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第五章

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 …………どれ?

 ねぇ!!

 どれが私達が探してる魔導具なの!?

 こんなに魔導具があるなんて知らなかった。

「お父様~~~、どれが目的の魔導具でしょうか?」

「うーん、あの日誌には魔導具の名前と使用方法だけ書いてあって、魔導具の見た目は書いてないんだよな。何処かに魔導具の一覧表があるはずだからそれを探そう」

「「はい」」

 何で簡単に見つかると思ってたのかしら?

 も~~、時間がないのに!!

 早く見つけて、魅了されてる人達を解放しないと、魅了されてる人達が無事かわからないのに!!

「………皆、助かりますよね?」

「微妙な所だろうな。学園の生徒と王妃様は助かるものがまだ多いと思う。でも殿下はいつから魔法をかけられていたか分からないから、覚悟しないといけないだろうな」

「そうですよね………、テイラー伯爵夫婦は……」

「無理だろうな。残念だがあの女は期間が長過ぎる。テイラー伯爵の方はまだ希望はあるかもしれない」

 そっか………、

 あの子は魅了をかけた相手が壊れるって知っているのかしら?

 魅了魔法が永遠に続くと思っている?

 魔法について書いてる本には、魅了魔法を解かないと、いずれ絶対に壊れてしまうと書いてあった。

 壊れるまでの期限は、その人物にどれぐらいの威力の魔法を使うかで変わると書いてあったから、約3年も無事ってことは、威力は低かったのかもしれないわね。

「父上これではないですか?」

 お兄様が分厚い冊子を持ってくる。

「これだな。この中から目的の魔導具を探すのも大変そうだな。うーん、種類別に部類されてるみたいだな。これならすぐに目的の物が見つかりそうだ」

 お父様はそう言って、魔導具の欄を確認していく。

「確か………、魔封じの腕輪と洗脳解除の玉と魅了解除の玉でしたっけ?」

「それと結界を張れる杖です。彼女に仲間が居ないとは限らないので、警戒するために必要だってユーリ様が言ってましたから」

「あぁ~、それもだな。仲間が居ないと良いんだけどな」

 ん?

 仲間が居ると何故困るのかしら?

 仲間を見つけるのは大変だと思うけど、彼女の交友関係を探っていけば、そんなに苦労しないわよね?

「どうした?」

「仲間が居ると何故困るんですか?」

「仲間が誰かによって、今回の事件の難易度が変わってくるんだよ。まだ調査をしてないから、あの女がどれぐらいの人達に魔法を掛けたか分かってない。でもあの女1人だったらたかが知れてる。学園内と王宮と近所の人ぐらいだろ」

「あの子はまだ交友関係が少ないだろうからそうだろうな。ちょっと前までは修道院に居て、貴族との関わりはなかったはずだから、パーティーやお茶会にも参加してないなら関われる人は少ない。」

 そっか……、

 今は伯爵令嬢になったとは言え、マナーが中途半端のあの子では、参加できるパーティーは少ないはず、関われる人も少ないなら魅了出来る相手も少ない。

 だけどもしも協力者が居たら、その大前提が変わってくるって事よね。

 もしも協力者が高い地位の人なら、魅了出来る人数が倍以上になる。

「彼女にもしも協力者が居たとして、彼女より地位が高い人が協力者になるでしょうか?何処でそんな人と関われるんでしょう?」

 我が家に来る前は彼女は他国にいた人ですし。

 我が家に居た期間も凄く短くて、公爵家の名前を使うことを許可されてなかったから、家を利用して誰かと会うことも出来なかったはず。

 テイラー伯爵夫人も彼女が居たときは、彼女に付きっきりでパーティーやお茶会に参加してませんでしたし、離縁したあとは修道院に居ましたから、昔の旧友と会うことも出来なかったはず、出来たとしても公爵夫人から追放されたあの人に会おうとする人は居ないはず。

 貴族はシビアだから自分にメリットが失くなったら、仲良くしていた人でも平気で切り捨てる。

「調べ切ることは出来るのでしょうか?魅了から解放するには、解放する魔導具を直接持たせないといけないんですよね?」

「貴族だけなら方法はある。だけど平民も対象になると人数が多すぎる。魔導具がもつか分からないからな」

 あっ………、

 魔導具が途中で壊れてしまう可能性があるのか。

「貴族が優先的に魔導具を使うことになりますね。特にそれぞれの家の当主と跡取りが優先でしょうね」

 子供が複数人居ても、1から跡取り教育するのは難しい。

 まだ幼いうちなら良いけど、10代後半なら手遅れよね。

 一覧表のお陰で無事に目的の魔導具を見つかり、私達はそれをもって陛下とユーリ様が居るはずの部屋に向かう。
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