68 / 143
第三章
5
しおりを挟む私達は講堂に着くと並べられている椅子に座って待つように指示をされた。
講堂って聞いたからちょっと大きいぐらいかと思ったけど、想像よりかなり大きいわね。
「移動中も思ったけど、この学園で無駄に大きいよね」
「そうだね。でも狭いより良いんじゃないかな?狭い部屋にぎゅうぎゅうに押し込まれるよりは全然いいわよ」
「確かに~、イリーナは違うけど、貴族の人たちが付けてる香水の匂いが凄いもんね。あんなにつけて気分が悪くなったりしないのかな?」
エリーは私の耳元でコソッと臭いよねって溢す。
エリーも臭いって思ってたのね。
「匂いに慣れてしまってるんでしょうね。今はまだ良いほうなのよ?お茶会や夜会に参加したらもっと凄いから」
「そうなの?」
「うん。貴族たちの間で、香水を惜しみなく使えるのは裕福な証って考えられているのよ。だから貴族として戦場であるお茶会や夜会では、見栄のために一瓶を浴びてるんじゃないかってぐらい酷いのよ」
「貴族って無駄に見栄っ張りだよね。我が家としては商品が売れるから嬉しいけど、1回の買い物で信じられない量を買っていくもの」
昔は我が家でもそうだったわね。
私は物欲がないですし、他の家と競う気持ちもないからあまり買わなくなった。
お父様とお兄様も周りの評価とか気にしないから、今は欲しい物しか買わなくなったのよね。
我が家で好き勝手に買い物をしてたのは、私達の母親だった人だけだった。
経済を回すためには買ったほうが良いんだろうけど、欲しくない物を選ぶのは苦痛なんだよね。
公爵家の娘として、パーティードレスは毎回新しいのを着るようにしてるけど、お洒落に興味がないから苦痛でしかない。
私が着た後はリメイクをして小物を作ったりするから、なるべくリメイクがしやすいドレスを選ぶようにしてますけどね。
使用人たちにドレスをただの布切れにしてもらい、孤児院に寄付してるから無駄にはならないから、前世では庶民だった私の心は精神的に負担にはならない。
孤児院では布切れを使って作ったものを包んで売っているらしい。
まだ1度も見たことがないのよね。
今度、買いに行こうかしら?
貴族の私が遊びに行って、子供たちの不安になったりしないか不安で滅多に行けないのよね。
私が逆の立場だったら緊張して具合が悪くなるはず、だって自分達が暮らしてる孤児院のスポンサーに、もしも失礼なことをしたらって不安になるはずだもの。
自分のせいで援助を打ち切りになったら責任重大よね。
5歳ぐらいの子供だったら問題ないだろうけど、ある程度成長すると周りに人間関係に敏感になっていく。
院長先生たちの様子を見てたら、私は偉い人だって気が付くから、気を使うようになってしまう。
自分よりずっと小さい子供に敬われるのは、あまりいい気はしないわよね。
子供は子供らしく元気な方が良いわ。
「エリーの家では今は何が1番売れてるの?」
「うーん、やっぱり香水かな?そういえば最近はお兄ちゃんが、国外から香辛料を仕入れてきたからそれも人気だよ。我が家でも良く使ってるけど、料理が美味しくなったよね」
「あぁ~、あれね。」
私の顔色が一気に悪くなったのが自分でも分かったけど、エリーが心配そうにオロオロしてるから、今の私はかなり酷い顔をしてそうね。
「どうしたの!?何か問題があった?」
「うん。香辛料は使う量によっては酷い味になるのよ。我が家では香辛料の使い方をちゃんと調べてくれてるから、何も問題ないんだけど、晩餐会に呼ばれた時の料理は酷かったわ」
殆どの貴族があれを平気な顔をして食べてるけど、絶対に味覚がバグってるわよね。
最初見た時はビックリしたのよね。
料理が焦げてるのかと思ったら、食材の色が分からなくなるぐらい、香辛料を振りかけていたからだったのよね。
「味が酷かったってかけ過ぎってこと?私の勝手な想像だけど、貴族ってやり過ぎる傾向にあるよね?香水はつけ過ぎで、香辛料はかけ過ぎで、装飾品はつけ過ぎだよね?ドレスとかも無駄に派手なイメージがある」
「間違ってないと思うわ。全員がそうなわけでは無いけど、高いものを惜しみなく使えるのは、お金持ちの証って印象がありますからね。でも何事にも適量があるわよね」
「うん。無駄になったものが勿体ない。晩餐会に出た食べ物は皆全部食べたの?」
「食べるわよ。完食しなかったら招待してくれた家に対して、失礼になりますからね。でも体調不良とか言って帰る場合もあるけど、最初の数人だけだから早い者勝ちになるわね」
途中で帰る人が多ければ多いほど招待した側も気が付くから、潔い人は早めに解散してくれるけどね。
「貴族って大変だね。貴族に嫁ぐの憧れてたけど、無駄な夢は持たないほうが身を滅ぼさないよね」
「心底相手に惚れてない限りはやめた方が良いと思うわ。色々と我慢しないといけない事が増えますし、今より責任を持たないといけなくなりますし、貴族としての勉強をしなくてはいけなくなるわよ」
これは下位貴族が高位貴族に嫁ぐ時にも言えることですけどね。
人はどうしても良いところばかり目に行くけど、実際は苦労することのほうが多いのよね。
396
お気に入りに追加
5,488
あなたにおすすめの小説
【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~
イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」
どごおおおぉっ!!
5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略)
ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。
…だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。
それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。
泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ…
旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは?
更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!?
ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか?
困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語!
※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください…
※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください…
※小説家になろう様でも掲載しております
※イラストは湶リク様に描いていただきました
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
悪役令嬢が死んだ後
ぐう
恋愛
王立学園で殺人事件が起きた。
被害者は公爵令嬢 加害者は男爵令嬢
男爵令嬢は王立学園で多くの高位貴族令息を侍らせていたと言う。
公爵令嬢は婚約者の第二王子に常に邪険にされていた。
殺害理由はなんなのか?
視察に訪れていた第一王子の目の前で事件は起きた。第一王子が事件を調査する目的は?
*一話に流血・残虐な表現が有ります。話はわかる様になっていますのでお嫌いな方は二話からお読み下さい。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?
ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」
バシッ!!
わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。
目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの?
最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故?
ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない……
前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた……
前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。
転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる