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第一章 『秘められた異次元(シークレットディメンション)』への扉!

第2話 お姫様とのデート

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シルビアさんの用意してくれた食事は、科学庁長官が好きだったものらしいが、薄いみそ汁とご飯という質素な物。
外国人で十八歳くらいの美女が作った物なら、この味でも喜ぶべきか。
お湯のような味噌汁だが、ダシをを上手く取れていない。
これでは、白湯に近いだろう。
中国人がスープを作っているが、味の無いお粥のようなあの味だ。

そして、異次元世界の魚料理だった。
食べ易い魚を選んだのだろう、日本料理的な味がした。
これだけは本人が気に入っているのか、苦労して習得した感じがする。

味付け自体は、日本のかば焼きを感じさせるが、鮎のような魚が使われていた。
おそらく、うなぎの様な魚が無かったのだろう。
魚は違うが、味は鰻の蒲焼に近い味だった。
まあ、蛇じゃないのは幸いだったが……。

オレの奥さんになるならビーフシチューやロールキャベツが作れる様に、花嫁修業をしてもらうのだが、時間から考えてその機会もないだろう。
料理の腕自体は悪くないので、すぐにいろいろ覚えてくれるだろうが……。

食事が終わると、シルビアさんはオレを図書館に連れて来る。
そこは歴史のある建物らしく、ところどころ改装した後が見られるが、部屋も大きく、日の光が気持ち良い温度を保っていた。

本を読むのも、一人になるのも最適の空間だ。
所々に漫画や日本の風景なども飾ってある。
シルビアさんが良く使っている場所らしい。



「ここは、魔術書などがたくさんある書庫ですよ。
他にも、幻獣の資料や武器などの説明が載っています。
魔術師や剣技の先生をお呼びして、訓練することもできます。

黄金のドラゴンを倒す目的なら、経費はすべて無料ですよ。
何せ、多くの騎士や戦士、魔術師が戦いを挑みましたが、多くの人が生きて帰って来ませんでしたからね。

先生方も怖れをなして、黄金のドラゴンを倒そうとはしません。
もう一度黄金のドラゴンに襲われた場合、対処のしようがないのです。
もう、日本の英雄様やあなた様のような異世界の人に頼るしかないのです」

シルビアさんはオレに何かを期待しているように、そう言って涙を浮かべる。
可愛いと感じてしまうが、シルビアさんの話を聞き、オレは恐れて返事はできなかった。
剣や魔法のプロでも歯が立たないなら、オレでもどうか分からない。
魔術書を読んだが、アルファベットがたくさん羅列してあるだけで読むことはできない。
見ているだけで気分が悪くなると感じた。

「はあ、でもオレは特殊な訓練も受けていませんし、そろそろ異世界から帰りたいんですけど……」

それを聞き、シルビアさんは露骨にがっかりとした表情をする。
日本人というだけで、何をそこまで求めていたのだろうか?
大人の観点から行ってみたら、迷子というレッテルを貼られるだろう。
確かに、異次元空間の迷子だから、そこまで恥ずかしくはないが頼られるほどでもない。
運命的な出会いは感じるが、すぐに日本へ帰されるだろうと思っていた。

「え? そうですか。でも、日本科学庁の方々以外は、帰る方法も分かりませんよ。
英雄様か、他の科学庁の方々が来ない限り、帰るのは困難です。
実は、私もどうやって行き来するのかはまだ詳しく分かっていません。

最初は爆発的なエネルギーを一時的に使って、ここに辿り着いたそうなのです。
その後は、いろいろ研究が進んで、効率良く移動できるようになったのですが、一般人には教えてくれません。

私が日本へ移動する時も、余計な事は考えないようにという理由で目隠しされました。
そして謎の乗り物に乗せられ、気が付いたら日本の国土だったのです。
なので、私では別次元へ移動する方法は、よく分からないのです。

一時的にゲートと言われる通り道ができるらしいので、ここらへんを探っていれば、もしかしたら帰れるかもしれませんけど……。
空間が歪んで見えるとか、物が突然消える場所があるらしいですけど……」

シルビアさんは、手でパントマイムの様な仕草をする。
その仕草を見る限り、本当に移動する方法が分からない様だ。
オレを一気に不安な気持ちにさせるのに十分だった。

「そうですか……。
じゃあ、ちょっと待ちますね。
二、三日で誰か関係者が来ないかな?」

シルビアさんはオレの言葉を聞き、確認する。
急に真剣な表情になり、ドッキリと心臓がなった。
真面目な顔も美人で綺麗だ!

