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エリックお兄様達はダニエル様とシャノン様の父親をよく知ってるみたいで、二人が証人になってくれると知ってホッとしている

「それなら安心だね。それよりずっと気になってたんだけど、何でそんな最低な男とカトリーヌ叔母様を結婚させたの?聞いてる感じはシルビアのお祖父様は分からないけど、お祖母様は性格に問題ありそうですけど?」

「シルビアのお祖父さんは仕事人間で家庭を放置してたかもしれないけど、仕事面では凄く優秀な方だったんだよ。お前たちは約10年前にあった隣国との争いを知ってるか?」

10年前の争い?

それとお祖父様が何か関係あるのかしら?

「軽い戦争になりそうだったってことは知ってるけど、詳しくはまだ勉強してないわ」

「俺もアンリと同じだ」

「私は争いがあったことも知らない」

ウィリアムお兄様とアンリお姉様は何となくは知ってるんだ

じゃあ、この中で全く知らないのは私とジャンヌだけなのかな?

「それって隣国の第2王子がこの国の伯爵令嬢と駆け落ちしたのが原因ですよね?しかもその駆け落ちに、隣国の高位貴族の息子が数人一緒に行ってしまったとか」

「エリックはよく勉強しているな。この国の伯爵令嬢1人と隣国の貴族の子息が3人と王子が1人駆け落ちして消息不明になったんだ。最終的には亡くなって見つかったんだけど、駆け落ちしたものすべてに婚約者が居たことと、隣国の王子が居たことで我が国と隣国でどちらが責任を取るか問題になったんだよ」

「それぞれの家の問題なのに、それが国同士の争いになったのは何で?女性がこの国の貴族だったから?」

「それもあるけど駆け落ちした者の中に王子が居たことが問題なんだ。その王子の婚約者がカトリーヌだったんだよ。隣国と縁を結ぶための婚約だった。それと王子達と伯爵令嬢が出会ったのが、この国の学園に留学していた時だから、監督不行ってことで責められてしまったんだよ」

えっと………、何から驚いていいのか分からない

お母様はお父様と婚約してたんじゃないの?

お母様の元々の婚約者は隣国の王子?

でもそれなら色々納得できるかも、お父様は今年30歳でお母様は生きてたら23歳だった

貴族だから年齢差の結婚はおかしくはないけど、元王女のお母様と侯爵家のお父様なら、もっと年齢の近い人と結婚しててもおかしくないよね

「言いがかりじゃない!!おかしいのは隣国の王子でしょ!!それを私達に責任転換するなんて間違ってる!!」

「言いがかりだけど相手の気持ちを考えたら仕方ない。王子が留学してきたのはカトリーヌと交流を深めるためだった。なのに当人の王子はカトリーヌと交流を深めず、他の女との恋に盛り上がっていた。一緒に消えた貴族の子息は、第2王子の側近で国として期待していた人材だ」

「うわぁ~、それは国として頭が痛い問題だよね。第2王子の側近ならそれなりに高位貴族だろうし、婚約者達も高位貴族の令嬢だよね。悪くないってわかってても、うちが厳しく監視してたらこうならなかったって責めたくなるかも」

優秀な人材だったかは分からないけど、高位貴族の息子たちが複数人居なくなるのは、国としても頭が痛いよね

それに親御さんからしても、子供が居なくなったって知ったら、原因になった人物を責めたいけど、伯爵令嬢は一緒に居なくなってるし

伯爵家を責めたくても相手は他国の人だから、簡単に会うことはできないだろうしね

「普通なら国のトップが落としどころを考えて穏便に話し合って終わらせる問題なんだけど、被害者の一人にカトリーヌが居たから、父も怒ってしまいまともな判断は出来なかったんだよ。普段の父ならそうはならなかっただろうけど、お互いにお前が悪いって言って譲らずに、あと一歩ってところで戦争になるところだったんだ。まぁ、私も第2王子に怒っていたから人のことは言えないけどな」

お母様は苦労してたんだな

10年前ってことはお母様は13歳だよね?

「ねぇ、相手の男はまともな教育されてなかったの?私だって貴族や王族なら、国や家のために自分の行動を責任を持って、自分の気持ちを抑えて国の為に生きていくって知ってるよ?それが贅沢な暮らしをしてる私達の義務でしょ?」

ジャンヌはそう言って、他国とはいえ同じ王族なのに行動がおかしいと怒っている

「ジャンヌは偉いな。まだ5歳のジャンヌでも分かってることが、あいつらは理解してなかったんだよ。いや………理解してたけど納得出来なかったのかもな。駆け落ちなどせずに父や隣国の王に謝罪して、今の身分を捨てる覚悟があるなら、許されていたかもしれないのに馬鹿な奴らだ」

伯父様はそう言って、ボソッと『そしたら騙されて死ぬことも無かっただろうに』と呟いた

「お母様とお父様は何で結婚することになったの?」

「シルビアの祖父は外交官だったんだけど知ってるか?」

「知らない。誰もお祖父様とお祖母様の話をしてくれる人は居なかったから」

お二人が私が生まれる前に亡くなったのは知ってるけど、いつ頃亡くなったとか、何故亡くなったのかは知らない

「そうなんだな。シルビアの祖父は外交官として、この国と隣国の争いを止めるために交渉しに行ったんだよ。あの人は父親や夫としては駄目だったかもしれないが、外交官としては立派な人だった。見事に互いの落としどころを作って和解させたんだよ。だから戦争にならずに済んだ」

そうだったんだ。

もしも今も生きていたら、お祖父様は私にどんな風に接してくれたのかな?

優しいお祖父様だった?

それとも私に興味なくて冷たいお祖父様?
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