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第五章
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しおりを挟む何か分かるかもしれないという期待で胸を膨らませる。
「この日誌にはちょっとした問題があった時に書かれてるみたいだね。大きい問題から小さい問題まである」
「歴史書にかけない内容をここに残していたのかもしれないな。自分達の後に王になる者たちの教科書として、どうやって解決したのか、どんな問題が起きてたのか参考資料になってたんだろう」
歴史書に書いてることが全てではないですからね。
歴史書には汚点になるようなものは、あえて消されてることが多い。
完全に消してしまうと、子孫が後々困ることになるかもしれないから、こっそり残してあの禁書の棚に隠してあったのね。
日誌が約500年前の日付になった時に、1番最初の文章に魅了の文字が書いてあった。
「これは………、昔にも同じようなことがあったんですね。全く知りませんでした。汚点として歴史から消されたのか、それとも知っていたものが伝染病で全員亡くなったのかどちらでしょうね?」
バレたら処刑されるって分かっていても、魅了魔法を使えるって分かったら、誘惑に負けてしまうのかもしれないわね。
目的は様々かもしれないけど、人は欲望には勝てないものね。
「500年前はどうやって解決したのでしょうか?読み進めたら答えが出るでしょうか?」
「解決してるなら書いてるはずだよ。日誌には当時どんな事が起きて、どんな風に解決したのか書いてるからね。魅了魔法だけ何も解決策が無いとは思えない、もしもないのなら解決出来なかったってことになる」
今も国が残ってるってことは、魅了魔法を使った人は排除出来たって事よね?
でもそれが操られていた人も解放できたってことではない。
日誌に何かヒントがあるんじゃないかと読み進める。
✻✻✻✻✻✻
日誌を一通り読み終わり、私達の間に沈黙の時間が続く。
日誌を読んだことで、私達には希望と絶望を同時に味わった。
1番最初に分かったのは、陛下が付けてる指輪は魔導具だった。
呪いや洗脳や魅了などの魔法から身を守る魔導具だと分かった。
本当なら王妃様や王子や王女を守る魔導具もあったはずなのに、今では紛失して失くなっている。
「色々と問題は山積みですね。時間との勝負ですから、兄上にすぐに報告して行動に移しましょう」
「そうだな。陛下には絶対に指輪を外さないように注意する必要がある。解決しようとしてるのに陛下まで操られたら困るからな」
お父様とユーリ様が今後の流れを決めていくのを、私とお兄様は横で黙って聞くことしか出来ない。
お2人は宰相とその補佐として、緊急事態に慣れてるのか、迷いもなくドンドンと決めていく。
「私とサフィナ公爵は兄上の所に説明に行くから、2人は宝物庫に行って目的の物を探してきて欲しい。まさか使い方が分からなかった魔導具達が、今回のことに役立つとは思わなかったよ」
「私達が宝物庫に入っても大丈夫なんですか?宝物庫の前には警備隊の者が居ますよね?止められるんじゃないですか?」
「そうならないようにイリーナ嬢にはこれを預けるよ。これを見せて私の指示で来たって言ったら、止められることはないから安心していい」
ユーリ様はそう言って、王族の証である指輪を渡してくる。
「駄目ですよ!!これを付けてないとユーリ様も危険です!!陛下の所にいつテイラー伯爵令嬢が来るか分からないんですよ」
「残念ながらこれは普通の指輪だから、魅了魔法や洗脳魔法から守ってくれる力はないよ。これは兄上が王になった時に、兄上が職人に作らせて私に贈ってくれたものなんだ」
「そうだったんですか?」
「私の父は私を王族として認めなかった。母親が身分が低いものだったから、周りも私を王族として扱わないものが多かったんだよ。だけど兄上が王になった時に、私が自分の弟で王族の一員だと宣言してくれたんだよ。王族の証としてこれを渡された」
素晴らしい兄弟愛だ。
陛下は自分の弟が不当な扱いをされることが許せなかったのね。
ユーリ様にとってこの指輪はとても大切なもののはずなのに、私を信頼して預けてくれるのね。
「魔導具を絶対に見つけてきます!!」
「任せるよ。本当なら私も手伝いたいけど、今は少しでも時間を無駄にしたくない。2人を信頼している」
「「はい!!」」
私達はマナーとか殴り捨てて、それぞれの目的の場所に走り出す。
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