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第十章 引き離されたオレと冷菓!

第六十一話 茨木童子VS光宮マモル

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 オレは、冷菓と奏子を守る為、茨木童子と対峙する。
どことなく憎めない面をしているが、冷菓と奏子を連れ去られた場合、オレ達がかなり不利になる。

オレの精神的ショックは計り知れないだろう。
何としても、ここで二人を守らなければいけなかった。

「悪いが、手加減できないぞ!」

オレは、子狐丸を構えてそう言う。

「ふん、僕も君に手加減する気はさらさらないよ。
初っ端から全力で行かせてもらうよ!」

茨木童子は、腕力だけでなく、脚力も化け物並みだった。
一瞬にして、オレの懐に入る。

「くっ、速い!」

オレは、子狐丸を盾に変化し、攻撃をガードする。
いくら茨木童子の腕力が異常でも、攻撃をまともに受けなければ、ダメージは軽い。
そう考えて、盾で自分を守り、オレ自身は後ろへ引く。

腕力の謎が解けない限り、真っ向勝負では勝てそうもないし、子狐丸も持たない。
その考えが失敗だった。

「ふーん、守りに徹して、隙を付く作戦かな。
確かに、剛腕の敵に対処するには、その戦法がセオリー(基本)通りだよね。
でも、僕には逆効果だよ!」

オレは、自分の予想通りに、茨木童子の攻撃に合わせて後ろへ飛んだ。
攻撃の威力は、弱まりオレへのダメージは少ない。
これを続けて行けば、時間は稼げると高を括る。

しかし、茨木童子はそんな甘い敵ではなかった。
オレが後ろに引くより速く、前へと突撃して来る。
オレは、サンドバックになったかのごとく、茨木童子の攻撃を浴びまくった。

盾が音を立てて変化し、ボコボコになる。茨木童子のフィニッシュ攻撃により、オレは盾もろとも吹っ飛ばされた。
オレは岩場に激突し、かなりのダメージを受ける。

ボコボコになった子狐丸を心配し、元の刀の状態に戻すと、ちゃんと元通りの姿になっていた。

子狐丸は、破壊されない限り、元の状態に復元するらしい。
茨木童子もその事に気付き、子狐丸を絶賛する。

「へえ、あそこまでボコボコにしたのに、壊れないとはたいした物だ。
でも、刀自身が折れたら、復元も不可能だよね!」

子狐丸は、オレの手から離れると元の刀に戻る。
その弱点を見抜き、茨木童子の激しい攻撃が迫る。
オレは、場所を移動し、龍脈のある場所に茨木童子を誘き寄せた。

茨木童子の攻撃は、シンプルな剣による攻撃だ。
オレのワープ能力は、爆発や風等の力を利用する為、さっきまでの場所では発動できない。

しかし、自然と力の集まる龍脈などのある場所ならば、ワープ能力を使う事ができた。
古い科学の知識も、あながちバカにはできない。
茨木童子は何の警戒も無く、オレの有利な地形に脚を踏み入れる。

茨木童子が攻撃を避けられない、オレを狙いジャンプした瞬間のタイミングを狙う。
茨木童子の攻撃がヒットする瞬間に、目の前のオレが消える。
次の瞬間、茨木童子の背後にオレがいる。ワープ能力と時間調節能力の合わせ技だ。

茨木童子は素早く気配に気付き、防御の体勢を取るが、オレの攻撃が決まった。
茨木童子は多少驚きを見せたが、冷静に自分が傷を負った事を悟る。
傷を手で払い、戦いの邪魔になる事を避ける。

おそらく一度くらいの反撃は予期していたのだろう。
オレの反撃よりも速く、攻撃を当てようと高速で移動する。
茨木童子の攻撃の方は崩れない。

一度でも動揺させる事が出来れば、オレの有利になるのだが、茨木童子は戦法を変えようとしない。
下手に戦い方を変えるよりは、速さでオレを追い込む方が得策と考えたのだろう。

オレも同じ立場なら、そうするだろう。
しかし、オレには身体で覚えていた時間調節能力がある。
わずか数秒だけだが、相手の動きを先読みし、相手よりも速く動ける能力だ。

相当訓練を積んだ達人のみが扱える技だが、オレにはそれが備わっていた。
昔の記憶は無くなったが、オレの身体が覚えていたのだろう。
剣道を習っている内に、自然と身に付いた能力だ。それを使い、茨木童子と対決する。

腕力は茨木童子の方が上だが、速度はオレの方が速い。
極限の状態になり、オレも本来の能力が発揮されつつあった。
茨木童子の攻撃を先読みし、力の方向を読み取り、刀の攻撃を受け流す。

これなら、子狐丸でも防御する事が出来る。
茨木童子の攻撃を制御した後で、オレの攻撃がヒットする。

与えた傷は小さいが、オレが有利になりつつあった。
茨木童子は、二度の攻撃を受けた事で、間合いを取り状況を判断していた。

「へー、いきなり強くなった。一度目は、攻撃を避けられ、いつの間にか背後から攻撃された。
二度目は、僕の攻撃を受け流す様に防御し、流れる様に反撃された。
こいつ、僕と同じタイプか!」

茨木童子は、ふっと笑ったかと思うと、オレを再び攻撃する。
どうやら、オレを分析しながら戦っているようだ。

「どうやって僕の背後に付いたんだい? まずは、それを教えてもらおうかな?」

茨木童子は、緩急を付けて攻撃する。こいつ、かなり戦い慣れている。
緩急を付けられると、ワープ能力を使うタイミングが判断しづらい。
それに、先読みして時間調節する技も出し難い。

この状況で戦い続ければ、いずれはオレに隙が生じるだろう。
茨木童子は、オレの心を見通したかのごとく言う。

「ふふ、僕の時間調節技『チェンジ・オブ・ペース』に翻弄されているようだね。
君の技は見た所、僕の動きを先読みしているように感じた。

なら、一定の動きをしなければ、先読みは困難だろう? 
もうさっきの様な猛攻はできないが、確実に君を追い詰めて行く事が出来るよ!」

茨木童子は、オレを無理矢理に元の場所へ移動させる。
腕力を使い、オレの得意なフィールドから押し出す。
これにより、オレのワープ能力も封じられていた。

「ふふ、この場所から移動した瞬間、君は強くなった。
なら、別の場所ならワープする様な攻撃はできないはず、違うかい?」

茨木童子は、オレの表情を観察しながら、自分の行動が正しい事を悟る。
更に、オレに追い打ちをかけるかのように、脚元の小太刀を脚で跳ね上げ、左手に持つ。攻撃、防御、スピード、全てがオレよりも上回ってしまった。

「さて、そろそろ仲間が来る頃だろう。飛行機の音が聞こえて来ただろう? 
君と遊ぶ時間が無くなった証拠さ。一気に片を付けさしてもらう!」

茨木童子は、最初の時の様に一気にオレの懐に飛び込む。
最初は不意を衝かれたが、先読みできる状態ならば、カウンターで攻撃を合わせる事が出来る。唯一、最大のチャンスが巡って来たと考える。

(よし! ここで相手より速く攻撃を繰り出せば、茨木童子を倒す事が出来る。
なっ、隙が全く無い?)

オレは、茨木童子の動きを先読みしたが、全てのパターンで攻撃が止められてしまう事を悟った。
オレの方が事実上動きの速いはずなのに、小太刀を持った防御力は異常なレベルだった。

オレがどう攻撃しても、全て防がれてしまう。
オレが最後に茨木童子から得た情報だ。
この悪い情報は、オレの心に諦めを過らせるのに十分だった。

(今のオレでは、茨木童子に勝てない……)

オレが攻撃を止めた事により、茨木童子の大剣が、オレの心と子狐丸を同時に叩き折った。
子狐丸の先端は、キ―ンという音を立てて転がった。
オレは、攻撃の衝撃により、紙屑の様に吹っ飛ばされる。

オレに怪我は無かったが、立ち上がる気力はもはや無かった。
心と子狐丸を折られ、呆然とする。
身体全体が震え、今起こっている事が理解できていなかった。

「どうやら、僕の実力を垣間見てしまったようだね。
君は、もう倒す価値も無い。子狐丸も折れてしまったし、ここでリタイヤかな?
怪我が無くて良かったね。では、冷菓ちゃんと奏子ちゃんを攫って行くとしますか!」

茨木童子の背後から巨大な空母が姿を現し、オレ達の上空を飛行する。
茨木童子は、素早く移動し、冷菓と奏子を連れて飛び去って行った。
オレは、それをただ黙って見ている事しかできなかった。

空母は不時着せず、ただ上空を通り過ぎるだけで、茨木童子が二人と戦利品を回収して行く。
仲間の降ろした縄梯子に捕まり、全てを持って行った。

「じゃあね! 
ゆたかちゃんと真槍ちゃんは、僕を追い駆けてくれる事を楽しみにしているよ! 
その時は、デートしようね♡」

ダメージを受けている真槍ちゃんとゆたかに挨拶して、大空へと飛び立って行った。
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