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第三章 七人の赤い悪魔

第67話 レッドキャップの太刀!

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インプが恐るべき攻撃魔法を放とうとした瞬間、人間大の赤い影がインプを襲う。
動体視力の良いオレは、魔物が切り裂かれた瞬間、攻撃したのが嵐山である事を悟る。
瓦礫から自力で脱出したのだろうか?

嵐山は、インプを一瞬にして切り裂き、放とうとした魔法を消滅させた。
さすがは戦闘のプロだ。子供の姿とはいえ、攻撃に迷いがない。

インプの急所を的確に切り裂き、致命傷を与えていた。
インプがやられたのを気づいたのは、自分が床の上に倒れた時だった。
攻撃が軽やか過ぎ、敵も痛みを感じないほどの早業だった。

「バカな……。攻撃されたのか? 最強の能力と最強の魔術を与えられたこの俺様が……」

「ふん! お前はもっと身体と戦闘力を身に付けるようにするべきだな!」

嵐山はそう言って構える。オレもついつい口が出る。

「ああ、女の子を操って戦わせて、いい気になっているようじゃ、どんな強力な魔法があっても勝てないぜ!」

オレがそう言うと、他のみんなが驚く。
操っていたインプでさえもが気付いてなかったようだ。

「何? 女の子だと……。そんなバカな……」

「いや、可愛い顔しているし、服装も赤い服だけでなく、メイド服も準備している。
オレが来ているメイド服もレッドキャップのものだろう。

オレも、最初は血の付いた服を着ていたから分からなかったが、二回目にあった時は着替えをしていたから気が付いた。
まあ、性別を確認してみるまでは確かな事は言えないが……」

インプは驚いたようだが、不敵に笑い始めて言う。

「ふははは、か弱い女の子をお前達は殺したというわけだ! 
一匹でも残っていれば、亜空間が消えた時に無事だろうが、どうせ全滅させたのだろう? 

増やしたレッドっキャップ全員に、武器を持って勝負をして倒してこいと命令していたからな。
だから、どいつも挑戦的だっただろう。残念だったな!」

オレはレッドキャップ(ナイフ)を思い出し言う。

「いや、一匹だけ無事だぞ。戦いを挑んで来たけど、料理勝負に持ち込んで勝利した。
城のどこかにいるんじゃないか?」

「そんな嘘が通用すると思うか、この殺人者め!」

「いや、本当だって……。
女の子と格闘で勝負するのも面倒だったから、ナイフの皮むき対決にして、一緒にカレーを作ったぞ」

「小学生の林間学校かよ! 人生をエンジョイしているんじゃない!」

「ふっ、どんな時でも楽しむのが男というモノだ! 
顔が可愛いかもしっかり観察させてもらったぜ!」

キーリアと偽シルビアさんは引いていた。

「うわ、私に対しても胸とか尻とか見ているんじゃないの? 最低!」

「キモい、キモい! こっち見るな!」

オレは偽シルビアさんの正体を知っているため、その一言で少しイラっとする。
どうせバルベロの依頼で来たのだろうが、なぜ氷の魔法を使えたのだろうか? 
オレは問い詰める。

「お前、サキュバスのクランだろ。
まあ、シルビアさんじゃないから助かったけど、どうして氷の魔法を使えるんだ?」

「ああ、シルビアさんから渡されたんだよ。
魔法が使えない時でも一度だけ魔法を使えるとかいう宝石をね。
ギンロウの住んでいる山から採れるそうだ。それを使って魔法を起こしたってわけ。

本当、大変だったよ。シルビアさんは妊婦なのにバルベロの包囲網を突破しようとするし、宅配業者を呼んで、業者が帰る瞬間に付いて行こうとしたり……。

これ以上野放しにするとやばい事になるという事で、私がシルビアさんの代わりにここへ来たんだ。
サキュバスの特殊能力で、シルビアさんに変身する事はできたからね。
まさか、子供の姿になるとは思わなかったけど……」

全ての敵を倒し、嵐山を救出する必要も無くなった。
嵐山はどうやって瓦礫の山から出て来たのだろうか? 
オレは冷静になって訊く。

ちょっとやそっとでは抜け出せないほど積っていたはずだが……。
押し潰されていても不思議じゃないほどだったはずだ。

「ふん、男性風呂から女性風呂へ移動したのと同じ要領だよ。
瓦礫が積み重なる前に、床に小さな穴が開いた。

その穴から下の階へ降りていき、無事だったという事だ。
合流するのに時間がかかってしまったがね」

真空の刃を防ぐ三つ目の方法は、やられたふりして逃走する事だ。
敵が死んだと相手が判断した場合は、攻撃される事さえ無くなるのだ。
みんなも真空の刃で攻撃された時は、状況に応じて対応しよう。

オレ達が話をしている隙に、インプは誰かにメールを送っていた。
ご主人様の援助を期待しているのだろうか? 
今、攻撃されるのはまずい! 
オレはそう思い、インプの携帯電話を奪ってメールを確認すると、こういう遣り取りをしていた。

「ご主人様、すいません。負けてしまいました。
俺はおそらく帰ることなく死んでしまいます。どうか、助けに来てください!」

「はいはい。まあ、復讐をしようとして、返り討ちにあったのなら本望でしょう。
私も野良猫にえさを上げる気持ちで、あなたに魔力を与えたから後悔していたんです。
次からは、家に上げたくないなとか思っていたんです。

やっぱり、家の仕事をしてくれるのは、可愛いメイドさんじゃないとね♡ 
じゃあ、短い残りの人生を楽しんでね!」

どうやら援軍の危険は無いようだ。オレはインプの肩をたたき同情する。
わずかな時間だったが、インプとも打ち解ける事ができたようだ。

インプが死んだ瞬間、オレ達は亜空間から脱出する事ができた。
オレ達は、迷いの森の入口に立っていた。どうやら、全部終わったらしい。

何かを忘れている気もするが、気絶しているオーガの手当ても必要だし、みんな疲れているので、アルスター城へと戻ろうとする。

すると、オレ達の近くにボロぞうきんのようになったアルシャードを見付けた。
おそらくもう息はあるまい。
捨てて行こうとすると、一匹の動物がアルシャードに近づいて行く。

どうやら、アルシャードのペットであり、ずっと世話をしていたようだ。
ご主人が死んでからも懸命な働きをする良い動物だ。

そう思って見ていると、無事だったレッドキャップが太刀を持ち、アルシャードの近くに寄っていく。
最後に、アルシャードの太刀を返そうというのだろうか? 律儀な少女だ。

 レッドキャップがアルシャードに近づいて行くと、狐のような小動物が話しかけて来る。

「こら、ご主人様に近づくんじゃない! ご主人様はまだ息があるんだ! 
僕がずっと世話していたんだ!」

レッドキャップは、アルシャードを助けようとしているかと思ったが、目当てはこの動物のようだ。
太刀と一緒にこの動物も連れて行こうとする。
クランはアルシャードの名刀を知っているようで、名前を教えてくれた。

「名刀、子狐丸。刀の切れ味はもちろん、所有者を守る狐の精霊が宿っているという刀だ。アルシャードからレッドキャップに継承されたようだな。
愛用のオノも消えたようだから丁度良いだろうな」

レッドキャップは太刀を奪い取ったようだ。実際、アルシャードより強いから仕方ない。
オレは万が一を考え、アルシャードの脈を測ると、アルシャードは生きていた。

城へ連れ帰り、オーガともども世話をする事にした。
復帰したとしても、剣士としては引退だろう。
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