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第三章
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しおりを挟む私達は講堂に着くと並べられている椅子に座って待つように指示をされた。
講堂って聞いたからちょっと大きいぐらいかと思ったけど、想像よりかなり大きいわね。
「移動中も思ったけど、この学園で無駄に大きいよね」
「そうだね。でも狭いより良いんじゃないかな?狭い部屋にぎゅうぎゅうに押し込まれるよりは全然いいわよ」
「確かに~、イリーナは違うけど、貴族の人たちが付けてる香水の匂いが凄いもんね。あんなにつけて気分が悪くなったりしないのかな?」
エリーは私の耳元でコソッと臭いよねって溢す。
エリーも臭いって思ってたのね。
「匂いに慣れてしまってるんでしょうね。今はまだ良いほうなのよ?お茶会や夜会に参加したらもっと凄いから」
「そうなの?」
「うん。貴族たちの間で、香水を惜しみなく使えるのは裕福な証って考えられているのよ。だから貴族として戦場であるお茶会や夜会では、見栄のために一瓶を浴びてるんじゃないかってぐらい酷いのよ」
「貴族って無駄に見栄っ張りだよね。我が家としては商品が売れるから嬉しいけど、1回の買い物で信じられない量を買っていくもの」
昔は我が家でもそうだったわね。
私は物欲がないですし、他の家と競う気持ちもないからあまり買わなくなった。
お父様とお兄様も周りの評価とか気にしないから、今は欲しい物しか買わなくなったのよね。
我が家で好き勝手に買い物をしてたのは、私達の母親だった人だけだった。
経済を回すためには買ったほうが良いんだろうけど、欲しくない物を選ぶのは苦痛なんだよね。
公爵家の娘として、パーティードレスは毎回新しいのを着るようにしてるけど、お洒落に興味がないから苦痛でしかない。
私が着た後はリメイクをして小物を作ったりするから、なるべくリメイクがしやすいドレスを選ぶようにしてますけどね。
使用人たちにドレスをただの布切れにしてもらい、孤児院に寄付してるから無駄にはならないから、前世では庶民だった私の心は精神的に負担にはならない。
孤児院では布切れを使って作ったものを包んで売っているらしい。
まだ1度も見たことがないのよね。
今度、買いに行こうかしら?
貴族の私が遊びに行って、子供たちの不安になったりしないか不安で滅多に行けないのよね。
私が逆の立場だったら緊張して具合が悪くなるはず、だって自分達が暮らしてる孤児院のスポンサーに、もしも失礼なことをしたらって不安になるはずだもの。
自分のせいで援助を打ち切りになったら責任重大よね。
5歳ぐらいの子供だったら問題ないだろうけど、ある程度成長すると周りに人間関係に敏感になっていく。
院長先生たちの様子を見てたら、私は偉い人だって気が付くから、気を使うようになってしまう。
自分よりずっと小さい子供に敬われるのは、あまりいい気はしないわよね。
子供は子供らしく元気な方が良いわ。
「エリーの家では今は何が1番売れてるの?」
「うーん、やっぱり香水かな?そういえば最近はお兄ちゃんが、国外から香辛料を仕入れてきたからそれも人気だよ。我が家でも良く使ってるけど、料理が美味しくなったよね」
「あぁ~、あれね。」
私の顔色が一気に悪くなったのが自分でも分かったけど、エリーが心配そうにオロオロしてるから、今の私はかなり酷い顔をしてそうね。
「どうしたの!?何か問題があった?」
「うん。香辛料は使う量によっては酷い味になるのよ。我が家では香辛料の使い方をちゃんと調べてくれてるから、何も問題ないんだけど、晩餐会に呼ばれた時の料理は酷かったわ」
殆どの貴族があれを平気な顔をして食べてるけど、絶対に味覚がバグってるわよね。
最初見た時はビックリしたのよね。
料理が焦げてるのかと思ったら、食材の色が分からなくなるぐらい、香辛料を振りかけていたからだったのよね。
「味が酷かったってかけ過ぎってこと?私の勝手な想像だけど、貴族ってやり過ぎる傾向にあるよね?香水はつけ過ぎで、香辛料はかけ過ぎで、装飾品はつけ過ぎだよね?ドレスとかも無駄に派手なイメージがある」
「間違ってないと思うわ。全員がそうなわけでは無いけど、高いものを惜しみなく使えるのは、お金持ちの証って印象がありますからね。でも何事にも適量があるわよね」
「うん。無駄になったものが勿体ない。晩餐会に出た食べ物は皆全部食べたの?」
「食べるわよ。完食しなかったら招待してくれた家に対して、失礼になりますからね。でも体調不良とか言って帰る場合もあるけど、最初の数人だけだから早い者勝ちになるわね」
途中で帰る人が多ければ多いほど招待した側も気が付くから、潔い人は早めに解散してくれるけどね。
「貴族って大変だね。貴族に嫁ぐの憧れてたけど、無駄な夢は持たないほうが身を滅ぼさないよね」
「心底相手に惚れてない限りはやめた方が良いと思うわ。色々と我慢しないといけない事が増えますし、今より責任を持たないといけなくなりますし、貴族としての勉強をしなくてはいけなくなるわよ」
これは下位貴族が高位貴族に嫁ぐ時にも言えることですけどね。
人はどうしても良いところばかり目に行くけど、実際は苦労することのほうが多いのよね。
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