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第五章

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 2人が信じてくれたことにホッとしてると、2人は眉間にシワをよせて難しい顔をしていた。

「どうしたんですか?」

「あの娘が魔法か魔導具を使ってたとして、どうやって証明すれば良いのか考えていたんだよ」

「不確かなままで兄上には報告出来ないからね。何かしら確信を持てる証拠が必要なんだよ。何も証拠もなく、対処法もないのに知らせたら、国を混乱させるだけだからね」

 確かにそうなのよね。

 私もそのことに悩んで簡単に誰かに相談が出来なかった。

「私とレイチェル様もその事で悩んでました。それと王妃様は魅了されてる可能性が高いと考えております。王妃様が魅了されてるのに、陛下が魅了されてないことも疑問に感じてますわ」

 王妃様に魅了をする隙があったなら、一緒に行動してる機会が多い陛下だって、魅了されていてもおかしくないのに、陛下には全くその様子は見られないのよね。

「疑問が増えたな。ミハイル殿下も魅了されてると考えて良いのか?他に誰が魅了されてるのか確認する必要もあるか」

「レイチェル様のお話では、学園の生徒で魅了されてる可能性がある生徒が多数居るみたいです」

「そんなに多いのですか?もしも魅了されてるものが多いなら、色々と問題になりそうですね」

「テイラー伯爵令嬢がミハイル様のお気に入りって事で、テイラー伯爵令嬢の取り巻きになってる人も居るみたいですけど、取り巻きの中でテイラー伯爵令嬢を盲目的に崇拝してる者も居ると聞いてますわ」

 盲目的に崇拝してる人は魅了されてるって考えて良いだろうけど、それ以外の人が魅了されてないって保証は無いんですよね。

 魅了魔法を使った時に威力を調整出来るなら、誰が魅了されてるのか判断が難しくなってしまう。

「テイラー嬢は何がしたいのだろうな?王太子妃になりたいだけなら、大勢を魅了する理由が分からない」

 確かにそうなんだよね。

 王太子妃になりたいだけなら、ミハイル様と陛下と王妃様だけで良い。

 大勢の人にちやほやされたいとか?

 でも魅了した相手にちやほやされて嬉しい?

 私なら虚しくなるだけだと思うけど?

「彼女が何を考えてるのかしら私にも分かりません。でも彼女が約4年前からミハイル様を狙っていたのは確かです」

「そんな前から………、彼女が何を考えてるのか調べる必要がありますね。それと兄上が魅了されてないのは何故でしょうね。出来なかったのか、まだ魅了を使ってないのかどちらでしょうか?」

 今はそれが1番気になるかもしれない。

 陛下に魅了が効かなかったなら安心だけど、もしもまだ魅了をしてないだけなら危険ってことよね。

「ユーリ様に聞きたいことがあるんですけど、魔法などで王家だけで言い伝えられてる話とか無いんですか?」

「うーん、特にないかな?……でも魔法に関係はないけど、王になったものは、王の証である指輪を絶対に外してはいけないって言われてるかな?」

 確かに陛下は指輪をいつも身に付けてるわね。

 あれが王の証だったんだ。

 知らなかった。

「絶対に外してはいけないって、何か理由があるんですか?」

「それが分からないんだよね。300年前にこの国の者たちが大量に、はやり病で亡くなったのを知ってるだろ?王族も沢山亡くなってしまって、生き残ったのはまだ赤ん坊だった王子だけなんだよ」

 その歴史ならよく知ってるわね。

 感染が高くて王都に居た者達は殆どが亡くなってしまった。

 王子が助かったのは、生まれた時から体が弱くて、生まれてすぐに空気が澄んでる田舎で生活をしてたからなのよね。

 私の先祖も王子の護衛としてお世話をしていたから、はやり病にならなかったみたいだけど、復旧の為に苦労をしていたらしい。

「指輪の秘密を知ってるものは、他に居なかったんですか?」

「機密情報だったみたいで、ごく一部の者しか知らされてなかったらしい。だけど理由はわからなくても、大昔から言われていたことだから、今でも守られているんだよ」

「そうなんですね。魅了魔法について何か対策になることが有ればって思ったんですけど………、1つお願いしたいんですけど、禁書の観覧許可が欲しいです。もしかしたら魅了魔法について書いてる本があるかもしれません」

「許可してあげたいけど、禁書になってる本たちは本当に危険なんだよ。下手したら亡くなってしまうこともある」

「それは覚悟してます。王宮にある禁書は、開いたら呪いにかけられる物もあると聞いたことがあります」

 怖いって気持ちもあるけど、王宮にある禁書なら魔法について載ってる可能性が高い。

 魅了魔法だって分かるかもしれない。
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