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しおりを挟むカイル様は1つの部屋に無言で入っていく。
仕事部屋かな?
私が部屋の中を観察してると、カイル様は机の中をゴソゴソと何か探してる。
「どうしたんですか?」
「ここにお前に渡すものを置いたはずなんだが?」
私に渡すもの?
なんだろう。
「これだ」
カイル様は何か小さい箱を取り出して、小さい箱と机の上に置いてあったローブを持って、こちらに近付いてくる。
カイル様が無言でローブを渡しくる。
カイル様もローブを着てるけど、デザインが全然違う。
私に渡してきたローブは黒のローブで、カイル様が着てるのは白いローブ
「これは?」
「秘書や助手が身に付けるものだ」
ロビーにも、ローブを着た人が沢山いたけど、白のローブを着た人は2人しか居なかったような?
「ローブの色に何か意味はあるんですか?」
「上級魔術師は白のローブで、秘書や助手は黒のローブって決まってる。一目で分かるように変えてるんだ。被災地などでは特に役立つ」
確かに緊急時に一目で分かるのは大事かも。
改めて考えると、ロビーに居た人の比率がおかしすぎる。
上級魔術師は2人でそれ以外は秘書か助手ってこと?
上級魔術師はカイル様の行動に興味がないってことかな?
「塔に所属してる上級魔術師ってどれぐらい居るんですか?」
「今か?………22人、いや1人亡くなったから21人だな」
えっ!?
上級魔術師ってそんなに少ないの?
そんなに少なかったら特別視されてもおかしくないよね。
でも21人で魔物の討伐や被災の救助は大変かも。
秘書や助手は居るとはいえ、上級魔術師に同行する形だから、上級魔術師の人手不足は変わらなそう。
だからお父様とお母様は滅多に帰ってこれないのか…………
今では慣れたけど、小さい頃は寂しかったんだよね。
お父様達は子供より仕事が大事なんだと思っていた。
人の命に関わるから、自分の子供を犠牲にしてでも、仕事を優先するのは仕方ないよね。
人手不足なら余計にだよね。
「そのローブは絶対に身に着けろよ。身分の保証にもなる。それとこの指輪に魔力を付属しろ」
「魔力ですか?」
「指輪に魔力を流すと、個人の魔力が指輪に登録される。絶対に失くすなよ。再発行が面倒臭い。それを失くしたら塔に入れないからな」
うわぁ~、ヤバいものだ。
「はい!!」
魔力を流しすぎたりしたら壊れるかな?
慎重にちょっとだけ魔力を流す。
「出来たみたいだな。ついて来い」
カイル様は仕事部屋から出ると、エレベーターに向かう。
エレベーターの横にある機械の前で立ち止まる。
ここに指輪をつけた手をかざせ。
カイル様の指示通りにすると、機械からピッと音がなる。
「もう良いぞ」
「えっと………、何がどうなったんですか?」
「エレベーターにお前の魔力を登録したんだ。これで指輪をつけてたら、ここまでお前1人で入って来れる。登録されてないものはこの部屋に入ることが出来ない。今回みたいに付き添いでなら入れるけどな」
凄い!!
指輪が鍵の代わりなんだ。
失くしたり、誰かに奪われたりしたら大変だよね。
気を付けないと…………、ここにはカイル様の貴重な研究資料などもあるはずだから、カイル様から指輪を奪うより、私から奪う方が簡単だろうから狙われる可能性もある。
「指輪に強力接着剤をつけて、指から外せなくしたほうが良いかな?」
無意識にボソッと呟くと、カイル様から呆れた視線が飛んでくる。
「馬鹿なことを考えるなよ。無駄なことを考えないで仕事しろ」
無駄なことって言われた。
とても大事なことだよね?
はぁ~~~~、今は仕事をしないと、私はここに仕事をしに来たんだから。
「何をしたら良いですか?」
質問すると、カイル様は分厚い紙の束を、何も置いてなかった机の上にドサッと乗せる。
「この机がお前が仕事する場所だ。この研究資料から大事なところだけ抜き出して、誰にでも分かりやすくまとめてくれ」
「…………はい。えっと………、期間はどれぐらいですか?」
えっと………、何枚あるんだろう?
見た感じだと、百枚以上はあるよね?
ここから要点をまとめて、分かりやすく清書しろって事だよね。
今日中に終わるかな?
「今週中ならいつでも構わない。でもノロノロしてたら、いつ任務が入るか分からないぞ」
任務に同行するって話だから、任務中は出来ないってことだよね。
ヤバい!?
すぐに始めないと!!
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