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 お兄さんは男を紐を使って木にグルグル巻きにすると、ちょっと離れた場所に置いてきた男の仲間を確保しに行った。

 はぁ~、この男が逃げることは出来ないって分かってるけど、こんな奴とここで残されるのは微妙な気分。

 お兄さんはすぐに戻ってきてくれて、2人の男を引き摺って連れてきた。

「えっと………、その人達は大丈夫ですか?」

 男達は地面を引き摺られて来たせいで、顔や服から出てる腕や足に傷が出来ていて足からは血が出ている。

「回復魔法を使うから問題ない。それよりこの3人を連れて街まで行くのは大変だな。自分達で歩かせても素直についてくるわけ無いだろうし、だからって気絶させたら運べないしな」

「非常用ボタン付きのテントを持ってますよ。今は危険な状態ではないけど、理由があるなら使っても問題ないですよね?」

「凄いものを持ってるな。何となく分かっては居たけど貴族だよな?」

 気が付くよね。

 多分この男達も私が貴族の娘だって分かってたわよね。

 服装は庶民が着てるものを用意したのに何でバレたのかしら?

「分かります?」

「そんな綺麗な格好をしてたらな。普通の庶民では無いことに気が付く」

「綺麗な格好?庶民が着てる服を買ったはずなんですけど?」

 もしかして間違ったものを買ってる?

 チラッと自分の服装を確認するけど、我が家の使用人が休日に着ていた服と同じはず。

「服は庶民が着てるものと同じだけど、新品みたいに綺麗すぎるだろ。庶民なんて滅多に服を買えないからボロボロになるまで着る、新品を着るのは特別な日ぐらいだろう。旅の途中なんか間違っても着ないな」

 …………成る程。

 貴族だから庶民と関わる機会が少ないせいで、この世界の庶民の一般常識に疎いのよね。

 大抵のことは前世での庶民の感覚で物事を判断していたのよね。

 日本では服を買えないぐらい貧しいなんて人は滅多に居ないから、服がボロボロになるまで着るなんて考えはなかった。

 でも家で働いてる使用人の服もボロボロの人なんて居なかった気がするけど?

「我が家で働いてる使用人が休日に着てるものを参考にしたけど、これでは駄目だったかしら?」

「貴族の家で使用人してるものは、給金が良いから一般の庶民より裕福な方だからな?飲食店とか清掃の仕事をしてる者より倍は給料が多いはずだ」

 そうなの?

 知らなかった。

 自分で常識はある方だと思ってたけど、もしかして私って意外と無知なのかな?

「それに貴族の家で働いてるなら、休日でもそれなりの服装をしないといけないから、ボロボロになるまで服を着たりしないだろうな。だから見本にはならないと思うぞ?」

「休日なのにそんな事を気にしないといけないの?」

「当たり前だろ?貴族の家で働いてるのに、その家の使用人がボロボロの服を着てたら、少ない給金でこき使われてるって噂になる。そしたらその家の貴族の悪評になるから、使用人は休日でも周りの目を気にする必要がある」

 そうなんだ。

 知らなかった。

 確かに使用人の服がボロボロだったら、あまり給料を貰えてないって思うかもしれない。

 これって庶民にとって一般常識なのかな?

 それともこのお兄さんが詳しいだけ?

「色々と教えてくれて有難うございます。えっと………、何の話をしてたんでしたっけ?」

「忘れてた。こいつ等をどうするか考えてたんだったな」

「そうでした!!えっと……、テントの非常用ボタン使いますか?」

「お願い出来るか?」

「はい!!」

 マジックバックからテントを取り出し、テントの中に入って非常用ボタンと用途別ボタンを起動する。

 人的被害で5人以下で良いんだよね?

 ボタンが赤く点灯してるから大丈夫ね。

 自分の役目が終わり、るんるん気分でお兄さんの所に戻る。

「任務終わりました~」

「そっか、ありがとうな。助かったよ」

「いえいえ!!助かったのはこっちですから、それに使えるものは使ったほうが良いですからね」

 やっと落ち着くことが出来て、改めてお兄さんの顔をじ~っと見る。

 さっきまでは緊張状態だったから、お兄さんの事をイケメンだって思ってたけど、イケメンで間違いないけどかなりのイケメンだよね?

 それに庶民には見えない。

 お兄さんも貴族なんじゃないかな?

 でもあの男達のことで冒険者の評判が悪くなるって怒ってたから、このお兄さんも冒険者なんだよね?

 貴族って滅多に冒険者にはならないんだよね。

 危険な仕事だし、お兄さんみたいに魔法が使えるなら国の魔導術師に所属する
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