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第三章

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 なかなか自分の席に戻らないリリヤに困ってると、一般クラスの教師がリリヤを引き摺るように連れて行った。

 あの先生凄い…………

 女性だよね?

 見た目が中性的で格好いいけど、胸があったから女性のはず。

 この国では女性が先生になるのは難しい、学園に入る前の子供相手に家庭教師として働く女性は居るけど、学園みたいな場所で働く人は滅多に居ない。

 女性が働く場所が少ないのは何処も同じだけど、陛下が少しずつだけど改善させようとしてるのよね。

 だけど反対してる貴族のほうが多いから、陛下がこの国のトップだとしても押し進めるのは難しい。

「あの先生格好いいね。一般クラスの先生かな?」

「多分そうでしょうね。女性の教師は珍しいですし、特進クラスみたいな特殊なクラスは女性は選ばれづらいでしょうね」

「あぁ~、確かにそうかも。もしも特進クラスに女性の教師が居たら、文句を言う人は1人は絶対に現れそう」

 現れるでしょうね。

 特に子供が特進クラスに入ったことを周りに自慢してるような親なら、絶対に学園にクレームを言ったり、辞めさせるために行動しそう。

「特進クラスに女子生徒が進学しただけでも、過去に文句を言っていた人が居るみたいですからね」

「本当?」

「私の兄が入学した時に揉めたらしいですよ。特進クラスは女子生徒が少ないですから目立ちますし、標的にされやすいですからね」

 私の言葉にエリーは周りを見てから納得した顔をした。

「確かに少ないかも………、ん?それって私って危険じゃない?イリーナは公爵令嬢だから絡むような人は居ないだろうけど、私は女でしかも庶民だから狙われるよね?」

「その可能性が高いと思うわ。私と居れば大丈夫だって言ってあげたいけど、安全とは言い切れないのよね」

「そうなの?」

「うん。私に嫌われることを恐れて何もしない人も居るだろうけど、私と仲良くしてるエリーを妬んで絡んでくる人だって居ると思うわ。言葉で攻撃してる間はまだマシかもしれないけど、もしも行動に移したら危険なのよね。貴族だから無駄にお金はありますからね」

 こんな話をしたらエリーは私を避ける可能性もあるけど、何も知らないエリーに黙ってることは出来ない。

 私と仲良くすることで、エリーにどんな危険があるか理解して貰う必要がある。

 それを知ったうえで私と関わるか決めて貰う必要がある。

「私と友達になるの嫌になったかしら?」

「全然!!この学園は庶民より貴族が多いし、身分なんか気にしてたら誰とも仲良くなれないよ。イリーナに会うまでは、誰とも友達になれないかもしれないって思ってたぐらいだから」

 エリーの予想は強ち間違ってはいない。

 学園では身分より成績が優先されるとはなってるけど、成績の良い貴族のほうが周りから評価されたりする。

 成績の良い貴族より上に成績の良い庶民が居ても、どうしても周りの目は成績の良い貴族のほうに目がいく。

 先生とかはちゃんと評価してくれても、先生の評価は学園の外ではあまり意味がない。

 就職の時は有利になるかもしれないけど、3年間周りからあまり評価してもらえない環境で、頑張り続けるのはかなりの忍耐力がいるはず。

 先生や一部の人は評価してくれるだろうけど、自分より劣ってることが分かる人物が評価されてるのを見るのは辛いわよね。

 貴族と庶民の間には壁が出来てしまうのは、育った環境が違うのだから仕方ないのかもしれない。

 だって話が合わない相手と会話を続けるのは大変だもの。

 庶民相手に貴族の常識を言っても困惑されるだけ、その逆も然りでしょうけどね。

 特進クラスが一般クラスと校舎が違うのは、もしかしたら庶民の為なのかもしれないわね。

 この学園は成績が優秀な庶民は学費無料で通えるから、特進クラスにはそれなりに庶民が居るけど、一般クラスになると数人しか居ない。

 大体が商家の子供や親が元貴族の子供だったりするから、やっぱり特進クラスに居るような庶民の子たちとは違ってくる。

 もしも一般クラスと特進クラスが同じ校舎だと、学園側も色々と対応が大変になるから分けられてるんでしょうね。

 貴族は無駄にプライドが高い人が多いから、庶民が自分より成績が良いのを妬む人は確実にいる。

 勉強できない人に限ってそういう人が多いイメージがあるわね。

「もしも私のことで絡んでくる人が居たら教えてね。ちゃんとこちらで対応しますから、絶対に遠慮とかしないでくださいね」

「は~い」

 エリーはちょっと不服みたいだけど、渋々納得してくれた。

 エリーみたいに正義感が強い子は、告げ口するみたいで嫌なんでしょうね。

 だけど貴族相手に躊躇するのはとても危険なのよね。

 行動がエスカレートする可能性もある。

 ヤバいことをしても、揉み消す力があるから迷いがない。
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