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しおりを挟むラッセルside
夫婦仲が良いなら疑いがはれて良かったで終わるかもしれないけど、政略結婚なら夫婦仲が冷めてる夫婦だっているはず。
そんな家庭が疑われて色々と面倒なことになったら、完全に夫婦の関係に亀裂が入るはずだよな。
「姉上は何処まで把握してるの?乗っ取りの可能性なんて普通は考えないだろ?それに何かしら予兆がないのに俺の命が危険なんて思うのか?」
「私と同じことに気が付いてるはずだ。今のままではラッセルの命が狙われる可能性が高いことも理解してる」
「何で?我が家みたいに1人目が女でその次が男なんて家は幾らでも居るじゃん。そんな家は2番目の子供は全員が命の危険があるの?」
俺はそんな話を聞いたことはない。
貴族や王族は常に命の危険があるのは知っている、だけどそれは次男だからとかではなく、身分が高いものは色々な理由で命を狙われるからだ。
恵まれた身分で生まれたことへの妬みとか、家督争いとかで命が狙われることなど理由は色々。
「ラッセルは自分の能力が低いから、次期当主に指名されてなかったと思ってるみたいだけど本当は違うんだよ」
「じゃあ何でまだ指名してなかったの?俺と同い年の奴とかでもう指名されてる人とかいるじゃん」
年の近い男兄弟とか複数人いる家とかは、ギリギリまで指名されないことはよくあるけど、我が家みたいに姉と弟しか居なくて、姉上が結婚適齢期に入るのにまだ発表されてないのは不自然なはず、正式に発表されないと姉上の結婚等とかに影響が出てくる。
「それはラッセルの命を守るためだ。エレーナの結婚時期を遅らせてしまう結果になったとしても、まだ発表が出来なかったんだ」
「それは何で?」
「妹とルークはラッセルが生まれて数年後に、サレルノ侯爵家にエレーナとロベルトの婚約解消の提案をしたんだ。理由はエレーナとロベルトの相性の悪さを理由にだけどな」
確かに姉上とロベルトは、俺が小さい頃から仲が良いとは全く思えなかった。
ロベルトが一方的に姉上を嫌っていて、姉上も横暴なロベルトを苦手に思ってるのがよく分かった。
「今も婚約が継続してるってことは、サレルノ侯爵家が拒否したってこと?」
「可能性は低いけど、エレーナが当主に選ばれるのを期待してるからだろうな。サレルノ侯爵家が婚約解消を受け入れてくれたら、妹達もラッセルを次期当主に指名できたんだ」
「順番が逆では駄目だったの?俺が次期当主に選ばれたら、サレルノ侯爵家も姉上との婚約を解消してたんじゃないのか?」
いつまでも発表しなかったから、無駄に期待して婚約解消しなかったんじゃないか?
普通に考えたら姉上が当主になることは無茶だから、何で婚約解消を渋ってるのか理解できないけどな。
どんなに姉上が優秀な人だったとしても、俺が当主になれない程の問題がない限り当主になるのは俺になる。
我が家が男爵家や子爵家なら姉上が当主になっても問題ないけど、公爵家の当主が女の姉上が選ばれるのは難しい。
姉上が例えどんなに優秀だったとしても難しい。
公爵家の当主が女だと、どうしても周りからの反発が大きくなってしまう。
どんなに優秀な人でも、周りからの反発が多いと当主としてやっていくのは難しい。
姉上が一人っ子だったら反対はされないかもしれないけど、姉上には弟の俺がいる。
だから姉上が当主になるのは歓迎されないんだよな。
「妹達はサレルノ侯爵家が婚約解消を受け入れなかったことで、エレーナが当主になるのを諦めてないと判断したんだ。ラッセルを次期当主に指名して、ラッセルの命を狙うかもしれないって警戒してたんだ」
「考えすぎじゃないの?普通は他所の家の後継者問題にそこまで関わってこないでしょ?」
普通に考えて頭がおかしいとしか思えない。
息子の婚約者が後継者に選ばれなかったからって、殺人を犯してまで息子を当主の夫にしようとするか?
「あり得ない話ではない。サレルノ侯爵夫人は過激な思考の持ち主だ。それにこれは起きないと思いたいが、私の妻も何をするかわからない」
「えっ?」
「妻はラッセルを警戒してるんだ。妹達が生きてた頃は妹のことも警戒していた。お前には一応だけど王位継承権があるだろ?」
「あるけど第三位だよ。それに母上は女だから王位継承権は持ってなかったのに、母上の何を警戒していたんだ?それに今は王太子に子供が生まれるから、俺ももっと下になるでしょ?」
第三位の俺に王座が回ってくることなんて滅多にない。
もしも王位継承権第一位と第二位の従兄弟である2人が同時に亡くなるとしたら、それは伝染病とかになるはず、もしそれなら王都に住んでる俺だって危険のはずだから、伯母上が俺を警戒する意味がわからない。
まさか俺が王になるために2人を殺すとか思ってるの?
そんなの王になる前にバレて、王族殺しとして処刑されるだけだろ。
馬鹿なのかな?
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