66 / 136
第四章 社会通念上の道徳的禁止事項
第五話 臆病者の選択 その1
しおりを挟む
「世界の……果て?」
「うん多分……あの膜の様子は地表近くで見た【果て】と同じような感じだし」
「でも何で突然!? さっきまでは無かったんだよね?」
「なかったのニャ~。ログを確かめたのニャけど、突然現れたのニャよ」
「……取り敢えず警告音を消して、通常モードに戻してくれるか?」
「わかったのニャ」
けたたましい警告音が消え、赤色交じりだった天井の照明も白一色へと戻る。
室内の様子が元に戻ったからなのか、シィスは少し安心した様子だ。抱きとめていた腕を緩めると、彼女は素直に僕から離れていく。消えていく温もりがちょっと寂しい。
「それにしても【世界の果て】かぁ。もしかしてここが上昇限界?」
「わからないニャア……少なくともログには、直前まで【果て】が存在しているデータは残ってニャいニャね」
「と言う事は展開されたと考えた方が合理的か……まぁ【果て】が日常的に存在しているなら、普段空を見上げる度に何か霞んだように見えるんだろうし、歴代の偉人が気づかないわけもないし……」
「じゃあ、これって私たちが昇ってきたからってコト?」
「そう言う事になるのかなぁ……でも、少なくとも『拒否されて』ってのは考え辛いかな。ミャアの言う通りなら、僕たちは天使イィザエル様にお招きされて昇って来たわけで、無断で来たわけじゃないんだし」
「マスター。ミャアは嘘は言ってニャいニャよ? 確かにイィザエル様にお呼ばれされたのニャ」
「じゃあ何でなのミャアちゃん?」
「それはわからニャいニャ~」
三人で頭を捻っていたが当然答えなんか見つかる訳も無く、僕はそうそうに考えるのを止めた。
「まぁ、ダメなものはしょうがない。神様たちの都合なんて人間には分からないんだしさ」
「ウミャア。申し訳ニャいニャー」
「ミャアが謝ってもしょうがないだろ? ミャアのせいじゃないんだし」
「ウニャア……ミャアはちょっとイィザエル様に連絡してみるのニャね」
「そういやグラーディアを賜っているんだっけ」
「ウニャ。ちょっと聞いてくるニャ」
そう言うと、とてててと四足でミャアはどこぞに走って行ってしまった。別に此処でも何処でもお話できると思うのだけれど、僕たちの前では話しづらい事もあるのだろう。
……俺も上官との個人的な話を部下には聞かれるのは気まずかったしな……
「はぁ~……なんかガッカリだなぁ」
「まぁ、仕方ないよ。神様には神様の都合があるんだろうしさ」
「そぅなんだけどぉ……お兄ちゃんはガッカリしてないの?」
「うーんどうかなぁ……正直ちょっとホッとしてる」
「? なんで?」
「だって、僕はほら。何故自分がジャッジアに選ばれたのかを聞きに来てたんだから。【果て】によってこれ以上天上界に近づけないってことは、取り敢えず今はまだ『聞かなくても良い』ってことだろ?」
「あ……そっか」
ざーんねんとつまんなさそうにしていたシィスが、真面目な表情になった。気合の抜けてくだけた表情も、真面目できりっとした顔も、どちらも可愛くて素敵だ。
「正直さ……神様に選ばれたとかまったく実感がないんだよね。与えらえたエクソシアだって、自分自身でもどんな力なのか全く理解していないし……それどころか力を感じてすらいないんだ」
「でも、この――えっと、軌道エレベーターをつくりだしたのはお兄ちゃんなんでしょ?」
「うーん……状況からするとそうとしか考えられないんだけど、正直本当に自分でつくったのかはわからない」
「そうなの!?」
「うん。だって……僕はコレが何なのかは理解しているけれど、どうやってコレを構築するのかは全くわからないんだ。それでも現実にコレは此処にある。だから状況的には多分僕が作り出したんだろうなぁ……って感じ。【潜在能力開放薬】を飲んで気絶する前、最後に思い描いたのも軌道エレベーターだったし」
僕はクライマーユニットの部屋の中を見回しながら、シィスにそう説明した。
うんうんと頷きながら誘導されるように彼女も部屋の中を見回す。ちらちらと見える彼女の小さな耳や、首筋にどうしても目が惹かれてしまう自分がいた。
