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第十一章 金(ゴールド)と星(ランジェリー)

第八十一話 三つ巴の料理対決!

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 料理対決開始前の六時頃に、オレと真槍ちゃんは合流する。
目の前に、優勝トロフィーに嵌め込まれた秘宝『真紅のルビー』がある。
しかし、大勢の観客の目がある為、星熊童子も真槍ちゃんも手出しする事が出来ない。

これを盗むという事は、料理勝負に敗北する事を意味していた。
料理の腕前に自信があるのなら、自らの料理の腕前を持って、優勝賞品とトロフィーに嵌め込まれた宝石ごと奪い取るしかない。

「まさか、最後の泥棒対決で、正々堂々と宝石を奪う事になるとは思わなかったわ。
私は一切手加減をしない。あなたも全力で料理対決に臨む事ね!」

星熊童子は、料理をする調理師衣装に着替え、真槍ちゃんにそう宣言する。
まともに料理対決すれば、経験のない真槍ちゃんが圧倒的に不利だった。
しかし、真槍ちゃんは修行で自信が付いたのか、不敵に笑う。

「ふふ、あなたの泥棒の腕より、料理の腕の方が上である事を願うわね。
雑魚を倒しても意味ないもの。アタシの目標は、更に上にいるはずだからね!」

「ふふ、次元能力などを使わなくても起こせる私の硬度技術をとくと味あわせてあげるわ」

星熊童子は、調理師衣装に着替え終わり、戦場のキッチンへと出て行く。
代わりに、泥棒対決では戦力外だった幾島警部が着替えに入って来た。

「ふん、星熊童子にばかり注目しているようだけど、私の存在も忘れないでよね!」

「ああ、うん。さっきまで完全に忘れていたわ。
というか、泥棒対決の時にいたかしらね。
全然気にも止まらなかったわ!」

「ふふ、足止めさえもできなかったわ。
でも、料理では負けない!」

真槍ちゃんもエプロン姿に着替えて、戦場のキッチンへ出て行く。
その後に付いて、オレもキッチンに向かう。
真槍ちゃんのサポートという名目で。

星熊童子には、後わずかで捕らえられなかった。
せめて料理のサポートで対決するしかない。会場の観客は、すでに満員御礼だった。
優勝トロフィーの宝石が、『真紅のルビー』だという事を知っているのだろう。

泥棒対決の延長としての試合でもあるのだ。
各自、勝って欲しい選手を応援していた。

「うおおお、幾島警部! 勝って、二人を脱がしてください! 
オレ達は、『真紅のルビー』と『ピンクの翡翠』を鑑賞したいんじゃあ!」

「バカ! 高貴の香りの漂う『黒真珠』こそが、芸術的に見て高く評価できる。
『ピンクの翡翠』など、所詮は子供騙しだ。
『真紅のルビー』は美しいが、芸術的価値は低く感じる!」

「ふん、所詮は素人だな! 『真紅のルビー』こそ、至高の傑作だ! 
それ以外など、子供の玩具に過ぎん!」

「ふっ、『ピンクの翡翠』の価値が分からないとは、君達は悲しい生物だな。
確かに、石としての価値は低いかもしれないが、三位一体の美しさでは、トップレベルである。

ブラの大きさと形、パンティ―から漂う香り、女の子としての若さと質、どれもが芸術的だ!」

オレの様な素人には理解できない会話が続いていた。
分かっている事は、オレの真槍ちゃんが危険に晒されているという事だけだ。
オレがしっかり守ってやらなければ! 

各自、料理が次第に出来あがり、盛り付けが開始された。
味の審査をする審査員も到着した。

オレは全然知らないが、この異次元の世界では有名らしい。
司会者が紹介して行く。

「審査員トップバッターは、キメラカンパニーの社長・黒沢勝昭様です。
様々な動物を実験し、多くの功績を残されています。
数十年研究し続けているその功績とは裏腹に、見た目は二十三歳前後の御姿! 

