上 下
11 / 16

11

しおりを挟む

 カイル様は1つの部屋に無言で入っていく。

 仕事部屋かな?

 私が部屋の中を観察してると、カイル様は机の中をゴソゴソと何か探してる。

「どうしたんですか?」

「ここにお前に渡すものを置いたはずなんだが?」

 私に渡すもの?

 なんだろう。

「これだ」

 カイル様は何か小さい箱を取り出して、小さい箱と机の上に置いてあったローブを持って、こちらに近付いてくる。

 カイル様が無言でローブを渡しくる。

 カイル様もローブを着てるけど、デザインが全然違う。

 私に渡してきたローブは黒のローブで、カイル様が着てるのは白いローブ

「これは?」

「秘書や助手が身に付けるものだ」

 ロビーにも、ローブを着た人が沢山いたけど、白のローブを着た人は2人しか居なかったような?

「ローブの色に何か意味はあるんですか?」

「上級魔術師は白のローブで、秘書や助手は黒のローブって決まってる。一目で分かるように変えてるんだ。被災地などでは特に役立つ」

 確かに緊急時に一目で分かるのは大事かも。

 改めて考えると、ロビーに居た人の比率がおかしすぎる。

 上級魔術師は2人でそれ以外は秘書か助手ってこと?

 上級魔術師はカイル様の行動に興味がないってことかな?

「塔に所属してる上級魔術師ってどれぐらい居るんですか?」

「今か?………22人、いや1人亡くなったから21人だな」

 えっ!?

 上級魔術師ってそんなに少ないの?

 そんなに少なかったら特別視されてもおかしくないよね。

 でも21人で魔物の討伐や被災の救助は大変かも。

 秘書や助手は居るとはいえ、上級魔術師に同行する形だから、上級魔術師の人手不足は変わらなそう。

 だからお父様とお母様は滅多に帰ってこれないのか…………

 今では慣れたけど、小さい頃は寂しかったんだよね。

 お父様達は子供より仕事が大事なんだと思っていた。

 人の命に関わるから、自分の子供を犠牲にしてでも、仕事を優先するのは仕方ないよね。

 人手不足なら余計にだよね。

「そのローブは絶対に身に着けろよ。身分の保証にもなる。それとこの指輪に魔力を付属しろ」

「魔力ですか?」

「指輪に魔力を流すと、個人の魔力が指輪に登録される。絶対に失くすなよ。再発行が面倒臭い。それを失くしたら塔に入れないからな」

 うわぁ~、ヤバいものだ。

「はい!!」

 魔力を流しすぎたりしたら壊れるかな?

 慎重にちょっとだけ魔力を流す。

「出来たみたいだな。ついて来い」

 カイル様は仕事部屋から出ると、エレベーターに向かう。

 エレベーターの横にある機械の前で立ち止まる。

 ここに指輪をつけた手をかざせ。

 カイル様の指示通りにすると、機械からピッと音がなる。

「もう良いぞ」

「えっと………、何がどうなったんですか?」

「エレベーターにお前の魔力を登録したんだ。これで指輪をつけてたら、ここまでお前1人で入って来れる。登録されてないものはこの部屋に入ることが出来ない。今回みたいに付き添いでなら入れるけどな」

 凄い!!

 指輪が鍵の代わりなんだ。

 失くしたり、誰かに奪われたりしたら大変だよね。

 気を付けないと…………、ここにはカイル様の貴重な研究資料などもあるはずだから、カイル様から指輪を奪うより、私から奪う方が簡単だろうから狙われる可能性もある。

「指輪に強力接着剤をつけて、指から外せなくしたほうが良いかな?」

 無意識にボソッと呟くと、カイル様から呆れた視線が飛んでくる。

「馬鹿なことを考えるなよ。無駄なことを考えないで仕事しろ」

 無駄なことって言われた。

 とても大事なことだよね?

