないが…
何せ、あの遊び人と名高いキース・タイラーの友人だ。
外に愛人を作り、ろくに家に帰って来ないような父親失格すぎる人物の可能性はある。
(前世でも起業家なんて…)
(女性絡みの醜聞が当たり前だったりしたもんな)
だとすると、マイクが仮病で家を引っ掻き回すことも理解は出来る。
(ここは怒らずに、彼の言い分もしっかりと聞いてやらないとな)
マイクが心を閉ざさないように、慎重に事情を訊ねてみたところ…
「実は、もうじき13歳になるんですが…」
「誕生日が来たら、父の知り合いの店へ修行に行かないとならないんですよ」
「それが憂鬱で憂鬱で…」
マイクの口から、とんでもない言い訳の言葉が返って来た。
これまで箱入り息子として何不自由のない暮らしを送って来たマイクだが、将来のズバーン商会を支えることを期待されている身。
いつまでもぬくぬくした生活が続けられるわけではないようだ。
「特に、次男であるボクには…」
「出店計画が進行中のマハラレル支店を任せたいなんて…」
「父の意向があったりするもんで」
「修行期間も兄より2年も多い5年の予定なんですよ」
おまけに、修業期間中は、特別扱いもなく他の丁稚たちと同じ立場で商売のイロハを叩き込まれるそうだ。
無能な2代目が会社を傾けるなんて話は、前世でも腐るほど聞いてきただけに、むしろ好感が持てるオリオの方針だが…
丁稚といえば、大部屋に雑魚寝でプライバシーもないうえ、朝から晩まで雑務に追われるブラック労働中のブラック労働。
この世界の少年少女にとっては、当たり前の下積み期間なのだろうが、花よ花よで育った御曹司には、耐えられない環境には違いない。
「だったら、仮病なんて使わずに…」
「画家や彫刻家でも目指して…」
「過酷な修行を回避して見ればいいんじゃないでしょうかね?」
そのため、いっそのこと跡取りルートから外れて、気楽に生きてみてはとのアドバイスを送ってみたところ…
「それが、兄が以前にその方法で修行を回避しようとしたら…」
「激怒した父に勘当されそうになったことがありまして…」
マイクは青ざめた顔で意外な過去を明らかにした。
実は、オリオという男。
若い頃に、キザな画家に恋人を寝取られたことがあったらしい。
そのせいか、大商人の王道のパトロン活動などもしておらず、息子たちの家庭教師にすら男性は選ばない徹底ぶりだとか。
(高位神官ですら解決出来なかったわけだわ…)
あまりに複雑すぎるズバーン家の事情に、正直、打つ手も見つからない状況と言えるが…
(金貨50枚も前金貰っているしな)
(解決出来ませんでしたじゃ、さすがに申し訳ないよな)
一度仕事を引き受けた以上は、このまま無責任に投げ出すわけにもいかない。
(とりあえず…)
(テンションの上がる怪しくない薬でも処方しておくか…)
応急処置的なやっている感を出した後は、1週間後に再度来訪することをオリオに約束し、いったん帰宅することにした。
とはいえ、こんな展開にもなると、一介の薬師に取れる手段は限られている。
結局、1週間たっても解決方法を見出せないまま、再びズバーン邸に向かう羽目になってしまった。
(こうなったら…)
(素直にオリオさんに謝罪でもして…)
(別の人間にあたって貰うしかないか)
そんなことをぼんやりと考えながら馬車にゆられズバーン邸に着いてみると、玄関で待ち構えていたオリオは何故か満面の笑み。
さらには…
「エイジさんのおかげで、息子の体調もすっかり良くなって…」
との衝撃的発言まで飛び出した。
(おかしいな?)
(あの薬はただのエナジードリンクもどき)
(そこまでの効果はないはずだが…)
不思議に思い、マイクの部屋に行ってみると、机に向かい簿記の勉強に勤しむ少年の姿があった。
まるで別人のような変りぶりに首をかしげていると、俺の気配に気が付いたマイクが、にこやかな顔で話しかけて来た。
「実は、エイジさんの薬のおかげで多少気持ちが前向きになったので…」
「覚悟を決めて修行先の下見に行ってきたんですよ」
「そしたら、思ったほど悪くはない職場みたいで…」
どうやら、マイクの修行先は、女主人が営む小麦問屋だったようだ。
そのせいか、女性の使用人なども多く、店先を案内してくれた丁稚などはとびきりの美少女。
すっかり一目惚れをしてしまったマイクは、彼女たちと一緒に働ける期待感で胸が高まっているようだ。
「ウチの母も父の下積み時代の仲間だったみたいでして…」
「これも何かの運命ですよね」
単純といえば単純すぎるマイクの変り身の速さではあるが、いつの時代も少年に大志を抱かせるのは愛らしい少女。
(これもこの世界なりの青春ってやつなんだろうな)
まさに塞翁が馬の結末に、俺はひと安心してズバーン邸を後にすることになった。
85
あなたにおすすめの小説
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる