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第五章 選ばれし者 授けられし力

第十一話 守るか 撃つか その2

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 どうする? どうする! どうする!?

 ちらっと考えていた通り【イデアの影】で、グランドタワーをフル武装するか?
 文字通りハリネズミのように武装すれば、奴らはこの塔に近づく事すらできないはずだ。

 (けど……)

 「またニャにか出てきたニャ!」
 「何アレ……気持ち悪い」

 画面の中。闇の中からフェロトデモス有翼魔族数匹分くらいの大きさがある巨大な眼球が滲みでてきた。
 羽も無しにどうやって宙に浮いているのかはわからないけれど、見たまんまの魔法的生物なのだろう。眉毛もない瞼もない裸の眼球は赤・緑・青色に彩られた三つの虹彩を持っており、それらを周囲の状況を確認するかのように自在に動かしていた。
 もちろんコイツも一体だけじゃない、その数を二体・三体と増やしていく。

 「イリストリア。柔らかい眼球がまるだしだから攻撃には弱いけれど、遠くまで見通せる目をもっているし、近づけば精神感応系の魔法を使ってくる厄介な奴よ」
 「……全部で十二体出てきたのニャ」
 「ねぇねぇ! お兄ちゃんどうするのっ! どうしよう!?」
 「……」

 (もしここで迎え撃てば……)

 「ワイバーン飛竜がでてきたわね……知ってると思うけどファイア・ブレス炎の息には要注意よ」

 赤や黒い鱗で覆われた何体ものワイバーンが次々と、魔界の門から滲みでてくる。
 シィスはもうホロヴューに映し出されている魔物を見ても何も言わなくなった。
 彼女の顔は真っ青だ。

 当然だろう。
 ワイバーンなんて一体でも手こずる強敵だ。それが……ほらまた。六・七・八……次々と魔界の門を通って出てきている。
 絶望するなと言う方が無理ってもんだろう。

 「……どいつもこいつもどれもこれも五メートル以上の大きさがあるのニャア……ミャスタァ」

 粛々と状況を伝えているミャアの声も震えている。
 努めて冷静であろうとしているけれど、ネコだって怖いものは怖いんだ。
 僕とホロヴュー内の魔物の群れにせわしなく目をやっているイィザエル様は何も仰られない。

 足元を見た。
 展開されているホロヴューパネルには映っているみんなは実に楽しそう。
 先ほどまで遠慮がちだった従士隊の面々も――クニーグさん、父さんも、みんなみんな楽しそうにしている……。
 マイクさんだけは何故か困っているというか、焦っているような表情をしているけど?

 「うん。ここではムリだ」

 僕は決断した。

 「や、やっぱり……無理だよね?」
 「……残念ニャがらミャアもそう思うのニャァ……」
 「アニス君……」

 みんなが絶望的な表情で僕に向き直る。

 「おいおい勘違いするなよシィス。ミャアも。僕は『ここではムリ』って言ったんだ。最初はさ? この塔をハリネズミのように武装して迎え撃とうと思ったんだけどさ。ホラ……ね?」

 足元で楽しそうにしているみんなに僕は視線を向けた。
 三人とも僕の視線を追って、未だ訪れる未来を知らずに楽しそうにしているみんなに目を向ける。

 「ここで迎え撃てばみんなを巻き込んでしまう。父さんやお爺さんたち、村のみんなが何代も何代も一生懸命開拓してきた領地がボロボロになってしまう。ならもう迎え撃つのは止めだ」
 「「「……」」」
 「打って出る。奴らが行動を開始する前に、その鼻っ面をへし折ってやるんだ」
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