「うん多分……あの膜の様子は地表近くで見た【果て】と同じような感じだし」
「でも何で突然!? さっきまでは無かったんだよね?」
「なかったのニャ~。ログを確かめたのニャけど、突然現れたのニャよ」
「……取り敢えず警告音を消して、通常モードに戻してくれるか?」
「わかったのニャ」
けたたましい警告音が消え、赤色交じりだった天井の照明も白一色へと戻る。
室内の様子が元に戻ったからなのか、シィスは少し安心した様子だ。抱きとめていた腕を緩めると、彼女は素直に僕から離れていく。消えていく温もりがちょっと寂しい。
「それにしても【世界の果て】かぁ。もしかしてここが上昇限界?」
「わからないニャア……少なくともログには、直前まで【果て】が存在しているデータは残ってニャいニャね」
「と言う事は展開されたと考えた方が合理的か……まぁ【果て】が日常的に存在しているなら、普段空を見上げる度に何か霞んだように見えるんだろうし、歴代の偉人が気づかないわけもないし……」
「じゃあ、これって私たちが昇ってきたからってコト?」
「そう言う事になるのかなぁ……でも、少なくとも『拒否されて』ってのは考え辛いかな。ミャアの言う通りなら、僕たちは天使イィザエル様にお招きされて昇って来たわけで、無断で来たわけじゃないんだし」
「マスター。ミャアは嘘は言ってニャいニャよ? 確かにイィザエル様にお呼ばれされたのニャ」
「じゃあ何でなのミャアちゃん?」
「それはわからニャいニャ~」
三人で頭を捻っていたが当然答えなんか見つかる訳も無く、僕はそうそうに考えるのを止めた。
「まぁ、ダメなものはしょうがない。神様たちの都合なんて人間には分からないんだしさ」
「ウミャア。申し訳ニャいニャー」
「ミャアが謝ってもしょうがないだろ? ミャアのせいじゃないんだし」
「ウニャア……ミャアはちょっとイィザエル様に連絡してみるのニャね」
「そういやグラーディアを賜っているんだっけ」
「ウニャ。ちょっと聞いてくるニャ」
そう言うと、とてててと四足でミャアはどこぞに走って行ってしまった。別に此処でも何処でもお話できると思うのだけれど、僕たちの前では話しづらい事もあるのだろう。
……俺も上官との個人的な話を部下には聞かれるのは気まずかったしな……
「はぁ~……なんかガッカリだなぁ」
「まぁ、仕方ないよ。神様には神様の都合があるんだろうしさ」
「そぅなんだけどぉ……お兄ちゃんはガッカリしてないの?」
「うーんどうかなぁ……正直ちょっとホッとしてる」
「? なんで?」
「だって、僕はほら。何故自分がジャッジアに選ばれたのかを聞きに来てたんだから。【果て】によってこれ以上天上界に近づけないってことは、取り敢えず今はまだ『聞かなくても良い』ってことだろ?」
「あ……そっか」
ざーんねんとつまんなさそうにしていたシィスが、真面目な表情になった。気合の抜けてくだけた表情も、真面目できりっとした顔も、どちらも可愛くて素敵だ。
「正直さ……神様に選ばれたとかまったく実感がないんだよね。与えらえたエクソシアだって、自分自身でもどんな力なのか全く理解していないし……それどころか力を感じてすらいないんだ」
「でも、この――えっと、軌道エレベーターをつくりだしたのはお兄ちゃんなんでしょ?」
「うーん……状況からするとそうとしか考えられないんだけど、正直本当に自分でつくったのかはわからない」
「そうなの!?」
「うん。だって……僕はコレが何なのかは理解しているけれど、どうやってコレを構築するのかは全くわからないんだ。それでも現実にコレは此処にある。だから状況的には多分僕が作り出したんだろうなぁ……って感じ。【潜在能力開放薬】を飲んで気絶する前、最後に思い描いたのも軌道エレベーターだったし」
僕はクライマーユニットの部屋の中を見回しながら、シィスにそう説明した。
うんうんと頷きながら誘導されるように彼女も部屋の中を見回す。ちらちらと見える彼女の小さな耳や、首筋にどうしても目が惹かれてしまう自分がいた。
0
お気に入りに追加
42
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる