21 / 37
卒 ぼっち
しおりを挟む
高台の別荘(?)から眼下を望むと、最近は、人々の営みが垣間見える。
そう、火のある生活が広まりつつあるのだ。
目を凝らすと、あちらこちらから細くたなびく煙が見えるようになってきていた。
私の地図にも、印が増えた。
集落とおぼしき場所の記録だ。
織布のお陰で記録媒体にもバリエーションができたので、地図にも改良を重ねて充実化が進行中なのである。
これまでは人と会わずに済むように記録していた情報なのだが、最近になって、人付き合いの再開を考えるようにもなってきている。
そのためこうして頒布図を作成した上で、それぞれの生活レベルや習慣を、遠巻きに観察しようとしているわけだ。
火の伝播は迅速で、短期間でかなりの範囲に広まっている。
やはり、これほどに便利なモノともなると当然と言えよう。
しかもワタシは獣脂ロウソクや簡易提灯を遺して来たのだ。
人間たるもの、発見発明さえしてしまえばこっちのモノで、ひとたび便利な思い付きを得たならば、びっくりするほどの勢いで改良を加えて行くものなのだ。
おそらく、ちょっとしたカンテラくらいは速攻で造ったことだろう。
あの集落にとって、それらは最高の交易物資となるはずだ。
これだけ火が広まってきたなら、人々の暮らしは大きく変わる。
これまでは食べられなかった種子類や小さな貝なんかも採取の対象となって来るのだ。
狙い目は、そこだ。
ワタシは大小様々な袋を編み上げて、来るべきミッションに備える事にした。
普通のドンゴロス、トートバッグ風のものから、巾着、ナップザック風のものなど多種多様の豊富な品揃えは、ちょっと自慢しても良いんじゃないかな、これ。
マジで編み物最強だ。
せいぜい蔓で編んだ篭があれば上等なレベルの生活に、「袋」という概念はまだない。
これがお目見えすれば、採取や保管のみならず、運搬そのものに革命が……いや、革するほどの前提はないので……大躍進が起きるはず。
荷造りするにもいままでは獣の皮を風呂敷にするくらいが関の山であったが、袋があれば、持ち歩ける荷物の量と種類が格段にアップする。
旅だって、軽快になるだろう。
本来であればママ達がいる元の集落に進呈したいが、こっそり置いて来たとしても、さすがにワタシの仕業とバレるに違いない。
そこで、しばらく観察した上で、ここぞという狙いを定めた。
比較的早い段階で火が伝えられた事から、ママの集落とも交易があると考えられて、かつ、比較的近隣に複数の集落があるという環境の、やや大きめの集落だ。
こうした場所には、他の集落から頻繁に交易が行われたりと、人の往来が不自然なく行われているはずだ。
ワタシが成熟未然の女児であっても、サテライト集落が多ければ、一人で交易に現れてもそう不自然ではないはずだ。
近くの別荘(?)に潜んでしばらく観察した上で、未だに言葉はほとんど発達していないと見切り、違和感なく装いを整えたワタシはついに行動に出ることにした。
そう、火のある生活が広まりつつあるのだ。
目を凝らすと、あちらこちらから細くたなびく煙が見えるようになってきていた。
私の地図にも、印が増えた。
集落とおぼしき場所の記録だ。
織布のお陰で記録媒体にもバリエーションができたので、地図にも改良を重ねて充実化が進行中なのである。
これまでは人と会わずに済むように記録していた情報なのだが、最近になって、人付き合いの再開を考えるようにもなってきている。
そのためこうして頒布図を作成した上で、それぞれの生活レベルや習慣を、遠巻きに観察しようとしているわけだ。
火の伝播は迅速で、短期間でかなりの範囲に広まっている。
やはり、これほどに便利なモノともなると当然と言えよう。
しかもワタシは獣脂ロウソクや簡易提灯を遺して来たのだ。
人間たるもの、発見発明さえしてしまえばこっちのモノで、ひとたび便利な思い付きを得たならば、びっくりするほどの勢いで改良を加えて行くものなのだ。
おそらく、ちょっとしたカンテラくらいは速攻で造ったことだろう。
あの集落にとって、それらは最高の交易物資となるはずだ。
これだけ火が広まってきたなら、人々の暮らしは大きく変わる。
これまでは食べられなかった種子類や小さな貝なんかも採取の対象となって来るのだ。
狙い目は、そこだ。
ワタシは大小様々な袋を編み上げて、来るべきミッションに備える事にした。
普通のドンゴロス、トートバッグ風のものから、巾着、ナップザック風のものなど多種多様の豊富な品揃えは、ちょっと自慢しても良いんじゃないかな、これ。
マジで編み物最強だ。
せいぜい蔓で編んだ篭があれば上等なレベルの生活に、「袋」という概念はまだない。
これがお目見えすれば、採取や保管のみならず、運搬そのものに革命が……いや、革するほどの前提はないので……大躍進が起きるはず。
荷造りするにもいままでは獣の皮を風呂敷にするくらいが関の山であったが、袋があれば、持ち歩ける荷物の量と種類が格段にアップする。
旅だって、軽快になるだろう。
本来であればママ達がいる元の集落に進呈したいが、こっそり置いて来たとしても、さすがにワタシの仕業とバレるに違いない。
そこで、しばらく観察した上で、ここぞという狙いを定めた。
比較的早い段階で火が伝えられた事から、ママの集落とも交易があると考えられて、かつ、比較的近隣に複数の集落があるという環境の、やや大きめの集落だ。
こうした場所には、他の集落から頻繁に交易が行われたりと、人の往来が不自然なく行われているはずだ。
ワタシが成熟未然の女児であっても、サテライト集落が多ければ、一人で交易に現れてもそう不自然ではないはずだ。
近くの別荘(?)に潜んでしばらく観察した上で、未だに言葉はほとんど発達していないと見切り、違和感なく装いを整えたワタシはついに行動に出ることにした。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
お馬鹿な聖女に「だから?」と言ってみた
リオール
恋愛
だから?
それは最強の言葉
~~~~~~~~~
※全6話。短いです
※ダークです!ダークな終わりしてます!
筆者がたまに書きたくなるダークなお話なんです。
スカッと爽快ハッピーエンドをお求めの方はごめんなさい。
※勢いで書いたので支離滅裂です。生ぬるい目でスルーして下さい(^-^;
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
【完結】忌み子と呼ばれた公爵令嬢
美原風香
恋愛
「ティアフレア・ローズ・フィーン嬢に使節団への同行を命じる」
かつて、忌み子と呼ばれた公爵令嬢がいた。
誰からも嫌われ、疎まれ、生まれてきたことすら祝福されなかった1人の令嬢が、王国から追放され帝国に行った。
そこで彼女はある1人の人物と出会う。
彼のおかげで冷え切った心は温められて、彼女は生まれて初めて心の底から笑みを浮かべた。
ーー蜂蜜みたい。
これは金色の瞳に魅せられた令嬢が幸せになる、そんなお話。
私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ
Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」
結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。
「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」
とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。
リリーナは結界魔術師2級を所持している。
ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。
……本当なら……ね。
※完結まで執筆済み
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる