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第五章
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しおりを挟む陛下からの話を聞き終わった王妃様は般若の顔をしている。
そうなりますわよね。
私が王妃様の立場だったら、同じような反応になると思う。
自分の意志と関係なく操られて、あと少しで自分が廃人になってたかもしれないなんて、想像しただけで恐ろしい。
「絶対に許しませんわ!!あんな娘を私が認めたなんて思われるなんて、私の名誉が傷つけられましたわ。魅了魔法に頼らないといけないような人物に、次期王妃なんて務まるはずがありません!!」
そうなんだよね。
王妃や王太子妃は完璧じゃないと許されない、周りに付け入られるようでは、王族の花嫁にはなれない。
自国の貴族が相手でも隙を見せてはいけない。
ちょっとした油断が大きな問題になってしまう。
「お前の憤りは分かるけど、今はちょっと落ち着いてくれ。皆を解放する道具は揃っている。どうやって抵抗なく全員をこの水晶に触らせるか考える必要がある」
「申し訳ありません。取り乱してしまいましたわ。そうですわね。パーティーを開催するのはどうですか?貴族全員を参加させるパーティーなら、何の疑問もなく参加してくれるはずですわ」
「それは良い考えだな。パーティーなら皆が順番に挨拶に来るから、その時に水晶に触るように指示をすればいい。だが全員を集められるようなパーティーは当分ないぞ?私とお前の誕生日はずっと先だからな」
この国で全員が集まるようなパーティーは、陛下と王妃様の生誕パーティーぐらいよね。
それ以外だとわざわざ領地から離れて、この王都まで来るようなことは滅多にない。
辺境地の領主になればなるほど、責任感が強いせいで滅多に領地を離れない。
普段なら頼もしいって思うけど、今回はその責任感が仇となるのね。
「それなら王太子任命のパーティーを開けば良いですわ。貴方はユーリ様を次期王にするって、もう決めてるんでしょ?それなら早く発表する必要もありますし、ユーリ様なら私も賛成ですから」
「良いのか?君の実家は反対するんじゃないか?ユーリを王にするってことは、ミハイルを廃嫡するってことだ。ミハイルの反応次第では、一生幽閉もあり得る」
「仕方ありませんわ。魅了魔法を使われていたとしても、危険人物をこの王宮に入れたのはミハイルです。今回は陛下である貴方が何もなかったですけど、下手したら国が乗っ取られていた可能性もあります。その責任を取る必要があります。私も責任を取る必要がありますけど、国が混乱してる今は、無責任にこの席をおりることは出来ません」
王妃様は悲しそうな顔をする。
そりゃそうよね。
誰だって自分の息子を罰したくないはず、廃嫡されてしまったらミハイル様はこの世界では生きづらくなってしまう。
平民としてひっそりと暮らすしかない。
ミハイル様の今後の行動次第では、処刑されてしまう可能性だってある。
「済まない」
「謝らないでください。あの子には元々向いてなかったんです。このままあの子が王になって居たら、国民を困らせることになっていたかもしれません」
「姉上ごめん。私はミハイルの教育係の一人だったのに、ミハイルを正しい方向に導くことが出来なかった。そのせいで結果的に姉上から子供を奪うことに……」
ユーリ様が悔しそうに顔を歪めて、今にも泣き出しそうな顔をしている。
「ユーリ様から姉上と呼ばれるのは懐かしいですわね。ユーリ様が謝ることはないですわ。あの子が貴方を拒否していたんです。素晴らしい見本が近くにあるのに、あの子は年が近い貴方と比べられるのを嫌がり、貴方が教えてくれるのを拒否してました。その時からこうなる未来が決まっていたのかもしれませんわね」
王妃様は強いわね。
私が王妃様の立場だったらあんな風に振る舞えるかしら?
私なら相手は悪くないと分かっていても、八つ当たりをしていたかもしれない。
誰かを責めないと自分が耐えられないはず。
「そんな暗い顔をしてる暇はありませんわよ。時間がないのでしょ?パーティーを開催するために人手が必要です。王宮で働いてるもの全員を魔導具で調べて、準備に取り掛かりますわよ」
「「「「はい!!」」」」
私達は王妃様と陛下の指示に従い、それぞれ忙しなく動き出す。
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