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卒 ぼっち

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高台の別荘(?)から眼下を望むと、最近は、人々の営みが垣間見える。
そう、火のある生活が広まりつつあるのだ。
目を凝らすと、あちらこちらから細くたなびく煙が見えるようになってきていた。

私の地図にも、印が増えた。
集落とおぼしき場所の記録だ。
織布のお陰で記録媒体にもバリエーションができたので、地図にも改良を重ねて充実化が進行中なのである。
これまでは人と会わずに済むように記録していた情報なのだが、最近になって、人付き合いの再開を考えるようにもなってきている。
そのためこうして頒布図を作成した上で、それぞれの生活レベルや習慣を、遠巻きに観察しようとしているわけだ。

火の伝播は迅速で、短期間でかなりの範囲に広まっている。
やはり、これほどに便利なモノともなると当然と言えよう。
しかもワタシは獣脂ロウソクや簡易提灯を遺して来たのだ。
人間たるもの、発見発明さえしてしまえばこっちのモノで、ひとたび便利な思い付きを得たならば、びっくりするほどの勢いで改良を加えて行くものなのだ。
おそらく、ちょっとしたカンテラくらいは速攻で造ったことだろう。
あの集落にとって、それらは最高の交易物資となるはずだ。

これだけ火が広まってきたなら、人々の暮らしは大きく変わる。
これまでは食べられなかった種子類や小さな貝なんかも採取の対象となって来るのだ。

狙い目は、そこだ。

ワタシは大小様々な袋を編み上げて、来るべきミッションに備える事にした。
普通のドンゴロス、トートバッグ風のものから、巾着、ナップザック風のものなど多種多様の豊富な品揃えは、ちょっと自慢しても良いんじゃないかな、これ。
マジで編み物最強だ。
せいぜい蔓で編んだ篭があれば上等なレベルの生活に、「袋」という概念はまだない。
これがお目見えすれば、採取や保管のみならず、運搬そのものに革命が……いや、革するほどの前提はないので……大躍進が起きるはず。
荷造りするにもいままでは獣の皮を風呂敷にするくらいが関の山であったが、袋があれば、持ち歩ける荷物の量と種類が格段にアップする。
旅だって、軽快になるだろう。

本来であればママ達がいる元の集落に進呈したいが、こっそり置いて来たとしても、さすがにワタシの仕業とバレるに違いない。

そこで、しばらく観察した上で、ここぞという狙いを定めた。

比較的早い段階で火が伝えられた事から、ママの集落とも交易があると考えられて、かつ、比較的近隣に複数の集落があるという環境の、やや大きめの集落だ。
こうした場所には、他の集落から頻繁に交易が行われたりと、人の往来が不自然なく行われているはずだ。
ワタシが成熟未然の女児であっても、サテライト集落が多ければ、一人で交易に現れてもそう不自然ではないはずだ。

近くの別荘(?)に潜んでしばらく観察した上で、未だに言葉はほとんど発達していないと見切り、違和感なく装いを整えたワタシはついに行動に出ることにした。

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