「黄金のドラゴンは倒されないのですね?」

「危険なら避けたいですね。準備も何もないので、すいませんね」

オレはシルビアさんに悲しい顔をさせたくなかったが、こればっかりは仕方ない。
シルビアさんは少し悲しい顔をするが、また笑顔に戻った。
それを見て、オレは少しホッとする。

シルビアさんは笑顔になり、オレに何かを要求して来た。
手を差し出しこう言う。

「では、宿代と食事代の料金25レギンを払ってください。日本円で1万円くらいです!
日本の相場はこれくらいだとお聞きしたので、一日この値段で部屋の一室をお貸しします」

シルビアさんはオレにお金を請求する。
恋人から商売人になった瞬間だった。
近所のきついおばちゃんを思い出す。

「ええ! お金取るの?」

オレは財布の中身を確認するが、財布の中には帰りの切符代くらいしかなかった。
職安に行くついでに電車に乗ったから、行きと帰りの交通費くらいしか用意していない。
他にもお金になりそうな物を探すが見付からなかった。

どうしても払えない。
シルビアさんはちょっと冷たく言う。
どこの世界でも、お金の無いニートには、生活するのが厳しい世の中のようだ。

「モンスターも倒さない、仕事もしないなら仕方ありません。
ただ飯食いを置いておくほど、私達の城は豊かではありませんので……。
餓死するかもしれませんが、城の外でお休みくださいね♡」

オレはお金がない時の唯一の手段を交渉する。
ここで生活するには、仕事が必要なのだ。
日本に帰るまでの間、なんとか食い繋げねばならない。

「皿洗いとかの仕事は?」

そうオレには、もう皿洗いくらいしか手がないのだ。
他の技術も通用するか分からない。
雑用こそ、この世で通用する最後の切り札なのだ。
多少文化が違っても、なんとか生きて生活していける。

「それはなりません。それは私の仕事! 
今日は1日1千枚を洗います。
それがなくなると、私がご飯を食べられなくなります!」

オレはその言葉を聞き、シルビアさんはお姫様ではなく、雑用係と推理する。
おそらくドジっ娘メイドあたりだろう。
皿洗いしか回ってくる仕事がないのだろう。

「要は、あなたは雑用係ってことですね? 
日本に来たのも、他の人のお手伝いとかで、運よく一緒に来たってことですよね? 
本当の領主などの支配者はどこにいるんですか?」

シルビアさんはちょっと怒り気味に言う。

「私、雑用係違う! 
本当は日本の日本科学庁長官代理人と旅をする予定だったけど、幼くて可愛い感じの子じゃないと言われて、別の十歳になる子が付いて行ったのです。

趣味が違うんじゃしょうがないなと言われて、私だけ置いてきぼりにされたのです。
本当は日本語を話せる女の子は数人いて、私も代理人に付いて行く予定だったのに、私だけのけものにされました。

酷い、不公平、私とっても悲しかったです。
でも、あなたに遭って、ちょっと嬉しくなりました。
これで一緒に冒険するパートナーが出来たのだと……。

冒険に出ないのなら、皿洗いをするしかないとお母様に言われて、今日から働く予定でした。
その仕事が無くなったら、怒られます!」

オレは経験から、日本科学庁長官代理人の思考を読み取った。
そして、シルビアさんを優しく励ます。

「それは、あなたにとっては良かったと思いますけど……。
帰れないなら仕方ない、オレもモンスター退治に協力しますよ。
この図書館で黄金のドラゴンを倒す研究をします。

シルビアさんは文字の翻訳をお願いしても良いですか? 
一緒に冒険に出るパートナーになりますよ!
それなら、タダでも良いですよね?」

オレは苦肉の策でそう提案する。
どの道、この世界に居る以上は、危険に遭遇するかもしれない。
知識や技術は身に付けておいた方が良いだろう。

シルビアさんは泣きかけていたが、オレの言葉を聞き、満面の笑顔になった。
正直に言うと、オレは女性からこんな笑顔をさせた事は無かった。
初めて女性を満面の笑顔にしたオレは、再びシルビアさんにときめく。

