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第四章
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しおりを挟む会場に入った陛下は壇上に立つ。
「今日は私の生誕パーティーに参加してくれて感謝する。皆には満足いくまで、自慢のシェフが作ってくれたメニューを楽しんでもらいたいが、その前に嬉しい発表をさせてもらいたい」
陛下の突然の発表に周りはざわつく。
ミハイル様がリリヤをエスコートして入場してきたから、ミハイル様の婚約が決まったことを発表するって思っているわよね。
今までミハイル様は女性をエスコートすることはなかった。
婚約者候補は居たけど、正式に誰と決まってなかったから、誰もエスコートされることはなかった。
私と国外のパーティーに参加した時も、絶対に他にもう1人同行させて、2人っきりと言う状況を作らないようにしていた。
誰かをエスコートすることで、婚約者だと思われないようにするためなのよね。
『ユーリ様………、この状況で私達の婚約を発表するんですか?凄く場違いみたいで嫌なんですけど……』
『うーん、兄上は僕達の心情とか察するのは難しいかな?兄上自身が周りの雰囲気とか、評判とか気にしないからね』
陛下なら有り得そう。
こんな雰囲気で私達が壇上に呼ばれて、白けたりしたら私は耐えられないわ。
でも私達のことを忘れて、ミハイル様とリリヤの婚約を発表されるのも微妙かも。
その後に私達の発表されたら、もっと嫌!!
「ユーリとイリーナ•サフィナ公爵令嬢はこちらに来なさい」
やっぱり呼ばれた~
緊張で動けなくなってると
「イリーナ頑張って!!私はここで見守ってるわ」
「レイチェル~」
「2人は本当に仲良いね。私が守るから安心してくれて。行こうか」
ユーリ様にエスコートされながら、ゆっくりと壇上に向かって歩く。
途中でリリヤとミハイル様の前を通る時に、リリヤの顔が怖いことになっていた。
遠くから見えてはいましたけどね。
陛下が発表があるって発言した時に、自分達の話だと思ったみたいで凄く嬉しそうな顔をしてたけど、私とユーリ様が呼ばれた途端に無表情になっていて怖かった。
壇上にあがって、陛下の隣にユーリ様と並ぶ。
「この度、私の可愛い弟であるユーリの婚約が決まった。相手はサフィナ公爵令嬢のイリーナ嬢だ。イリーナ嬢は優秀で努力家で私も期待している若者だ。これからは2人を温かく見守ってくれると幸いだ」
陛下にはミハイル様の婚約者候補に選ばれた時から、娘のように可愛がって貰ってきたけど、直接こんな風に褒められるのは初めてだから、とても照れくさくなるわね。
顔が赤くなってたらどうしましょう。
「ユーリ•レクシンです。本日は兄上の生誕パーティーに参加いただきありがとうございます。私的な発表をこのような素晴らしい場で発表でき感謝しております。今後も兄である陛下を婚約者と2人で支えていきたいと思っております」
「イリーナ•サフィナと申します。私はまだまだ若輩者ですが、ユーリ様と一緒にこの国のために尽くしていきたいと思っております。至らない点も多々あるでしょうが、温かく見守っていただけると幸いです」
ユーリ様と2人で頭を下げると、会場中から沢山の拍手が上がった。
良かった~
隣に居るユーリ様を見るとユーリ様も私を見ていて、私は思わずへにゃりと笑う。
ユーリ様に手を引かれて、壇上から下りて端による。
「はぁ~、緊張しました。」
「イリーナ嬢は大勢の前で話す機会は今までなかったから、緊張して当たり前だろうね。立派な挨拶だったよ」
「ありがとうございます。ユーリ様も格好良かったです」
2人で話してると、こちらに近づいて来ようとしてる人達が見えた。
色々と聞かれるんだろうな。
これからの事を考えてウンザリしていると、人に囲まれる前に陛下が急ぎ足で私達のもとに来る。
「陛下?」
「済まない。2人に大切な話があるから、ちょっと別室に来てもらえないか?」
ユーリ様は確認するように私を見てきたので、これから何か予定があるわけでは無いので頷く。
「色々と聞きたいこともあるので、私共は問題ないですけど、今夜のパーティーの主役は兄上ですけど大丈夫ですか?」
「王妃にちょっとの間だけ会場を任せるから問題ない。お前達に迷惑をかけるかもしれないから、色々と話しておきたいことがあるんだ」
「畏まりました」
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