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第五章

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 ユーリ様と会場に入ると、陛下と王妃様もすぐに名前が呼ばれて会場に入ってくる。

 陛下は壇上に上がるとユーリ様を呼ぶ。

 ユーリ様の名前が呼ばれたことで、周りはざわつき始める。

 今日は王太子任命のパーティーだから、陛下がユーリ様を呼んだことで、察しが良い人はその理由をすぐに理解したみたいね。

 ユーリ様は壇上に向かおうとするけど、すぐに横にいる私を見てから困った顔をする。

 壇上に呼ばれてるのはユーリ様だけだから、私を1人にするのが心配みたいね。

 大体の人がユーリ様が王太子になることに賛成でしょうけど、中にはミハイル様を支持してる人も居るから、そんな人に私が危害を加えられないか心配なんだと予想ができる。

 ユーリ様が王太子になることで、ユーリ様の妻の座を狙う人も出てくるはず、正妻は無理でも側室や妾の座を狙う人だっているはず。

 そうなると私を邪魔に思う人も出てくるでしょうし、私の身も危険になってしまう。

「安心してください。すぐにお兄様とレイチェル様がここに来てくれるので、ユーリ様は壇上に行ってください」

「なら来るまで待つよ」

「すぐそこまで来てるので大丈夫ですよ。陛下を待たせてはいけませんわ」

 数メートル先にお兄様達を見つけたので、ユーリ様に向かうように言う。

 だけどユーリ様はお兄様に直接私を預けるまでその場を離れなかった。

 それを見たお兄様とレイチェルは苦笑いをしていて、遠くからこちらの様子を見ていた、陛下と王妃様も苦笑いをしていた。

 ユーリ様からの大きい愛情を感じるけど、ユーリ様の過保護な様子を周りに見られてしまい、私は居たたまれなくなってしまった。

「ユーリ様はお前を溺愛してるな。仕事中のユーリ様しか知らなかったから、お前と居るのを見てると違和感しか無い」

 うん?

 仕事中のユーリ様と私といる時のユーリ様に、そこまで差はないわよね?

「何度か私も手伝いに行ったことがありますけど、そんなに変わりはないですよね?」

「ユーリ様はイリーナには甘いからな。イリーナが居るときと居ないときでは、職場の雰囲気が結構変わるぞ?」

「それってパワハラってこと?それって大丈夫なの?パワハラ男ってモラハラになりやすいよね?イリーナはユーリ様と結婚して大丈夫?」

 モラハラとパワハラ…………

 全く想像ができない。

「モラハラ?パワハラ?それはなんだ?レイチェル様の国の言葉なのか?」

「えっと…………、お兄様と作った言葉だったような~~~?パワハラは職場とかで、地位が高い人が下の人に対して、高圧的に接したり、無理難題を押し付けることです。モラハラは配偶者に対してやることです」

「面白い言葉ですね。パワハラがそう言う意味なら、ユーリ様はパワハラではないな。あの人はイリーナが居ない時は雰囲気が変わるけど、酷い方に変わるわけではない。説明は難しいけど、頼れる上司って感じになるかな?怒らせたら怖いけどな」

「ユーリ様が怒ったりするんですか?注意とかされることはありましたけど、怖いって印象はあまりないですわね?」

 どんな風に怒るのかしら?

 頭ごなしに怒鳴るとかる

 でもそれならパワハラって言うのを否定しないわよね。

「仕事の失敗を隠蔽した人が居たんだけど、それに気が付いたユーリ様と父上が、淡々と無表情で尋問してたんだよ。普段は穏やかな人が無表情で事務的に話してるのは、標的ではなかった俺でも怖く感じた」

 それは怖そう。

 レイチェルも同じように感じたのか、隣でブルッと震える。

 怖いよね。

 お兄様もレイチェルの様子に気が付いたみたいで、頭を優しくポンポンする。

 レイチェルの顔が真っ赤になった。

 好きな人にそんな事をされたら、我慢出来ないわよね。

 お兄様はレイチェルの様子を嬉しそうに見ている。

 うーん、やっぱりお兄様ははレイチェルのことを、恋愛対象として好きなのかしら?

 そしたら2人とも両思いだから良いわよね。

 レイチェルとお兄様には幸せになって欲しい。

 お兄様とレイチェルの今後の事を考えてると、ユーリ様が壇上に上がるのが見えた。

 とうとう始まるのね。
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