これも、キメラカンパニーのなせる科学技術の技でしょう。
驚嘆に値します!」

キメラカンパニーの社長は、料理人を一望して傲慢に語る。

「ふん! 料理人は誰かと思って見渡せば、泥棒娘に、無能警部、変な女子高生か……。
こんなメンツでまともな食事が出て来るか?
まあ、せいぜい私の舌を満足させる料理を作るんだな。絶望的だとは思うが……」

その言葉を聴き、真槍ちゃんと星熊童子、幾島警部はキレる。
一気に会場の空気が重く感じられる。
司会者は、気分を変え、新たに審査員を紹介して行く。

「はい、じゃあ次は、神の舌を持つ少女・姫状瑠璃の私とその執事・松羽さんです。
繊細な味を識別できる事により、多くの審査を任されています」

人間とは思えない様な二人だった。
一人は少女のようだが、全てを悟るような目をしており、もう一人は、年齢の割に幼く感じられる。あべこべな二人だった。

「警察長と天才動物学者・虎明君です」

普通のおじさんと十歳前後の少年だった。
これと言って特徴は無い。
司会者が、審査員が四人しかいないので騒ぎ始めた。

本来は、三人の所を四人にされたらしい。
偶数になり、審査がうまくいかない可能性があった。
姫状瑠璃は、近くにいるゆたかに目を付ける。

審査員の近くでフラフラしていたようだ。
大方、姫状瑠璃を脱がしたいけど、武器が無くてできない状態だったのだろう。
こうして、五人の審査員が登場した。

女の子同士は仲良くなったらしく話し合い始め、男達は沈黙し続けていた。
姫状瑠璃がゆたかに話しかける。

「ふふ、話が出来る相手がいて嬉しいわ。よろしくね、ゆたかさん」

「夜露鄙駈(よろぴく)! でも、ただの料理勝負じゃあ、糞詰まらないよ!」

「そうね、じゃあ、私が分かり易く解説してあげるわ! 
美味しい料理というのは、美味しいデートプランと同じなの。

そこを関連づけて話せば、モテない君達が注目するでしょうね。
少しは面白そうでしょう?」

「うん、面白そう!」

こうして、料理の解説をしながら、姫状瑠璃のデートアドバイスが始まった。
料理は、スープ、前菜、ライス、メインディッシュ、デザートの順に出て来る予定だ。
オレ達は、料理を作り終わり、審査に移る。

姫状瑠璃が分かり易く料理の分析をし始めた。
ゆたかもそれを聴きながら料理を食べ始める。

「最初の項目は、スープですね。
最初に出て来る料理であり、その後の料理にも期待感を抱かせます。

スープの味は、くどくも無く、味が薄過ぎてもいけません。
デートでいえば、最初の接触と言ったところでしょう。

ここは蛇足ですが、デートの説明には重要な所です。
待ち合わせ時間に遅れて来るのは明らかにダメですが、デートコースを男性一人が勝手に決めるのもダメです。

女の子は、自分でデートコースを選びたいのです。
しかし、いきなりデートで行きたい所を訊かれても答える事はできません。

そこで、二人で行き先を決める事になるわけですが、ノープランで行き先を今から決めるという方法はいただけません。
女性側からして見たら、計画性の無い男性と判断され、その後の進展も無いでしょう。

理想的なプランとしては、三つデートプランを用意し、彼女に行きたい所を選ばせるわけです。

多少手間はかかりますが、計画に外れたプランも後々のデートに使えるわけですから、自然と次のデートは、ここへ行こうねという話題にできるわけです。

今回は、料理を選ぶ形式ではありませんが、お客を引き付けるには、洋食、中華、和食の様なお客がその場で選択が出来るというのも一つの強みです。
さて、デートの状況が説明できたところで、彼女達の料理を堪能するとしましょうか?」

「はい、デート師匠!」

審査員は、各自出される料理に注目し始めた。
オレが観察するに、星熊童子は洋食で勝負する様だ。
真槍ちゃんは、和食を選ぶ。幾島警部は、定番の中華メニューらしい。

最初は、星熊童子の料理が出され、次に真槍ちゃん、最後に幾島警部の順番で料理が審査される。

どれも美味しそうだが、誰が優勝するのだろうか? 
審査員の厳しい味審査が始まろうとしていた。
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