 はぁ~~~~、今は仕事をしないと、私はここに仕事をしに来たんだから。

「何をしたら良いですか?」

 質問すると、カイル様は分厚い紙の束を、何も置いてなかった机の上にドサッと乗せる。

「この机がお前が仕事する場所だ。この研究資料から大事なところだけ抜き出して、誰にでも分かりやすくまとめてくれ」

「…………はい。えっと………、期間はどれぐらいですか?」

 えっと………、何枚あるんだろう?

 見た感じだと、百枚以上はあるよね?

 ここから要点をまとめて、分かりやすく清書しろって事だよね。

 今日中に終わるかな?

「今週中ならいつでも構わない。でもノロノロしてたら、いつ任務が入るか分からないぞ」

 任務に同行するって話だから、任務中は出来ないってことだよね。

 ヤバい!?

 すぐに始めないと!!


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私は何も知らなかった

まるまる⭐️
恋愛
「ディアーナ、お前との婚約を解消する。恨むんならお前の存在を最後まで認めなかったお前の祖父シナールを恨むんだな」 母を失ったばかりの私は、突然王太子殿下から婚約の解消を告げられた。 失意の中屋敷に戻ると其処には、見知らぬ女性と父によく似た男の子…。「今日からお前の母親となるバーバラと弟のエクメットだ」父は女性の肩を抱きながら、嬉しそうに2人を紹介した。え?まだお母様が亡くなったばかりなのに?お父様とお母様は深く愛し合っていたんじゃ無かったの?だからこそお母様は家族も地位も全てを捨ててお父様と駆け落ちまでしたのに…。 弟の存在から、父が母の存命中から不貞を働いていたのは明らかだ。 生まれて初めて父に反抗し、屋敷を追い出された私は街を彷徨い、そこで見知らぬ男達に攫われる。部屋に閉じ込められ絶望した私の前に現れたのは、私に婚約解消を告げたはずの王太子殿下だった…。    

【完結】本当に愛していました。さようなら

梅干しおにぎり
恋愛
本当に愛していた彼の隣には、彼女がいました。 2話完結です。よろしくお願いします。

大公殿下と結婚したら実は姉が私を呪っていたらしい

Ruhuna
恋愛
容姿端麗、才色兼備の姉が実は私を呪っていたらしい    そんなこととは知らずに大公殿下に愛される日々を穏やかに過ごす 3/22 完結予定 3/18 ランキング1位 ありがとうございます

婚約者の誕生日パーティーに出席していたら、前世でわたしの夫だったという人が現れました

柚木ゆず
恋愛
 それは、わたしことエリーズの婚約者であるサンフォエル伯爵家の嫡男・ディミトリ様のお誕生日をお祝いするパーティーで起きました。  ディミトリ様と二人でいたら突然『自分はエリーズ様と前世で夫婦だった』と主張する方が現れて、驚いていると更に『婚約を解消して自分と結婚をして欲しい』と言い出したのです。  信じられないことを次々と仰ったのは、ダツレットス子爵家の嫡男アンリ様。  この方は何かの理由があって、夫婦だったと嘘をついているのでしょうか……? それともアンリ様とわたしは、本当に夫婦だったのでしょうか……?

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。

音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。 だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。 そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。 そこには匿われていた美少年が棲んでいて……

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

残念ながら、定員オーバーです!お望みなら、次期王妃の座を明け渡しますので、お好きにしてください

mios
恋愛
ここのところ、婚約者の第一王子に付き纏われている。 「ベアトリス、頼む!このとーりだ!」 大袈裟に頭を下げて、どうにか我儘を通そうとなさいますが、何度も言いますが、無理です! 男爵令嬢を側妃にすることはできません。愛妾もすでに埋まってますのよ。 どこに、捻じ込めると言うのですか! ※番外編少し長くなりそうなので、また別作品としてあげることにしました。読んでいただきありがとうございました。

処理中です...