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第三章
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しおりを挟む私とエリーは語学と必修科目を選んで、他の科目は家に帰って考えることにした。
家に帰ったらお兄様が居るでしょうし、お兄様に相談したら良いわよね。
お兄様は特進クラスでしたから、何かしらのアドバイスをしてくれるはず
私とエリーは考えることに疲れてしまい、馬車まで喋らずに黙々と歩いている。
「だぁ~~~~~!!分からない!!どれを選んだら正解なの!!」
「エリー?」
「ごめん。頭が混乱して大声を出したくなった」
「その気持ちわかりますわ。でもこれも試練なんだと思いますわ」
「試練?」
エリーは私が言いたいことがわからないみたいで、不思議そうな顔をして私を見てくる。
私もさっき気が付いたばかりなのよね。
特進クラスにいる生徒を考えたら、自分で授業を選ぶ必要性がある。
皆が同じ授業を受けるには支障を来すのよね。
語学が必要ないものが語学を習ったって時間の無駄になる。
他にもそういう授業が幾つがある。
芸術系の授業は特によね。
「特進クラスにいる生徒の半分以上は、将来指示を出す側の立場になると思うのよ」
「確かにそうだよね。午前中に自己紹介を全員でしたけど殆どの人が高位貴族や長男とか多かった印象がある。女の子も少なかったよね」
「貴族は見栄とかを大切にするからね。高位貴族は特進クラスを目指すのが当たり前になってるわ。実力主義の家とかだと、跡取り候補だった長男が特進クラスに入れなかったら、跡取りから外されることもあるのよね」
「それは厳しいね」
「厳しいかもしれないけど、私はそれで良いと思ってるわ。跡取りになるってことは、沢山の人の生活を支えることになるのだから、努力しない人や言い方は悪いけど無能が当主になったら、困るのはその領地に住んでる人達よ」
当主が変わった途端、借金だらけになったり、無意味な政策に手を出して大変なことになったら領民が可哀想だもの
「確かに私も威張ってるだけの無能が上司とかだと嫌かも」
「どんなに嫌でも領民は簡単に逃げることが出来ないからね。だから私は当主に選ばれる人は厳しく育てられたほうが良いと思うわ」
「そっか………、そう言えばその話と授業選びの試練はどう繋がるの?」
「必要なものとそうじゃないものを自分で選ぶ練習だと思うわ。特進クラスにいる人達は、誰かの指示で行動するんじゃなくて、自分が周りに指示を出すのだから、必要なものを自分で選べないといけないわ」
「だから試練か………、イリーナって凄いね。私は全く分からなかった。確かに指示をする立場の人なら、必要なものとそうじゃないものを判断出来ないといけないもんね」
私はお父様やユーリ様が仕事をしてるのを、身近で見ることが出来たから分かったのよね。
ユーリ様は一つ一つの書類をちゃんと読んで、必要なものと不必要なものにちゃんと仕分けをして、どうすれば良いのか指示を出していた。
適当に読んでサインだけしてるような人ではなかった。
中にはそういう人もいるのかもしれないけど、そういう人には優秀な部下が付いてるわよね。
じゃないと国にも予算などがあるんだから、何でもかんでも許可を出してたら破綻してしまう。
それはそれぞれの家でも同じことよね。
それぞれの家に領地に使える予算がある。
どれを優先するかはその家の当主が決めるから、学生のうちに練習出来るなら1番よね。
それに特進クラスの生徒ならそれぞれに必要な科目が変わってくるから、先生達だけでは決められないから、自分たちで選ぶのが1番間違いがないはず。
語学の授業でも5段階に分かれていて、自分の能力にあった階級を選ぶみたいなのよね。
ある程度語学を学んでる私が初級クラスに入っても、無駄な時間になってしまうから、自分で選んでもらったほうが確実ってことよね。
「私は指示してもらう側だろうけどね」
「最初は誰だって同じよね。でも出世したらいつかは指示をする側になるはずよ。特進クラスは優秀な人ばかりだから、そうなる人の方が多いんじゃないかしら?エリーだってその可能性があるわよ?」
「そうかな?想像できない~、でも今は間違ったものを選ばないか心配だな。もしも間違ったものを選んだらどうすれば良いの?」
あれ?
午前中の説明を聞いて分からなかったのかしら?
「心配しなくても途中で変更が出来るって言ってたでしょ?合わないと思ったら抜けて、他のものを選べばいいのよ。早めに判断しないと、他のを選んだ時に遅れてしまうから、周りに追いつくように個人でも勉強しないといけないでしょうけど」
「あれってそういうことなんだ~、そっか………、自分で判断しろってことか」
「そういうことでしょうね。間違った時にすぐに引き返せるかを試されてるんでしょうね」
跡取りになるものが特進クラスに入るように、親から厳しく言われる意味が理解できるわよね。
親は学生のうちに練習して欲しいってことよね。
学園生活を見て、跡取りにするか最終確認したいって考えもあるのかもしれない。
改めて貴族は面倒臭いって実感しながら、私とエリーはそれぞれの馬車に乗る。
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