「はい! 私はあなたに会えて良かったです」

オレは喜ぶシルビアさんを見て、少し悪いことしたなと感じる。
何はともあれ、無料で異世界に滞在することが決まった。
心の中ではこう思っていたのだ。

(なんてな。
モンスターを倒すふりして、ここに住み付き、このシルビアさんとイチャラブするのも悪くない。
日本科学庁の代理人は、ロリコン好きの人だったようだが、オレは清楚系のシルビアさんみたいのが好みだからな。
日本に帰る時に、一緒にお持ち帰りすればいいだろう。
それまで、オレの立派な嫁になるように知識を教えて、育ててやらないとな。

モンスター退治は可能なら雑魚を相手にして、無理そうなら帰るまで、ここで資料研究に没頭しよう。
25歳で彼女がいないオレに巡って来たチャンスだし、科学庁のおっさんにでも相談すれば、シルビアさんの戸籍くらいは作ってくれるはずだ。
どうせ企業秘密で大事にできないだろうから、公務員として就職もできるだろうし、有効にこのチャンスを使わないとな!)

こうして、オレとシルビアさんの半共同生活が始まった。
夜はシルビアさんの用意してくれた部屋を使い、よく寝て身体を作る。
朝は図書館で昼まで読書、午後は買い物や運動をする。

戦闘に必要な物をそろえるという口実と、街中を知るということで歩き回る。
そして、1ヶ月が過ぎて行く。
なぜか、まだモンスターは襲って来ない。

「あの? そろそろ1ヶ月ほど過ぎましたけど、冒険の旅に出ないんですか? 
私も同行しますけど……」

シルビアさんにそう言われ、オレは言い訳を考える。
もしかしたら、異次元世界から脱出できる人物が尋ねて来るかも知れない。
城の中が安全なら、無理して戦う必要はないし、帰る機会を逃したくなかった。

「旅の費用とかがな……。
まず、稼げる安定な仕事と、知識と武器を学ばないと、モンスターに負けてしまうぜ。
素人はせっかちで困る。

確実に勝つ戦闘は、準備が99割で、残りが旅をして魔王を倒すという仕事だよ。
君も無駄死には、嫌だろう? 
君のために言っているんだ。

オレは勝てる自信があるけど、君を守りながらじゃ、確実には勝てない。
奴らは卑怯で、汚れた戦法を使って来るからね。
いきなり弱い君を狙うなんて、当然の戦法なんだよ。

そして、君が傷付いた場合、オレの戦力はがくんと落ちる。
精神的な関係や、実際に君を守りながらなどでな。
君を守りながら勝つには、まだまだ準備が必要だよ!」

シルビアさんはそれを聞いて納得する。

「まあ、やはり日本人の方は戦闘経験が豊富なんですね。
誰もが、一度は魔王に戦いを挑み、勝利していると聞きます。
そういうたゆまぬ努力と知識が、私達にはないのです。本当に尊敬いたしますわ!」

シルビアさんは日に日に美しくなっていく。
女性は恋をすると美しくなるというが、シルビアさんにオレの愛情がようやく伝わったようだ。

正直、魔法の書とか難しくて全然分からないし、剣も重くて持つのがやっと……。
オレは早く異次元からの帰還を願っていた。
日本科学庁長官代理人、早く帰って来て! と……。

しかし、現実は残酷だ。
そう願っても帰れるものではない。
何の進展もないまま、二ヶ月が過ぎて行った。

モンスターも襲って来ないし、アルスター王国は平和だなと感じる。
オレは身体がたくましくなり、シルビアさんとも仲良くなっていく。
こうして、三カ月が過ぎ、オレはシルビアさんと結婚する準備をしないといけないな、と考え始める。

もしもモンスターが現れたら、オレがモンスターを倒す。
シルビアさんと両親は、オレが強い事を認めれば、正式に婚約するという。

オレも最初は緊張していたが、三ヶ月過ぎてもモンスターと戦う機会はおとずれていない。
シルビアさんは、噂に流され易いという弱点を持っていた。
すぐにモンスターが攻めて来るような口ぶりだったが、かなりのずれがある。

日本関係者も現れる気配がないし、どうしたものか?
オレは、修業した成果を試したいと考えていた。
のどかなのも良いが、折角の緊張感が無くなってしまう。


 ステータス
光宮守(こうみやまもる)
年齢 25歳 男 人間
職業: 一時的に国王
称号: もう一人の英雄
HP(体力): 80
MP(魔力): 0
攻撃力: 30 (武器により高くなる)
防御力: 50 (精神的強さ90)
スピード: 80 (この世界では高い方)
知力: 80 (図書館で調べれば100)
精神力:∞

得意技: 隠し武器 ナイフ投げ 火薬を扱える 昼寝 読書(気が向いたら)
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