94 / 136
第五章 選ばれし者 授けられし力
第十一話 守るか 撃つか その2
しおりを挟む
どうする? どうする! どうする!?
ちらっと考えていた通り【イデアの影】で、グランドタワーをフル武装するか?
文字通りハリネズミのように武装すれば、奴らはこの塔に近づく事すらできないはずだ。
(けど……)
「またニャにか出てきたニャ!」
「何アレ……気持ち悪い」
画面の中。闇の中からフェロトデモス数匹分くらいの大きさがある巨大な眼球が滲みでてきた。
羽も無しにどうやって宙に浮いているのかはわからないけれど、見たまんまの魔法的生物なのだろう。眉毛もない瞼もない裸の眼球は赤・緑・青色に彩られた三つの虹彩を持っており、それらを周囲の状況を確認するかのように自在に動かしていた。
もちろんコイツも一体だけじゃない、その数を二体・三体と増やしていく。
「イリストリア。柔らかい眼球がまるだしだから攻撃には弱いけれど、遠くまで見通せる目をもっているし、近づけば精神感応系の魔法を使ってくる厄介な奴よ」
「……全部で十二体出てきたのニャ」
「ねぇねぇ! お兄ちゃんどうするのっ! どうしよう!?」
「……」
(もしここで迎え撃てば……)
「ワイバーンがでてきたわね……知ってると思うけどファイア・ブレスには要注意よ」
赤や黒い鱗で覆われた何体ものワイバーンが次々と、魔界の門から滲みでてくる。
シィスはもうホロヴューに映し出されている魔物を見ても何も言わなくなった。
彼女の顔は真っ青だ。
当然だろう。
ワイバーンなんて一体でも手こずる強敵だ。それが……ほらまた。六・七・八……次々と魔界の門を通って出てきている。
絶望するなと言う方が無理ってもんだろう。
「……どいつもこいつもどれもこれも五メートル以上の大きさがあるのニャア……ミャスタァ」
粛々と状況を伝えているミャアの声も震えている。
努めて冷静であろうとしているけれど、ネコだって怖いものは怖いんだ。
僕とホロヴュー内の魔物の群れにせわしなく目をやっているイィザエル様は何も仰られない。
足元を見た。
展開されているホロヴューパネルには映っているみんなは実に楽しそう。
先ほどまで遠慮がちだった従士隊の面々も――クニーグさん、父さんも、みんなみんな楽しそうにしている……。
マイクさんだけは何故か困っているというか、焦っているような表情をしているけど?
「うん。ここではムリだ」
僕は決断した。
「や、やっぱり……無理だよね?」
「……残念ニャがらミャアもそう思うのニャァ……」
「アニス君……」
みんなが絶望的な表情で僕に向き直る。
「おいおい勘違いするなよシィス。ミャアも。僕は『ここではムリ』って言ったんだ。最初はさ? この塔をハリネズミのように武装して迎え撃とうと思ったんだけどさ。ホラ……ね?」
足元で楽しそうにしているみんなに僕は視線を向けた。
三人とも僕の視線を追って、未だ訪れる未来を知らずに楽しそうにしているみんなに目を向ける。
「ここで迎え撃てばみんなを巻き込んでしまう。父さんやお爺さんたち、村のみんなが何代も何代も一生懸命開拓してきた領地がボロボロになってしまう。ならもう迎え撃つのは止めだ」
「「「……」」」
「打って出る。奴らが行動を開始する前に、その鼻っ面をへし折ってやるんだ」
ちらっと考えていた通り【イデアの影】で、グランドタワーをフル武装するか?
文字通りハリネズミのように武装すれば、奴らはこの塔に近づく事すらできないはずだ。
(けど……)
「またニャにか出てきたニャ!」
「何アレ……気持ち悪い」
画面の中。闇の中からフェロトデモス数匹分くらいの大きさがある巨大な眼球が滲みでてきた。
羽も無しにどうやって宙に浮いているのかはわからないけれど、見たまんまの魔法的生物なのだろう。眉毛もない瞼もない裸の眼球は赤・緑・青色に彩られた三つの虹彩を持っており、それらを周囲の状況を確認するかのように自在に動かしていた。
もちろんコイツも一体だけじゃない、その数を二体・三体と増やしていく。
「イリストリア。柔らかい眼球がまるだしだから攻撃には弱いけれど、遠くまで見通せる目をもっているし、近づけば精神感応系の魔法を使ってくる厄介な奴よ」
「……全部で十二体出てきたのニャ」
「ねぇねぇ! お兄ちゃんどうするのっ! どうしよう!?」
「……」
(もしここで迎え撃てば……)
「ワイバーンがでてきたわね……知ってると思うけどファイア・ブレスには要注意よ」
赤や黒い鱗で覆われた何体ものワイバーンが次々と、魔界の門から滲みでてくる。
シィスはもうホロヴューに映し出されている魔物を見ても何も言わなくなった。
彼女の顔は真っ青だ。
当然だろう。
ワイバーンなんて一体でも手こずる強敵だ。それが……ほらまた。六・七・八……次々と魔界の門を通って出てきている。
絶望するなと言う方が無理ってもんだろう。
「……どいつもこいつもどれもこれも五メートル以上の大きさがあるのニャア……ミャスタァ」
粛々と状況を伝えているミャアの声も震えている。
努めて冷静であろうとしているけれど、ネコだって怖いものは怖いんだ。
僕とホロヴュー内の魔物の群れにせわしなく目をやっているイィザエル様は何も仰られない。
足元を見た。
展開されているホロヴューパネルには映っているみんなは実に楽しそう。
先ほどまで遠慮がちだった従士隊の面々も――クニーグさん、父さんも、みんなみんな楽しそうにしている……。
マイクさんだけは何故か困っているというか、焦っているような表情をしているけど?
「うん。ここではムリだ」
僕は決断した。
「や、やっぱり……無理だよね?」
「……残念ニャがらミャアもそう思うのニャァ……」
「アニス君……」
みんなが絶望的な表情で僕に向き直る。
「おいおい勘違いするなよシィス。ミャアも。僕は『ここではムリ』って言ったんだ。最初はさ? この塔をハリネズミのように武装して迎え撃とうと思ったんだけどさ。ホラ……ね?」
足元で楽しそうにしているみんなに僕は視線を向けた。
三人とも僕の視線を追って、未だ訪れる未来を知らずに楽しそうにしているみんなに目を向ける。
「ここで迎え撃てばみんなを巻き込んでしまう。父さんやお爺さんたち、村のみんなが何代も何代も一生懸命開拓してきた領地がボロボロになってしまう。ならもう迎え撃つのは止めだ」
「「「……」」」
「打って出る。奴らが行動を開始する前に、その鼻っ面をへし折ってやるんだ」
0
お気に入りに追加
42
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる